第2話 マリファナ・大麻・LSD

 オックス・リーを殺したのは俺ってことになるのかなあ。結果的にって意味だけれど。あいつにマリファナ・大麻・LSD……、いけないおくすりを教えたのは俺だから。ドラッグにハマってなきゃ、結果的に鎮痛剤飲んだだけで亡くなるなんてこともなかったのかな。なんて考えることはあるよ。だからって俺にあの結末を予想できたかっていうと、そりゃムリでしょって話なんだけどね、ってことで、いいじゃん。終わりにしようよ、この話は。


 あいつの最期について詳しく知りたいってことだけど、広く世間に知れ渡った事実がすべていいじゃん。他に彼について話せることなんて何もないって。誰もが知る不世出のアクションスター、銀幕の中では最強の男だが、裏では心に悩みを抱え、幼少期のコンプレックスから抜け出せなかった。それでいいよね。


 映画ライターであると同時にオックスの大ファンだから、オックスについてのことならなんでもいいから話してほしい。って、訪ねてくる売文屋連中はみんな言うよね。おまえら俺に何を期待してんだよ。知られざるオックスの美談? 醜聞? もちろん、表に出したくないエピソードはいくらでもあるよ。ホントは。親友だったから。


 ガキのころ虚弱体質だったあいつは中国武術だけは性に合ってた。だから強さを追求し、実際に拳法の達人として世間に認知されることができた。もちろん精神面での脆さはあったよ。基本ヤンチャでおもしろいやつだから、女性に対しても紳士的。でも、そうでないときもあった。人間だからな。こう語れば満足か。もっと深く語れってか。じゃあ、俺にとっては良い思い出だが、ファンにとっては醜聞でしかない話をひとつしてやる。それを話してやるから、終わったらとっとと帰ってくれよな。


 ある俳優の談話より抜粋。

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