3-07.スカーレットと一緒に遠足 前編

*  イーロン  *


 ノエルが新しい使用人を連れて来た。

 べつに人手不足という印象は無かったけれど、上手く隠してたのかな?


 人数は三人。

 今、ウチの部屋に来て挨拶をしている。 


「スカーレットよ」


 紅い長髪と宝石みたいな蒼い瞳。そして褐色の肌が特徴的な女性だ。年齢は、多分ウチと同じくらい。ノエルの友達なのかな?


「……アクアですぅ」


 水色の髪、翠色すいしょくの瞳。とても大人っぽい外見だけど、魔力の質から察するに七歳くらいかな? とても成長が速い。なんだか表情が引きつってるけど緊張してるのかな?


「……ライム」


 薄緑色のショートヘアと深紅の瞳。

 こちらの方は見た目も魔力の質も大人っぽい感じがする。でも、かなり緊張してるのかウチと目を合わせてくれない。チラチラ見てるけど、ウチが目を向けると直ぐに逸らされちゃう。


「うん、よろしくね」


 年の近い子が増えるのは嬉しい。

 使用人と貴族という立場だけど、ノエルみたいに仲良くなれたら嬉しいな。



 *  *  *



 新しい使用人が家に来てから二ヵ月が経過した。

 それは、ウチが朝の日課を終えて帰宅する途中のこと。


 スカーレットさんと出会った。

 ちょうど、家の門から出るところだった。


「イロハさま!?」

「……いろは?」

「い、いえ失礼しました。イーロンさま。何か御用でしょうか?」


 彼女は礼儀正しく頭を下げた。

 これが正しい使用人の反応なんだろうけど、ノエルが基準だから、むずがゆい。


 あと、ビックリした。いろは。前世の名前だ。

 それを彼女が知ってるわけないし……絶妙に噛んだのかな?


「顔を上げて」


 スカーレットは緊張した様子で顔を上げた。

 実際、すっごく表情が硬い。ウチそんなに怖いのかな? 確かに悪人顔だけども。


「どこか行くの?」

「……その、これから任務に向かうところです」


 任務? どういうこと?

 ……あっ、もしかして。


「ノエルの指示?」

「はい、ノエル様からの指示です」


 やっぱりだ。

 ノエル、陰謀論とか大好きだから。


 多分、大袈裟な表現をしてるだけ。

 使用人にお願いすること……お買い物かな?


「一人で大丈夫?」

「もちろん。精一杯、努めます」

「無理してない?」

「これは、あたしがやるべきことなので」


 うーん、意志は固いみたいだ。

 これは無理に手伝っても逆に迷惑かなぁ。


「……なぜ」


 と、スカーレットさん。


「なぜ、そのようなことを?」


 なぜ? ……難しい。

 ウチはどうしてお買い物を手伝う気になったのか。それは……


「一人じゃ、重いかと思って」

「……っ!?」


 そんなに驚くことかな?

 確かに、貴族が使用人に手を貸すのは珍しいと思うけど……。


「我らが主様のお力、一度、拝見したいと思っておりました」


 なんか大袈裟だな。

 ちょっと照れるかも。


「ご迷惑でなければ、是非、ご一緒に」

「うん、もちろんだよ」


 やった、一緒にお買い物だ。

 年が近いから、いつか仲良くなりたいと思ってたんだよね。


「それじゃ、早速行こうか」

「はい。現地までの案内は、あたしにお任せください」



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