第10話 ロキ無双

 建物は鉄筋コンクリート製のように見える。入口はいかにも分厚い鋼鉄の扉で閉め切られており、インターホンがあるだけ。もちろん、バカ正直にインターホンなど鳴らさない。


「お邪魔しますよっと」


 扉を蹴り壊す。重さが果たして何十㎏かという扉が倒れ轟音が響き渡る。当然施設内はパニックだ。エントランスにはサイレンが響き、赤いランプがくるくると回りはじめる。すぐに駆けよってくる警備員。


「────ッ!!」


 ロシア語で怒鳴ってくる。手には拳銃。


「…………」


 恐らく動くな的なことだろう。もちろんそんなものは無視だ。俺は奥へと進む。

 

 パァンッ。

 

 小気味の良い破裂音。威嚇発砲ではなく、実弾が俺に向かって放たれた。アイテムボックスからバスターソードを引き抜き、刃の腹でそれを受ける。


「────ッ!!」


 警備員は一瞬ビクっと驚いたようだが、なおも怒鳴りながら発砲を続けてきた。二発、三発、四発、弾倉が空になったのだろう。発砲音が止まった。その全てを剣で受け止めた結果、俺の身体にはかすり傷一つついていない。


「────……」


 警備員は両手をダラリと下げ、一瞬呆然とし、ぼそっと何か呟くが、すぐに再起動して電話を取り出し俺をチラチラ見ながら電話口に怒鳴っていた。恐らく応援を呼んだのだろう。ダンジョンの中まで追ってくるならどうぞ。


 応援が来るまで待ってやるつもりもないので、扉を次々に蹴破り、ゲートへと辿り着く。さぁ、ダンジョンレベル11000の攻略の時間だ。


「まぁ一応、仮面は付けたままにしておくか。それじゃあ出発」


 ゲートから転移し、一階層の攻略を始める。万が一、勢いで追いかけてこられた時に俺の素顔や切り札ロキを見られるとマズイので、鬼の仮面をつけたままで俺一人での攻略となる。


「あんまり日本のダンジョンと変わらないな」


 ダンジョンの構造や敵の傾向などは色々な種類がある。ここはマシ―ナリーダンジョンのようだ。構造は金属のキューブ体が組み合わさってできているようなダンジョンで、敵はいわゆるロボ系だ。


「お、ファーストコンタクト」


 一体目のモンスターだ。予想通りマシーナリー。機械人形が剣を担いでいる。目が赤く光った。俺を敵と認識したようだ。


「かかってこい」


 ちょいちょいと手招きする。流石はダンジョンレベル11000か。機械人形は先ほどの銃弾より何倍も速い斬撃を繰り出してくる。


「だが遅いっ!!」


 振り下ろされるより先に、横一閃。上半身と下半身を真っ二つにする。


「ロキはお前の百倍は速いぞ。……多分」


 百倍かどうかは分からないが、段違いで速いことは確かだ。だが、これで大体ダンジョンのレベルは分かった。


「11000恐るるに足らず。いざボス部屋」


 俺は駆け足で攻略を始めるのであった。


「はい、首チョンパ」


 チェーンソーやガトリングガンなどを担いでくる人形たちを次々に倒し、ついに二階層へのゲートが見えた。これをくぐれば次の階層だ。


「よし、これでロキを呼べる。ロキ召喚」


 勢いで追ってきても二階層までは無理だろう。ということでロキを召喚した。


「じゃあサクッと行きますか」


「ウォフ!」


 ロキの目が鋭くなり、力強く返事が返ってくる。俺はバスターソードを片手にロキの背に乗る。


「GO!!」


「ウォフ!!」


 圧倒的だった。ロキの俊敏性、攻撃力が加われば一人での攻略速度の何倍、下手したら何十倍だ。結局、苦労することもなく、最下層まで一日で到着してしまう。


「速かったな」


「ウォフ」


 ロキは当然だ、と言わんばかりに一鳴きする。


「ま、これなら一休みするまでもない。さぁてボス部屋には何がいるかな」


 正規のボスがいるのか、それとも取り残された探索者が待ち構えているのか。


「ご対面」


「ウォフ」


 俺はボス部屋の扉を開け、中へと入るる。灯りは既についていた。


「つまり先客がいるわけだ。アレか?」


 探索者には見えない。ボスが復活したのか? というのも、そこにいたのは全身を分厚く丸みのある黒鉄に覆われた三メートルほどの鉄巨人だったからだ。俺のバスターソードよりデカい剣を両手に一本ずつ持っている。

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