第46話 五人の俺、必殺技を考える

 俺は考えていた。

 先日の巨大兵器ロボギアナギア戦でトドメを刺すとき、五人の俺オレンジャーズは五人同時にパンチを繰り出した。

 戦隊的にあの場面では、必殺技を出すべきだったのではないだろうか、と。エルフィンドールズも、しれっと必殺技の熱殺蜂球を出していたし。


 その件については、当然のように四人の俺赤、黒、黄、桃も考えていた。


 ということで、五人の俺オレンジャーズは『第二回オレンジャーズ会議』を開催した。


「はい、ということで、今回も俺グリーンが進行をさせてもらいます。アストラル砲弾作成のノルマもまだ残ってますので、テキパキといきましょう」


 五人の俺オレンジャーズは忙しい。


「議事録は俺が取りますよ」


 俺ブラックが議事録を取ってくれるようだ。面倒な作業なので、ありがたい。


「さっそくですけど、私、一つ提案があるんですけど」


 さっそく俺ピンクが発言する。腹案があるようだ。


「私、エステラちゃんに聞いて、みんなにも話してますけど、羽根を出したいなと思ってます」


 それは見た目的にもいい考えだ。

 すぐに俺イエローが反応する。


「それ、良いですねー。ちょっとだけなら飛べるっぽいですしね」


 そう、エステラちゃんとナタリアちゃんは、たまに飛んでいた。

 あとテンションが高そうなときには、少しだけ浮いていた。テンションが上がると、少し浮くとか可愛いなと思っていた。

 俺も少しだけで良いので、飛んでみたい。


「採用で」


 全員一致で採用となった。


「俺からも良いですか」


 今度は俺レッドの発言だ。


「前にも話したことあるんですけど、俺は拳からオーラ的なものを発射したいと思ってるんですよ。ギアナギアのエネルギー弾を見て、イメージが湧いて、できそうな気がしてるんですけど」


 俺レッドの発言に対して、俺ブラックが反応する。


「俺も発射できそうな気がしてますよ。なずなちゃんとかすみちゃんは、覚醒していきなり白い光の盾を出してましたしね」


 そう、ホワイトシュシュのなずなちゃんとかすみちゃんは、唐突に白い光の盾を発動させていた。

 アストラル神に『キュートで優しく大きな力を持っている』と言われる素質は伊達ではない。


 そして、俺にも五分割されるほどの力があるので、エネルギー弾ぐらい発射できても良い気がしている。

 アストラル砲弾作りが忙しくて、なかなか試す機会がないが、少し練習すれば発射できるのではないだろうか。


「採用で」


 全員一致で採用となった。


「エネルギー弾も良いんですけど、一撃必殺ではなさそうなんですよね……」


 今度は俺イエローの発言だ。

 そう、エネルギー弾は便利そうで良いのだが、一撃必殺感に欠ける。

 それは俺も思った。


 五人の俺オレンジャーズは、引き続きガヤガヤと相談する。


「ですよね。ギアナギアみたいに回復されると、無駄撃ちになりますよね」

「なにか良い案は、ないですかね」


 全員俺なので、意見の多様性に欠けるのが、五人の俺オレンジャーズの欠点だ。

 しばしの間、沈黙が続いたが、俺ブラックが思いつく。


「誰か一人にアストラルエナジーを集めるとかできるんじゃないですか。アストラル砲弾作りの要領で」


 その提案に俺レッドと俺イエローが同意する。


「おー確かに。できそうな気がしますね」

「ちょっと試してみましょうよ」


 さっそく各人にアストラルエナジーを注入することができるのかを試してみる。しかし。


「アストラル砲弾のようにはいきませんね」

「ですね。なぜだか砲弾と違って注入しにくいですよね」


 思ったほど簡単にはいかなかった。そうそう都合よくはいかないようだ。

 ただし、四人の俺赤、黒、黄、桃が言うには。


「でも俺グリーンさんへは注入できそうな感じがあるんですよ」

「あ、俺も同じです。なんかあとちょっとって感じ」

「俺もそう思いました。俺グリーンさん、平均的ですもんね」

「俺グリーンさん、いい意味で特徴がないですからね」


 えっ? 俺?

 自分自身ではよくわからないのだが、そうなのか。

 確かに俺には特徴がないからな。


「あれ、そうなんですか。熱くてシンドイですけど、もっと我慢しないとダメですかね」


 その後もガヤガヤと相談をしたが、それ以上の意見は出なかった。

 俺は今回のまとめとして、習得したい必殺技候補をホワイトボードへ書き出す。


 ①羽根を出して飛ぶ

 ②拳からエネルギー弾

 ③俺グリーンに力を集約して一気に解放


「ではこの三つを、これからの訓練で習得できるように頑張りましょう。今日はお疲れ様でした」


 最後に俺が締めて、第二回オレンジャーズ会議は終了した。


 翌日から五人の俺オレンジャーズは、特訓を開始した。

 講師としてエルフィンドールズを招き、アストラルパワーの使い方について指導を仰ぐ。

 どうやらアストラルパワーは、そのときの気持ちや集中力によって出力が大きく変わるようだ。

 五人の俺オレンジャーズはアストラルパワーの使い方が下手な上に、ムラがあるので、いつでも一定レベルで使えるようになっていきたい。


 そうして訓練すること数日後、初めて羽根を出すことに成功した。

 小さなエネルギー弾を発射することもできた。

 俺に力を集約して一気に解放する技も少しずつではあるが、その威力が増している。

 今はまだ弱々しくて使い物にならないレベルだが、いずれは必殺技と言えるレベルに昇華させたい。



 ◇◇◇



 分身戦隊オレンジャーズ!

 地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!

 力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。


 つづく!

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