第4話 正体

 「さっきまで誰もいなかったのに。あなたは誰ですか?」

「坂本君、この人はー」

「私はタンコロリンという者だ」

「タンコロリンって妖怪の?」

「ほう、知っているか」

「本条さん、この人とどういう関係が?」

「この子は昔、とある屋敷に住んでいたんだ。私はその屋敷の柿の木が長い年月を経て化けたものだ」

「柿の木が化けた妖怪?」

「単刀直入に言う。子のことは縁を切ってくれ」

「どうしてですか?」

「君はこの子の正体を知っているのか?」

「正体?」

「この子は人間ではない。座敷わらしだ」

「座敷わらしって、あの?」

「黙っていてごめんなさい。そうなの」

「でも、どうしてですか?座敷わらしは一緒にいて良い妖怪のはずでは」

「本来ならな。だが、今回は違う。5年後に百鬼夜行が行われるのだ」

「百鬼夜行?」

「妖怪達が練り歩く行事だ。この世界で百鬼夜行を終えた妖怪達は一度消滅して、記憶が受け継がれないまま新たに日本のどこかに生まれてくる」

「今の記憶を失って、赤んぼうのような状態で生まれるということですか?」

「そんなところだな。受け継ぐのは例えば座敷わらしであれば、どこかの家に取り付くのが自然、という考えだけだ」

「それと縁を切るのとどういう関係が?」

「それだけなら別れるだけだが、座敷わらしの場合は消滅した瞬間から取り付いていた家が貧乏になっていってしまうのだ」

「つまり、一緒に住むと俺が貧乏になってしまうから縁を切ってくれと?」

「そういうことだ。まあ、いきなり言われても困るだろうから、座敷わらしとよく話し合うと良い」

 それだけいうとタンコロリンさんはすうっと消えた。

「本条さん、やっぱり一緒にいたい」

「タンコロリンさんの話を聞いてなかったの!?

私と一緒にいたらいつか不幸になるんだよ!?

私だっていつまでも好きな人のそばにいたいよ。いつかは同居もしたい、許されないことなのに」

「それでも本条さんのことが好きだから、できる限りそばにいたい」

「ー分かったわ」

「じゃあ」

「待って。文化祭の日まで考えさせて」

「うん、分かった」

そして文化祭の日をむかえた


 




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