2年2組裁判開廷

「三矢くんおはよう」


「おはよう」


「朝早いのね」


「昨日遅刻しかけたからな、今日は戒め含めてちょっと早めに……ってえっと八重さんどしたの?」


「一昨日は本当にありがとうね」


「いや、昨日お菓子もらったし本当に気にしなくていいよ」


「なるほど、うん、やっぱり!…………ねぇ三矢くんお昼ご飯一緒にどうかな?私あなたの事もっと知りたいの」


 ず、随分と突然だな。いや、昨日のこともあったし別に突然じゃないのか?とはいえ、こういう流れは中学の時に散々あった。


「あー楓に聞いてみないと分かんないかな」


 また楓狙いだろう。昨日から見ていたからな。高校に入ってからは外堀から埋めてくるようなものは無かったが中学ではよくあった。昔からこういうのは全部楓に投げてたが1度も成功したケースを見ていない。多分今回も……


「おはよう珍しい組み合わせだね」


「いい所に来たな、八重さんが一緒に昼飯食わないかだって?」


「うんいいよ」


 いいんかい。おいおい、何だよその面白いことになって来たなという顔は。怖えよ。


「あーということらしいから大丈夫だぞ」


「本当?やった!あ、また後でね!教室に迎えに行くから!」


 あ、すごい速さで去っていった。にしても……


「いいのか?」


「うん?もちろん、僕にとっては最高の娯楽になりそうだからね。それよりも、そっちこそ大丈夫なの?」


「へ?」


「みつやくーん、OHANASHIおはなししようか?」


 という声の方を見ると、そこには無理やり作ったような不気味な笑顔を浮かべる男どもと目をキラキラと輝かせている姦しい女子たち。あと、何故か紐を持っているサッカー部員3人衆……どっから持ってきたんだよそんな紐。てか嫌な予感しかしないんだが


 ……おい、じりじりと近寄ってくるんじゃない。


「よっしゃかこめかこめ!」


「おいよせ!変なとこ触んな!やめろおおおおお」


「すまん、三矢!だがこれもしょうがないこと、あ逃げようとか考えるなよ?より強く結ばないと行けなくなるから」


 どういうことだってんだ?なぜ俺は椅子に結び付けられている?!分からない!何も分からない!


「みつやくぅん、君にはとある容疑がかかっている。わかるねぇ?」


 何でナイフを舐めてる系盗賊のロールプレイ?というか


「おい、禿げた頭を俺に擦り付けるんじゃない。禿田、俺が何をしたっていうんだ?」


「禿田じゃない生田はえただ!ごほん、君は何も立場を理解していない用だねぇ。鈴木説明お願いしますねぇ?」


「え、おれ?いきなりじゃね?これ読めばいいん?えー三矢彩雫。君には八重さんと仲良しにしすぎじゃない罪がある。認めるか?」


「ちょっと待てお前らは何か勘違いしている。八重さんは―――」


 楓を狙っているんだ!とは言えないか。でもこの状況どうやって切り抜けよう。


「待て待てぇ、皆まで言うな。三矢お前は八重さんについて深く知らないようだがなぁ、八重さんはおはようなんて言わないんだよねぇ。誰に対してもおはようございますなんだぁ。上品!清楚!それが八重さんだぁ。だが!それなのに三矢くんにはあんなに、あんなに仲良さそうにッ!とても!とてもうらやましい!」


「おーいロールプレイ乱れてるぞ」


 にしてもそれは本当なのか?確かに昨日傘を返しに来た時の雰囲気はもっとこうTHE優等生といったもので話し方もおしとやかなものだった。とすると八重さんはそこまで楓を、いや『あなたの事をもっと知りたいの……』これはもしかすると……本心から俺に向けられたものなのか?


 と考えていると女生徒(名前は知らない)が大きくてを上げて質問を投げかけてくる。


「はいはーい!私は仲良くなったきっかけが知りたいでーす」


「きっかけ?うーん、傘渡したくらいだけどな」


「禿田裁判官!判決は?!」


「……NOT ギルティだが……詳細教えてくれるよねぇ?」


「詳細?八重さんが傘を忘れたみたいだったから傘を渡してそのまま走り去っただけだぞ?」


「ギルティ……か?専門委員の女性方はどう思われますかねぇ? 」


 あ、この間やったな専門委員。えっと、裁判において何かにおいての専門知識で裁判官にアドバイスする的な役職だったかな。なるほど女心の専門家として女子高生以上に適切な人は居ないだろうな。


「え、私?こほん専門委員の確認なんだけど傘本当に渡せたの?」


「あぁーどうなんだろう、早く帰りたかったから本当にそのまま走り去っちゃって見てないな。でもあの豪雨だったし使ったは使っただろうから渡せたんじゃね?」


「使った?!あの八重様が!?私調べによると同じような流れで八重様に不相応にもお近づきになろうと傘を渡した人達が4人居たわ!でも、さすが八重様!『それでは、あなたが濡れてしまうでしょ?』と言いその場を颯爽と去ったのよ!」


 あ、こいつあれだ女心の専門家じゃなくて八重百合の専門家だ。


「貝田専門委員、結論をお願いしますねぇ」


「あ、ごめん!つい盛り上がっちゃって。結論だけど、やっぱり以前から面識あったんじゃないかな?じゃないと傘を渡せたことの説明がつかない。考えられる可能性は以前から知り合いだったか。もしくは三矢くんが……嘘をついているか」


『キーンコーンカーンコーン』とチャイムがなると同時に見計らっていたようなタイミングでドアを開け先生が入ってくる。


「はーいみんなーそれくらいにして席を戻しなさーい」


「くっ、ここまでか。命拾いしたようですねぇ」


 命拾いしたとかいうセリフ、リアルで聞けるとはな。それも命拾いする側で。八重百合の専門家、貝田さんの話を聞く感じ俺は以前面識があったのか?いや、無いはずだ。


「いやぁ、面白い事になってきたねぇ」


「お前何か噛んでねぇよな?」


「今回僕は何も関与していないよ?珍しくね」


 楓は嘘はつかない。とすると、八重百合さんは本当に……俺の事を知りたがってる?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る