第24話 道具は…手に馴染む物が一番だと思いませんか? 4

シドーニエと別れた僕たちは18番地区のガンディロスを訪ねた。


「いらっしゃいませ。 もう一度来店されるまで暫く掛かると思っておりましたが.....」


「いえ今日はまだ素材をお持ちした訳ではありません。ガンディロスさんに少しお願いがありまして」


「はぁ、なんでしょうか?」


「今回の素材騒動はもう少しで収束します。それまでは鍛冶屋街の店主達に早まった事をしない様に呼び掛けて頂きたいのです」


 ガンディロスが目を見開く。


「失礼ですが。コーサカさんは何者なんですか? あれだけ強硬だったアレディング商会が手を引くなんて正直まだ信じられません。収束までは最長でどの位です?」


「僕は只の魔法使いです。そうですね・・・長くても2週間はかからないでしょう。その間に最低限必要な素材はこちらで都合をつけます。そうすれば持ちこたえて頂けますか?」


 ガンディロスは益々呆れかえった顔で呟く。


「全く……あなたは本当に何者なんでしょうか?」


 今度は答えることなく苦笑だけを返した。立場が逆ならそれこそ信じられない。


「まあ僕も口だけで信じて頂けるとは思っていません。そうですね……3日後、信じて頂ける根拠を持ってもう一度伺います。その時改めてお話しましょう」


「分かりました。皆さんには3日は軽はずみな事をしない様にお話ししておきます。何卒よろしくお願いします」


「はい。よろしくお願い致します」


 これで鍛冶屋街は暫く動かない筈だ。あとは伯爵に根回しすればなんとかなるだろう.....


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 とりあえず必要な訪問先は全て回り終えたので宿に戻る。暫く宿でミネルヴァと今後の予定を話合っていると、ビットナー伯爵からの使者がやってきて手紙を渡していった。


 手紙には良ければ今夜にでも伯爵邸に訪問して欲しいという内容だった。ゲートを通らないで伯爵邸の前まで転移しても構わないと書かれている。


「多少慌ただしいが話が早くて助かるな。ミネルヴァ、伯爵邸近辺の人目のない所に座標設定を頼むよ」


「承知致しました。.....設定完了です」


「ありがとう。じゃあ行こうか……“ムーヴ”」


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 ビットナー伯爵邸の執務室。


 人払いをした室内でカナタが先日から集めた情報を元に組み立てた事件のあらましを説明していた。


「その情報が本当なら恐るべき事だな。証拠はあるのかね?」


「申し訳ありませんがお渡し出来る証拠はほぼありません。まあ、彼らのならお伝えできますが……」


「それで充分だ。本来なら摘発や証拠固めは国の仕事だからな」


「そもそも私がそれらの情報を取得した手法は誉められた物でもありませんし……本来なら伯爵閣下とお約束した手前もあってこういう行為は避けるべきでした。申し訳ありません」


「それこそまだ契約前である以上コーサカ殿の行動を縛る訳にもいくまい。契約後は事前に相談して事を起こしてくれると我々としても助かるがな」


「恐縮です」


「なんにしてもアレディング商会は王都でも最大手の商会だ。証拠固めも慎重に行う必要があるし捕縛にも下準備が必要だ。その間鍛冶屋街の方はどうする?」


「それについては僕の方に考えがあります。それで伯爵に是非お願いしたいことがあります」


 そこでこちらが用意した打開策を話す。


「……それはまた…… 宰相に話を通す必要が有るが恐らく可能だろう。こちらにも有益な話しだからな。しかしコーサカ殿をもってしても可能なのか?」


「シドーニエさんからお聞き頂いているかもしれませんが既に下調べも済んでいます。2週間程度なら何とかなるかと……」


「わかった。宰相には話を通しておく。それで出発はいつ?」


「可能なら明朝からでも」


「……分かった。こちらからシドーニエを付けたいが構わないだろうか?」


「問題ありません。それでは明朝8時にシドーニエさんを迎えに参ります。宜しくお願い致します」



「承知した。手間をかけるが一つ宜しく頼むよ」


「かしこまりました」


 これで全ての根回しを済ますことが出来た。明日から暫くは王都を離れる事になる。今日はゆっくり休むとしよう。

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