第42話
「ひっ、誰じゃ、誰じゃ、お主は」
「お前が江戸家老の
「あぁ、お主には関係あるまいて。外には家臣が多くいるぞ。入り口の護衛を斬っただけで調子に乗るでないわ。
誰ぞ!誰ぞある!曲者じゃぁ!」
「お前、状況が分かっていないのか?
ここに来るまでに私がどれだけの者を斬ってきたのか、なぜ誰も来ないのか」
こちらに向かってくる足音はしない。
その時初めて女中の顔が見えた。目は虚ろになり、口からは唾液を垂らしている。すでに意識は遙か彼方を
後には、血飛沫を上げる女中の身体と、その返り血を全身に浴びる
「もう一度聞く、今回の件、首謀者は誰だ」
「おやおや、逃げ出す気か?
まぁ、逃がさないけどねぇ」
「さぁ、話せ」
「ひぃぃぃぃ」
情けない悲鳴が暗い部屋の中で響き渡った。
もう一度悲鳴が響く。
「これ、な~んだ?」
様々な表情が入り交じっている。
「よっ、よせ、止めろ。なっ、金なら、金ならいくらでも出す。
頼む止めてくれ!」
最後は悲鳴に近かった。沈めた針をゆっくりと引き抜いていく。針の先から真っ赤な、透明な液体がしたたり落ちる。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
「今回の首謀者は誰だ」
ゆっくりと
「今回の首謀者は誰だ」
ゆっくりと ゆっくりと
「今回の首謀者は誰だ」
ゆっくりと ゆっくりと ゆっくりと繰り返す。
「……は、なが…………ぶ……の、わた……の……あ…………だ」
もう一度…… もう一度…… もう一度……
「しゅぼ…………は……ながさ……き……ぶぎょう……わたし……あに…………」
液体の入っていた箱の中から一つだけ筒を抜き出すと、それを懐にしまい込んだ。箱の位置を女中の身体の向こう側へ移動させ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます