卵を失くした皇帝ペンギン

吹雪

　もう、そっちに行って良いかな——？

　僕はもう、疲れたよ——。

　これでも、君の、君たちのいない5年間、頑張ったつもりなんだよ——？

　僕なりには——。

　でも、ダメなんだ——。

　ダメだったんだよ——。

　君の——君たちの居ない5年間、頑張ったんだよ——？

　僕は、そう口を噤みながら、遺影と位牌の向こうを見て声に出さずに声を出す。

　僕の手に絡み付いた数珠が目に入る。

　邪魔だなぁ——。

　目尻から出た生温い液体が数珠に落ちる。

　邪魔だなぁ——。

　邪魔なのは僕自身か——。

　目標も目的も失い、最早終わった人生の上に僕が居る——。

　邪魔だなぁ——。

　何で、終わった人生を生きなきゃいけないんだ——。

　もう、終わってるのに——。

　吐気が酷い。

　なんで——。

　なんで生き残ったのが僕なんだ——？

　一番要らないのに——。

　経済的にも、社会的にも、人類的にも、僕が一番要らないのに——。

　何故？

　何故、生きてるんだ——？

　何故、生きなきゃいけないんだ——？

　君が、君たちが居ないのに——。

　こんな、無意味で無価値な世界に——。

　何故、生きなきゃいけないんだ——？

　もう、疲れたよ——。

　もう、君の、君たちの所に行って良いかな——？

　でも、ダメなんだよね——？

　僕が僕自身で終わらせたら、ダメなんだよね——？

　君たちに会えないんだよね——？

　何故——。

　何故——。

　何故——？