第30話 相容れぬ者

「優太くん。お疲れ様」


剣持先輩から引き継いだ剣道部。どうにか新入生を入部させる事が出来た。


「優美ちゃん。どうしたの?」


「えっと…………ほら今日剣道部お休みなんでしょ?良かったら家来ない?」


新入生の勧誘も一段落した俺は、校門の前で立つ優美ちゃんに会った。


(母さん今日は遅くなるって言ってたし、おばさんは勧誘は任せたってどこか行ったし、久しぶりにお邪魔しようかな)


「そうだね。母さん帰り遅いって言ってたし、久しぶりにお邪魔しようかな」


「!?うん!そうしよ!!じゃあ行こ!!」


「あっ、優美ちゃん引っ張らなくても!」


隣で歩く優美ちゃんの嬉しそうな顔に懐かしさを覚える。これが当たり前だったということを思い出した。


「どう新しいクラスは?」


「まあ大西がいるし、騒がしいクラスになることは確定かな。優美ちゃんはどう?」


「うん。波留(はる)や聡美(さとみ)もいて楽しいよ」


「なら良かった」


「でも・・・・・優太くんがいないのが寂しいかな」


「えっ」


「ほっほら!これまでクラスが違うことなんてなかったし」


「確かにそうだね。まあクラスは違ってもこうして会えるし心配ないよ」


「うん・・・・・」


少しテンションが下がる優美ちゃん。相変わらず優美ちゃんのテンションの浮き沈みを計れないでいた。


「おい!なにガン見してんだゴラ!!」


怒鳴り声が俺達の帰り道に響く。


「なに?」


「誰かが輩に絡まれてるみたい」


鋭く睨みつける少年は無言のまま対峙した輩に胸倉を掴まれる。


「無視してんじゃねーよ!」


「・・・・・クズが」


「アッ!!」


「群れないと1人で喧嘩も売れないクズ共が俺に話かけんな」


一触即発の状況に居てもたってもいられず一歩踏み出す。


「お前ら!なにやってんだ!!」


「アン!テメーは神谷・・・・・」


「おい、やめとこーぜ。神谷は分が悪いだろ」


「竹刀なきゃただの陰キャだろ」


「なんだと・・・・・」


「ほらどうした?かかって・・・・・グフッツ!!」


輩のリーダー格が鋭く睨みつける少年にぶん殴られた。


「テメー!!なにしてグハッツ!!」


それを皮切りに鋭く睨みつける少年は次々と輩を倒していった。呆然と見守る俺。しかし次第に過激になるその力に俺は再び介入する。


「おい!もうよせ!!こいつらに闘う意志はない!!!」


血まみれのリーダー格の男に振り下ろされた拳を受け止める。


「なんで止めるんだよ」


「明らかにやり過ぎだ」


「こいつらが最初に吹っ掛けてきたんだ。別にお前は関係ないだろ?」


「これ以上は危険だ。既に君が勝ったって誰の目にみてもわかるじゃないか?」


「喧嘩ふっかっけてきたら、こうなる覚悟くらい当然してんだろ?」


睨みつける少年の視線を輩達は逸らした。


「・・・・・その覚悟もないくせに粋がるな雑魚が」


輩達は慌ててその場を後にする。


「・・・・・でお前」


鋭く睨みつける少年の闘志が収まってないことに俺は気づいていた。


「・・・・・なんだ?」


「良い子ぶって前に出るのは結構だけど。中途半端な覚悟じゃ痛い目みるぞ」


「!?」


(なんなんだコイツ・・・・・)


鋭く睨みつける少年は拳についた血を気にすることなく立ち去った。







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