第40話 私は嘘つきじゃない
ゴルゴスによるクーデターのあとの星幽結社エルリンケイム。
私のお母さんは、星幽結社エルリンケイムの総統だった。
しかし、ドローレアとゴルゴスの策謀により奪われた。
私のお父さんが創設した星幽結社エルリンケイム。
お父さんとお母さんが大切にしてきた星幽結社エルリンケイム。
その星幽結社エルリンケイムが悪の組織になってしまった。
私はドローレアに命じられて、独居房に入れられた。
結社の利益に反することをした懲罰だと言う。
力のない私は、悔しいのに、怖くて何もできなかった。
薄暗い独居房に一人でいると、より一層、悔しくて悲しくなった。
「地球にゴールド戦闘団を送り込むってよ。下等種は皆殺しだ。エステラァ、お前、下等種の仲間だろ? お前も一緒に死んだ方がいいんじゃねぇの? ギャハハハハハッ!」
ドローレアの右腕グラニットが私に酷いことを言ってくる。
でも今の私には、何もできない。
私は悔しくて悲しくて、下を向く。
ゴールド戦闘団は、とても強い。
地球の皆さんが心配だ。
強くなったオレンジャーズさん、負けないで。
私には願うことしかできない。
無力な自分が嫌になる。
「チッ、エステラ、お前、もうここから出て良いってよ。ドローレア様も甘いなぁ。ゴールド戦闘団は全滅するしよぅ。つまんねー」
私はグラニットによって、乱暴に独居房から引きずり出される。
腕を強く引っ張られて、四つん這いに倒れてしまう。
でも良かった。
あの強いゴールド戦闘団にオレンジャーズさんが勝ったんだ。
オレンジャーズさん、すごいな。
独居房から出た私は、総統の座を奪われたお母さんと、初めて顔を合わせる。
お母さんは総統室から本拠地内の隅にある小さな個室に追いやられていた。
久しぶりに顔を合わせたお母さんに「ごめんね」と謝られた。
それまで我慢していたけれど、私は少し泣いてしまった。
だけどお母さん、元気はなくても心は折れていないようだった。
何も諦めてはいないようだった。
軽々しく大丈夫とは口にしないけど、お母さんの目がそう語っている。
こんなことになっても、お母さんは強い。
私も前を向いて頑張ろう。
下を向いてばかりでは、きっとダメだ。
そんなとき、星幽結社エルリンケイムの巨大
お母さんの部屋は、外部の様子を映像で見ることができた。
ドローレアも知っているはずだけれど、黙認されているようだった。
私はお母さんと一緒に、地球で起こっている戦闘を映像で見る。
オレンジャーズさんと、その仲間の人たちが頑張っていた。
だけど大勢のゴールド戦闘団に苦戦している。
それに巨大
オレンジャーズさんやその仲間の人たちが徐々に倒されていく。
素敵な街並みだなと思っていた場所が次々に破壊されていく。
お父さんとお母さんが大切にしてきた星幽結社エルリンケイム。
その星幽結社エルリンケイムが、地球を無残な姿に変えている。
地球に住むたくさんの人々を苦しめている。
私の大好きな人たちを傷つけている。
――――こんなの、もう見ていられない。
今、私がいるところはここじゃない。
地球にある日本という国、それは私の担当だ。
私がお母さんに任命されたんだ。
これ以上、星幽結社エルリンケイムに地球を壊させない。
私はオレンジャーズさんと一緒に地球を守りたい。
私はお母さんに宣言する。
「私、地球へ行きます! 星幽結社エルリンケイムの暴走を止めてきます!」
だけど、お母さんは反対した。
「ドローレアは、あなたが地球に行ったところを殺す気です。母として、そんなところへは行かせられません」
お母さんが心配してくれる気持ちはよくわかる。
だけど、それでも。
「それでも私は地球の皆さんを見殺しにはできません」
私の言葉を聞いて、お母さんが優しく微笑む。
「ふふ、やっぱりエステラちゃんはお父さんにそっくりね。こうなったときのお父さんは止められなかったわ。エステラちゃんもきっとそう。あなたの持つ力、みんなのために役立てきなさい」
お母さんが許可してくれた。
お母さんが私の力を信じてくれた。
「うん、頑張ってくる。地球の皆さんもアストラルエナジーを利用できるようになっているし、私、一人だけじゃないから大丈夫」
私はそう言って気がついた。
そういえば、地球の皆さんがアストラルエナジーを利用できるようになったのは、総統だったときのお母さんの指示があったから。
お母さんは、この状況になる可能性を考えていた!?
「あっ、もしかしてお母さんは、こうなることも予想してたの!?」
お母さんが静かに答える。
「……そうね。ドローレアはアストラルエナジーが豊富にある地球の存在を知っていた。私が地球を好きなことも知っていた。だから、もしものときは、地球の皆さん自身でも戦えるようにと思ってね」
そうなんだ。お母さんはもう先手を打ってくれていた。
やっぱり私のお母さんはすごいな。
「そうなんだ。ありがとう、お母さん!」
「地球の皆さんは研究熱心で、色々な可能性を秘めています。そこにエステラちゃんの力が加われば負けないはず。一緒に頑張ってきて」
お母さんの言葉に私は力が湧いてくる。
「はい、お母さん! 私は――、エステラ・アウストリアは、地球の皆さん、オレンジャーズさんと一緒に戦います。星幽結社エルリンケイムに、地球に住む人々を皆殺しになんかさせません」
そう、私はオレンジャーズさんに「皆殺しになんかしませんよ」って言ったんだ。
私は嘘つきじゃないし、星幽結社エルリンケイムは悪の組織なんかじゃない。
「お父さんの作った結社を、悪の組織になんかさせません。私が星幽結社エルリンケイムを取り戻して、地球を守ります!」
私はお母さんに決意を伝えた。
そして、私を支えてくれるのは、お母さんだけではなかった。
私には一緒に戦ってくれる仲間がいた。
私には助けてくれるお友達がいた。
「エステラちゃん! 今、そこで聞いちゃったけど、ナタリアも一緒に行くよ!」
「えっ、ナタリアちゃん!? 一緒にって、すごく危ないよ?」
「危ないからナタリアがいた方がいいんじゃん? エステラちゃんとナタリア、二人でエルフィンドールズだよ。地球の人が名付けてくれたエルフィンドールズ!」
「……うん、そっか、そうだよね。ありがとう、ナタリアちゃん。ナタリアちゃんがいてくれれば、私すごく安心。一緒に来て! ナタリアちゃん!」
私はナタリアちゃんと一緒に地球へ向かう。
◇◇◇
分身戦隊オレンジャーズ!
地球から悪が滅びるその日まで、オレンジャーズの五人は力を合わせて戦い続ける!
力を合わせると言っても、もともと全員、俺なんだが。
つづく!
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