第7話


 麗羅がどんな私服を見せてくれるのか、期待していた。想像しては赤面したり、ニヤけたりする俺。周りからはどう思われてるんだろう……変態、とか? でも、しょうがないだろ。麗羅が可愛すぎるんだから。


「杉崎ー」


 待ち合わせ場所に少し遅れて、麗羅が来た。


「杉崎に可愛いって言われたくて、服選びで迷ってたら、遅くなっちゃったっ。待たせてごめんね。どう? あたしの私服」


 俺は目を逸らす。こんなの、直視出来ない。直視したら――尊死してしまう。


 俺が何も言えずにいると、彼女は首を傾げながら、上目遣いで見つめてくる。そして再び問うてくる。


「どう? あたしの私服、可愛い?」


 吐血しそう……グフッ。


「か、可愛いです。とても」


「なんで敬語なの?」


 俺は冷静になる為に遊園地のパンフレットを開く。行こうとしている所はアトラクションが豊富で人気の遊園地だ。


「麗羅は乗りたいアトラクションとか、あるか?」


「んー、ジェットコースターは絶対乗りたいかな」


 ……。

 俺はジェットコースターが苦手だった。でも、麗羅にはカッコ悪いとこ、見せたくない。ここは平気なフリ、するしかないか。


「俺も乗りたい」


「じゃ、一番最初に乗ろっか」


 ちょ、ちょ、心の準備があぁー!


 俺が真っ青な顔をしている事に彼女は気づく。


「もしかして怖いの? 大丈夫だよ、あたしがいるから。手、繋いでてあげるから」


 ふっ、と天使のように微笑む麗羅。

 あまりの可愛さにまた吐血しそうだった。


 そして、麗羅は俺の左腕に抱きついてきた。何これ、密着度がやばい。


「!」


「付き合ってるんだから、これくらい当然でしょ?」


 あまりの恥ずかしさに何も言えない。

 麗羅も余裕そうに見えて、実際は顔は林檎のように赤い。


 電車に乗り、遊園地の最寄り駅で降りる。

 電車に乗っている最中は、二人とも無言だった。でも、麗羅は何か言いたそうにもじもじしていた。


 遊園地まで数分歩く。

 中途、口をパクパクさせている彼女に俺は不審に思う。


「あのさ、杉崎のこと、律矢って呼んでもいい?」


 麗羅はやっとの思いで、言いたいことが言えた。


「いいよ」


 すんなり了承してくれた事に麗羅はホッとする。


「ありがと。律矢ってカッコいい名前だね!」


「サンキュ」


「律矢」


「ん? どうした」


「呼んでみたかっただけ」

「律矢」


「麗羅」


「律矢。んふっ」


 麗羅は照れ笑いをする。


 そんなやりとりを繰り返しているうちに、遊園地に着いた。


「律矢」


「ん?」


「こんなあたしと付き合ってくれて、ありがとね」


 太陽に照らされた眩しい笑顔。

 優しくて柔らかな声。

 こんなに素敵な彼女が出来て、良かったと心の底から俺は思った。



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