お父さんは二人いる

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きょうはちちのひのおてがみをかきまちた

「明後日は父の日です。今日は優しいお父さんへ手紙を書きましょう!」

 幼稚園の先生はわたしの前に白い画用紙を一枚ペラリと置いた。次に机の真ん中に虹になるように折り紙を広げる。机には六人が座っていて、色とりどりの折り紙をみんなが思い思いに取っていく。

 優しい、お父さん。

 いつも側に寄り添ってくれる、大きくて暖かくて優しいお父さん。お父さんはいつも青色を身に付けているから、わたしは青色の折り紙を手を伸ばした。

 ネクタイの折り方を先生が教えてくれて、わたしたちはそれを見ながら折っていく。

 山折、谷折、裏返して、また折って。

 ましかくと長いダイヤを合わせたみたいな形のネクタイが完成する。お父さんの首に着けているものとは少し違う形だ。角はちゃんと折れなくて先生みたいにはキレイに出来なかったけど、なんとか形にはなった。

 画用紙の左側に折り紙のネクタイを貼り付けて、右側にはお父さんへのお手紙を書きましょうと先生が言う。

 クレヨンを机に用意して、わたしは十二色の中から同じく青色を手に取った。


  おとうさんへ

  いつもいっぱいあそんでくれて

  ありがとう

  やさしいおとうさんがだいすき

     かなより


 手紙を書き終わった画用紙を先生が良くできたねと褒めてくれる。

「お父さんに渡すのが楽しみだね」

 これを渡したらお父さんはわたしのことをぎゅっと抱きしめてくれるかな。

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