第14話 奏多、ドレイクと戦う②

 自分の周りに斬撃を放った。

 ドレイクの武器は剣。飛び道具は使ってこない。ということは必ず俺へ近づいて攻撃してくる。


「っ……!」


 ――そこだ。

 俺は、ドレイクの殺気がする方へ一瞬で駆け寄る。


「そこにいるんだろ?」


 俺は不敵な笑みを浮かべながら容赦なく村正を引き抜く。


「はあああああああああああああ!」


 村正は標的をしっかりと捉えていた。

 もちろん峰うち。


「ぐっは……!」


 スキルを解除しその場で崩れ落ちる。


「どうやって僕の居場所を……!? スキルは完璧だったはず!?」

「お前の殺気を感じ取ったんだ」

「さ、殺気だと!?」


 雅さんが言っていた。どんな使い手でも攻撃をするときに必ず殺気を放つ。


「くっそ! まだだ、まだ終わってない!」


 怒りに顔を歪めながら立ち上がるドレイク。

 まぁ、さすがにこれで終わりじゃないよな。


「それじゃあ、次は俺の番だな」


 ちょっと試したいことがあったんだ。


「な、なんだと?」


 ――――俺は想像する。


現実化リアライズ――――透明化インビジブル


 自分の姿が消えるのを想像する。


「な、なんだと!? き、消えた……!?」


 俺はドレイクの目の前から一瞬にして消えた。

 真似事だけどあいつの反応を見るに意外とうまくいったみたいだ。


「ど、どこだ! 卑怯者!」


 キョロキョロと間違った方向に声を上げるドレイク。


「ほらほら、俺はここだぞ~」


 ドレイクの眼前に詰め寄り、耳元で囁く。


「くそ! くそ! くそ!」


 パニくってしまったのか乱暴に剣を振り回し始める。

 さっきの余裕の表情は微塵も見られない。

 恐怖に支配されているようだ。


「早く俺を探さないと、攻撃が飛んでくるぞ~」


 音を消し去りながらドレイクを翻弄する。


「ど、どこだ!? くそっ! なんなんだよまったく!」


 村正を構え、カウントダウンをする。


「3」


「ま、待て! 落ち着け! 俺が悪かった! もうあの子たちには手を出さないから!」


「2」


「か、金か? 金ならやるよ! だ、だからやめてくれよ!」


「1」


「ま、待ってええええええええええええええええええええええ!!」

『剣技―――とどろきッ!』


 ドレイク目がけて攻撃を放つ。


「ぐっはああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 白目をむきながら空高く舞い上がったあと、ドレイクはその場で崩れ落ちた。


「あぁ、一応アドバイスしておくと、自分のスキルは相手に見せびらかして使う物じゃないぞ。相手に対策される可能性だってあるからな」


 俺はドレイクの弱点を淡々と告げる。


「スキル頼りの戦闘スタイルは身を亡ぼす。覚えておくんだな」


 これは師匠から口を酸っぱくして言われていたことだ。

 どんなに強力なスキルを持っていても、自分自身の戦闘技術を磨かなければまったく意味がない。


 ドレイクがまさにいい例だ。

 自分のスキルに自信があるのはいいが、見破られた時のことを考えていない。


「それと……って、気絶してるか――」


 一方的に話してドレイクが気絶していることに気づく。

 そんなに強く攻撃したつもりはないんだけど……思ったより力が入っちゃったみたいだ。


 俺は、懐からドレイクの名札を取り出す。


「それじゃあ、これは貰っていくな」


 ひらひらと名札を揺らしながら気絶しているドレイクに向かって呟く。

 実はさっき、ドレイクの眼前に詰め寄った時に盗んでおいた。

 相当混乱してたからか気づかなかったみたいだ。


 本当は盗んでそのまま帰ろうかと思ったけど、今まで沢山馬鹿にされてきたからな。それのおかえしだ。


『第三種目終了――』


 委員会の冷たい声がダンジョン内に響いた。

 それと同時に委員会ロビーへテレポートされた。


『いま大注目の奏多選手、ドレイクを瞬殺っ!! 素晴らしい活躍でした!』


 田中さんの実況で戻って来たんだと実感する。

 モニターには俺の顔がでかでかと映し出されている。


"奏多の姿が消えたのは気のせい!?"

"俺らの奏多ー!!!"

"めっちゃスカッとしたわ"

"これだから奏多のリスナーはやめられない"

"ざまぁww"

"ドレイクのリスナーみってる~?"


 コメントも大盛り上がり。


『一瞬、奏多選手の姿が見えなくなったのは気のせいでしょうか』

『あれは奏多選手のスキル「現実化リアライズ」ですね』

現実化リアライズ、いわゆる相手のスキルを真似たということでしょうか? 伊原さん』

『はい、恐らく。奏多選手のスキルの凄いところは、どんな事象でも現実にしてしまうことです。スキルだけでも素晴らしいのに戦闘技術もレベルが高い。とても素晴らしいです』


 伊原さんほめちぎりすぎ……ちょっと恥ずかしいな。


「奏多さんー!」

「おつかれさまです!」

「ただいま」


 芽衣たちが駆け寄ってくる。


「あのドレイクをやっつけちゃうなんてさすが奏多くんね。私スッキリしちゃったわ」

「奏多様、お帰りなさいませ」


 みんなに祝福されながら俺はモニターに目を移す。


『なんと! 千人程の探検家が奏多選手によって無力化されたという情報が入りました! これはものすごい数ですね』


"千人!?"

"もうこいつ一人でいいな"

"奏多さえいれば問題ないな!"

"強すぎて草"

"さすがに規格外すぎて笑えない"

"OMG!"

"Is he a monster!?(あいつは化物か?)"

"海外ニキも驚いてて笑う"


 コメントが勢いよく流れ始める。


「うぅ……」

「何が起こったんだ……」

「ぐっはっ……お腹いてぇ」

「起き上がれねぇ」


 テレポートされた探検家たちがその場で項垂れている。

 すまん、少しやりすぎたな。俺は心の中で謝罪をした。


『さぁ、すべての種目が終了いたしました! 本選出場に進むのはこいつらだー!!!』


 田中さんの実況と共にモニターに本選出場者の名前がずらりと表示された。

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