ひとくち怪談 ─家編─

双町マチノスケ

第一話「金縛り明け」

 これは、自宅のアパートで起こった出来事です。


 初めての一人暮らしに選んだそのアパートで、私は人生初の金縛りを経験したんです。引っ越しとか諸々の疲れが出たのか、他に原因があったのか、今でもよく分かりません。少なくとも、事故物件だという説明は入居時ありませんでしたが……とにかく完全な金縛りでした。横向きで寝た体勢のまま本当に身体が動かなくなって、なんか圧迫感というか何かに締め上げられているような感覚もありました。

 まぁ…ここで耐え切れなくなって目を開けちゃって怖い思いをするって言うのが定番というかよくある展開だと思うんですけど、めちゃくちゃ怖がりだった私はとてもじゃないですが目を開ける気になれませんでした。目をぎゅっと閉じて、ひたすら朝になるのを待ったんです。途中で呻き声が聞こえたり、何かの気配を感じたような気がしましたが、どこまで現実だったのか分かりません。

 そうしているうちに、いつの間にか寝てしまって朝になったんです。私は恐る恐る目を開けました。何もいませんでした。それでもまだ怖くて、起き上がって周りを見回して。






 ──はっとして天井を見上げましたが、やっぱり何もいなくて。


 あぁ、もう気にしすぎだ。

 今日は休日なんだから、さっさと起きよう。

 そう思った私がベットから降りようとして床に足をつけた時。











 足首を掴まれたんです。


 ぬるっとした、気色の悪い感触でした。

 勇気を出して目を向けた時には、もう何もいませんでした。




 ……実際に見てないんだから気のせいだと思ってるんでしょ?

 私だってそう思いたいですよ、でも絶対違うんです。

 だって、掴まれたところ
















 何をしても消えない手形の痣が、今も残ってるんです。

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