第34話 テスト本番

 店での勉強会は毎日続いている。それぞれ用事があったりでメンバーは減ることもあるが、必ず誰かはいて分からないところを教え合ったりしている。たまに汐姉がお菓子とお茶を出してくれるから、疲れた脳にはありがたい。


 テスト勉強は順調。その一方で少し気がかりなことがあった。


「おはよう亮太……ふわぁ」

 教室に入ってきた姫野は大きなあくびをした。

「姫野、お前段々目の下のクマひどくなってるぞ。大丈夫か?」


 目の下には青黒いクマが居座っている。それに、いつも俺より先に登校しているのに遅刻ギリギリになっているのも心配だ。


「うん、大丈夫。ちょっと遅くまで勉強してて」

「姫野が、遅くまで勉強を……!?」

「ツチノコ見つけたみたいな顔はやめてくれる?」

 そう言って不満そうに眉をひそめた。


「だって、そもそも姫野が俺に勉強教えてって泣きついてこないのも不思議だったんだよ。1人でちゃんと出来てるのか?」

「頼もしい先生がいるから大丈夫だよ」


 俺じゃなくて他の奴に頼っているのがちょっと納得いかないけど仕方ない。塾とか家庭教師とか、プロにお願いしてるんならその方がいいだろう。


「それならいいけど。これでテスト本番に具合悪くなったらマズいんだから、ちゃんと睡眠はとれよ。ほどほどにな」

「うん。ありがと」

 そう言って微笑んだ。



 そしてついにテスト本番がやってきた。3日間のテストが始まると、勉強会で顔を合わせることもなくなった。学校でキラや茉由と話すことはないから2人の状況は分からないけど、まあ何とかやってるんだろう。

 1日目のテスト後にふと深恋の方に視線を向けると、ちょうど目があってピースサインをされた。大丈夫ということらしい。


 最終日の最後の科目が終わって、俺は大きく伸びをした。今回は勉強会のおかげもあってよく出来た気がする。

 俺は後ろの席を振り返った。


「なんとか終わったな」

 姫野は机に突っ伏していた。

「づがれだぁ……」

「お疲れ。それで自信のほどは?」

 俺の言葉に、突っ伏したまま右手の親指を立てた。

「かんぺき……」

「ならよかったよ」


 その時、ふとキラのことが頭に浮かんだ。キラもかなり気合が入っていて、勉強会で会うたびにクマが濃くなっていた。テストの出来はどうだったのか、次会ったら聞いてみよう。



 数日後、全てのテストが返却された。それと同時に成績の順位も発表された。

 俺は初めて50位以内の順位を取った。それは俺にとって大きなことだったけど、皇がついに学年1位を取ったことに比べると霞んでしまった。

 心配していた姫野とキラは2人とも赤点を回避したらしい。


「ねえ、テストも終わったことだし、今度の土曜日に亮太の家行ってもいい?」

 上機嫌な顔で姫野は言った。

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