街の外でエイム練習をしていた俺、うっかり広場で演説中のデスゲーム主催者を撃ち殺してしまう〜敏腕美人秘書(自称)に絡まれた結果、攻略組に参加して伝説のスナイパーに!

影崎統夜

第1話・デスゲームの開催者が撃ち殺された

 発売前に予約でほぼ完売したVRMMORPGのフリーダムワールドクロニクル。

 専用のVR機材を使用できる特別感があるゲームだが、スタートから四時間が経った時、プレイヤー達が始まりの街の中央広場に呼び出された。


「なんか新しい情報か?」

「いや、それならプレイヤー全員を強制的に転移させるだろ」

「そうよね……」


 呼び出し人はゲームを管理している開催者。

 だが呼び出し通知を無視したプレイヤーもいるらしく、中央広場には八割くらいのプレイヤーしか集まってないようだ。

 

「まあ、勝手に攻略している奴らは放置しておけばいいだろ」

「だな! まあ、チュートリアルを無視したい気持ちはわかるけどな」

「まあね。というか、アタシだって思うところがあるもん」


 カラカラと嬉しそうに笑う少女アバター。

 彼・彼女の見た目はカスタマイズしているのか美男美女が多い。

 だがこのゲームは声自体を変える事が出来ないので、性別を変えている奴らはネカマ・ネナベなのが即バレる。

 

 まあ、なのだが……。

 そんな感じてウキウキ気分で中央広場に集まるプレイヤー達。

 しかし、突如として空が真っ赤に染まり、雰囲気が重苦しくなっていく。


「イベントが始まったのか?」

「なんか雰囲気があるわね」

「そりゃ初日だからな」


 緊張の空気が流れる中、真っ赤な空から降りて来たのは真っ黒のスーツを着た三十代前半くらいの男性。


「おっ、あの人は確かプロデューサーの阿笠だったよな」

「おいおい、アバター姿じゃなくてまんまかよw」

「逆に生の方がいいとか考えたのかもな」


 ファンタジー世界なので、アバターだと見分けがつかないかもしれない。そう考えたプレイヤーも多いのか、プロデューサーがリアルの姿でも大丈夫みたいだ。

 だが……プロデューサーの一言で場の空気が変わった。


『広場に集まったプレイヤーは四万人くらいか……まあ、知らないやつらはこの際どうでもいい』


 重くのしかかるような渋い声。

 プロデューサーである阿笠は、口に手を置きながら広場に集まったプレイヤー達を一瞥する。

 そして、まるで吐き捨てるように嫌味ったらしい言葉を続けた。


『今ログインしている約五万人のプレイヤー達、お前らは私の実験に付き合ってもらう』

「実験? なんだそれ」

「これもイベントなの?」

「なんか雰囲気が出て来たな」


 流れ的に少しまずい感じがあるのだが、プレイヤー達はそんな事を考えてないのか楽観的な奴が多い。

 それを見た阿笠はゴミ虫を見るような目で彼らを見下す。


『お前らは私が開催しているデスゲームの駒なのだが、その自覚はなさそうだな』

「で、デスゲーム?」

「なんだそれ?」

「ハハッ、これもイベントだろ」

 

 重苦しい雰囲気が続く中、だんだんと青ざめていくプレイヤーが現れ始めた。

 だがイベントと思っている奴らの方が……いや、そう思い込みたい奴らが多いようで現実逃避みたいになっている。


「そんな事があるわけ」

「ろ、ログアウトすれば!」

「お、おい! ステータス画面にログアウトないぞ!!」

「「「!?!?」」」

 

 一人のプレイヤーがログアウトをしようとしたが、それができなかった。

 そのため、周りにいたプレイヤーが次々とステータス画面を開くが結果は……。


「う、嘘だろ」

「わたしもログアウトボタンがない」

「運営しっかりしろよ!」


 ログアウトボタンがない事を知り、プレイヤー達が一斉に焦り始める。

 その結果、空中に浮かぶプロデューサーに暴言を放つが、言われている本人はどこ吹く風なのか真顔のまま頷いた。


『ハァ……目を逸らす者、現実を理解できない者、知ってなお暴言を放つだけの者。ハッキリ言えば愚か者しかいないな』

「! なんだと!」

「テメェは何様のつもりだ!」

『私か? 私はこのフリーダムワールドクロニクル……いや、このデスゲームの主催者だ!!』


 デスゲームの主催者、いやまるで自分が神のように振る舞う阿笠。

 この状況で暴言を吐く事しか出来ないプレイヤー達だが。


『さてと、これよりお前達が助ける方法を伝えてやる。まずこの世界は十の大型ダンジョンと百の小型ダンジョンが存在している。そのダンジョンを全てクリアすればこの世界がら脱出する事ができる』

「は? レベル一の俺達がそんな事が出来るのか?」

『それは知らん! だがお前らのライフがゼロになった時、それは現実の死になるから気をつけろよ』

「「「!?!?」」」


 トドメの一言。

 この言葉を聞きプレイヤー達は硬直。先程と同じく周りを一瞥した阿笠は愉快そうな表情を浮かべていた。


『さてと、今の情報だけだと不足しているからヒントをや……ガハッ!?!?』

「「「え?」」」


 重苦しい雰囲気が続いていたが次の瞬間。阿笠の胸を何か貫き、彼の体が地面に落ちて光りながら消えていく。


「な、何が起きたの?」

「さあ? って、それよりもこれからどうすればいいんだよ!」

「デスゲームなんだよな!」


 何が起きたかさっぱりわからないが、ログアウトボタンがない事は現実。

 広場にいるプレイヤー達はその現実にどう対応していくか……。


 ーー


「あ、なんか当たったか?」


 始まりの街を見下ろせる高台エリア。そこで銀髪の青年がスナイパーライフルを片手にエイム練習をしていた。

 そして、中央広場で何がが起きていたので面白半分で目立つプレイヤーを狙撃してみた結果。


 高々に演説している開催者を、狙撃して殺した事をこの時の彼は知らなかった。

 


 

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