転生先の人生を決めなければ消えると聞いて焦っています
はこにわにわに
第1話 シマダとチュートリアルさん
「ようこそ、チュートリアルを始めます」
シマダは淡いクリーム色の空間にいた。
目の前には光ってる人……光に包まれていてかろうじて人型だとわかる存在……が語りかけてきた。
「ようこそ、アエギタロスへ。ワタシは『チュートリアルさん』です。お名前を教えて下さい」
光り輝いていて表情は見えないはずなのに、彼が微笑んでいるように感じた。
「えーと、ボクはシマダです。あなたは……『チュートリアルさん』? それって名前なの? なんで自分に『さん』つけてるの?」
「前に来た方がワタシに名前がないのは不便だとつけてくれました。その時に初めの挨拶にも『チュートリアル』と説明し始めれば良いと。ワタシもそれを気に入ったので」
戸惑うシマダにチュートリアルさんは話し続けた。その声は感情を帯びていないが、不気味さはない。
「こ、これってもしかしてボクは異世界転生しちゃったって事なの?」
シマダは戸惑いつつも期待しながら聞いた。
「そうです。ここは『異世界』です。この言葉もワタシを名付けてくれた人に教わりました」
異世界転生だ……! シマダは一瞬だけ喜んだが、すぐに後悔の念が襲って来た。
「異世界って事はボクはそのぉ……もしかして死んじゃったのかな?」
「その通りです。ここからは『アンケート』になります。あなたはここに来る事になったきっかけなどを覚えていますか?」
シマダは、この場にはふさわしくない言葉が続くため、気を楽にした。
「アンケートって……えっとね、多分電車に乗って学校に行く途中だったと思う」
確か学校が終わって塾へ行こうとして電車に乗ったんだよなぁ。
いつもは混んでるのにその日は運よく座れて、即寝落ちして……
「起きたらここにいたんだった」
冷静に話すシマダに光を瞬かせながら、チュートリアルさんが頷いた。
「あなたの乗っていた汽車が脱線事故を起こしたのです」
「電車の脱線事故? 何にも覚えてないけど痛かったんだろうなぁ。覚えてなくてよかったけど」
脱線事故に巻き込まれたとは言え、シマダは思ったよりも動じていない事に自ら驚いた。
当のシマダにその記憶がらないのだからしょうがないと言えばしょうがない。
「まぁ、いいや。アンケートよりもここが何なのかその説明を聞きたいんだけど」
「わかりました。
転生した人は、このアエギタロスで特別な使命を果たすか、何かし続けなければいけません。
ここで選択をした瞬間から彼らアエギタロスへと転送されます。
転送後、あなた達は自身の運命を切り開き、使命を果たす事で元の世界に戻れる可能性が生まれます。
ただし、決めた事を維持出来なければ存在が消滅するという厳しい現実があなた達を待ち受けています。
説明は以上です。他に何か質問はありますか?」
長すぎる説明に一瞬意識が遠のくシマダであったが、
「はいはいはーい! 元の世界に戻る辺りがモヤっとしてちょっと意味わかりません!」
シマダはこの状況にすっかり慣れて、張り切って質問をし始めた。
「元の世界に帰るためには、天寿を全うする必要があります。全う出来ない場合、転生者は存在そのものが消えます。転生は一度限りであり、その後は二度と起こらない、と言う事になります」
チュートリアルさんは淡々と言った。
「ええ……っと、なんか難しくてこんがらがって来たぞ? 出来れば3行にまとめられない?」
「これからあなたの頭の中に映像を直接伝えます」
「え? 映像で見れるの? それを早く見せてよー」
驚くシマダをよそにチュートリアルさんの輝きが増して行く。
「それでは、初めにお見せするのは『魔王を倒すと決めた者』の物語です」
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