第6話 報告


「お父様。今すぐ報告したいことがあります」


朝出て行ったばかりの娘が夜遅く戻ってきただけでなく、服が汚れていてただ事ではないと瞬時に察し三人に座るよう命じた。


三人は馬に乗れたので行きよりだいぶ早いスピードで屋敷にこれた。


馬は近くの使用人に任せてサルビアの部屋に向かった。


「何があった」


「町には原因不明の病気が流行りそこら中に死体がありました。土は乾き木は枯れ果ております。水が二か月前から少しずつなくなっていき、気づけば川も泉の水も枯れ果てていたそうです。何とか井戸の水でやっていたそうですが、それもあと少しで底をつきます」


「なっ!それは一体どういうことだ」


「まだ、詳しいことは何一つわかっていません。ただ一つ言えることはこれは人為的に起こされたものだと思います」


「それは確かか」


信じらない、と言った目をマーガレットに向ける。


「はい。間違いないと思います。誰がどうやったのかはまだわかりませんが、間違いなくこの件には何かあります。そして、この公爵家の中にそれを手伝ったら者がいます。詳しい説明は後いたします。まずは、医師と水と食料の手配をお願いします。その間にこの件に関わった者を私は見つけ出します」


「わかった。そちらは任せよう」


「はい」




「お嬢様。これからどうやってその者を見つけるのですか」


護衛はマーガレットが何をしようとしているのかがわからず尋ねる。


「公爵家の紋章が入った手紙は誰が届けるか知っている?」


「それは、貴族専用の郵便局を使うのでは」


「そうよ。他の方法もあるけど、私達は基本そこを使ってやり取りしてるわ。多分私の勘が正しければその者は郵便局に手紙が渡る前に処分したのよ」


「何故ですか?」


護衛にはさっぱりわからない。


「貴族専用郵便局は貴族の信用あってこそ成り立っているの。もし、預けた物が相手側に届いてないとしてら大問題になるわ。中には貴族に大して礼儀がなっていないとして罪を着せるものもいる。そんな貴族相手に手紙の内容をすり替えたり捨てたりするとは思えないのよね」


「確かにその通りです」


「では、手紙はどこにいったのか。答えは執事に聞けばわかるわ」


コンコンコン。


執事長のメイナードがいる部屋の扉を叩く。


「夜遅くに申し訳ありません。マーガレットです」


「お嬢様。どうされましたか」


寝巻きのまま急いで扉を開ける。


マーガレットの隣にいる護衛を見てただ事ではないと察する。


「実は聞きたいことがあってきたの」


「ここでは何なので中にお入りください」


「ありがとう。でも大丈夫よ。すぐ終わるから」


「そうですか」


「リュミエール救済院とそこの領主に送る手紙は毎回貴方がお父様から預かっているのよね」


マーガレットの言葉に護衛はまさか執事長が裏切りものかと疑い、一緒に来た領主の部下は鬼のよな目で睨みつける。


「はい。そうですが、それがどうかしましたか」


部下は今にも執事長を殴りかかりそうだったがマーガレットが手で静止した。


「それを誰に命じて郵便局に持っていくよう指示したか覚えているかしら」


「確か、ジョンとシーラ、あとはヴァイオレットですかね。それがどうかしましたか」


何故そんなことをこんな夜遅くに聞きに来るか全く検討もつかない。


「その内の誰か、又は全員が公爵家の手紙を盗んだのよ」


メイナードが質問する前にその疑問に答える。


「はぁ!?えっ!いや、そ、それは本当なのですかお嬢様」


今ので完全に目が覚めた。


素っ頓狂な声を出し、執事としてはあるまじき行為をしてしまう。


「ええ、間違いないわ。貴方ではないのならね」


遠回しに貴方は違うわよね、と尋ねる。


「勿論です!今の私は旦那様のお陰でここにいられるのです。恩を仇で返すなど絶対にあり得ません!」


「そうね。貴方はそんなことをしないわ。だから彼等以外考えられないのよ」


もう行くわ、と使用人の部屋に向かおうとする三人に「お待ちください。私もいきます」

と、何がどうなっているのか自分の目で確かめたい。


「わかったわ。行きましょう」


「ありがとうございます。お嬢様」


 メイナードは深く頭を下げる。


「使用人部屋の鍵は誰が管理しているの」


「アルマとレオナードです」


メイド長のアルマと執事補佐のレオナードの二人が持っている、と。


「私がアルマの所に行くわ。メイナードはレオナードの所に行って」


「かしこまりました」


男女で使う部屋の階は違う。


使用人が使う階は異性の立ち入りを禁止している。


コンコンコン。


「夜遅くに申し訳ありません。マーガレットです。扉を開けてください」


扉を叩く音で目を覚ますも少しボーッとしてしまう。


何事かと体をのそのそと起き上がっていると声の主が誰かわかるとカッと目を見開き急いでベットから降り扉を開ける。


「お嬢様。どうかされましたか」


こんな夜遅くに何かあったのかと心配して扉を開けるも、マーガレット達の姿を見てただ事ではないと察し自分が今から何をするべきか考える。


「今すぐ私と一緒に来て欲しいのです。使用人達の部屋の鍵は貴方が持っているのよね」


「はい。……ここにあります」


引き出しから使用人の個人部屋の鍵が沢山ついているのを取り出す。


「ヴァイオレットとシーラが使っている部屋を開けてください」


「はい。お嬢様」


二人が使っている部屋の鍵を探す。


まず、最初にシーラの部屋を開ける。


中に入るとベットの上で寝ている。


「二人は彼女が逃げないよう見張っていて」


そう言うともう一人の部屋を開けるため移動する。


「ここです」


部屋を開けるため鍵を差し込む。


ガチャ。


鍵を開け部屋の扉を音がでないよう慎重に開ける。


中に入るとその部屋には誰もいなかった。


部屋にある荷物は綺麗になくなっている。


二日前にリュミエール救済院に行くことは決まっていたので、逃げる準備は充分にあった。


マーガレットが出発してからこの屋敷を出たのだろう。


今更追いかけても見つけるのは難しい。


「シーラに話を聞かなければいけません。戻りましょう」


マーガレットはアルマと一緒に話を聞くために二人の所に戻る。


「二人はメイナードの所に行って来てください。向こうがどうなっているか確認してきてください。その間に私達は彼女を起こして話を聞きます」


寝起きを男に見られるのは嫌だろうと配慮する。


「かしこまりました」


護衛がそう言うと二人はメイナードのところに向かう。


「では、彼女から話を聞きましょうか」


「はい。お嬢様」

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