第24話 古文書
その後少しして陛下とゲイズさんがシェミールお嬢様の部屋へと入ってきた。顔を腫らして。
どうやら俺たちが出たあの後こっぴどく王妃様に叱られたらしい。王妃様も王族である以上は陛下たちの言い分も理解できるがもっとやり方があっただろうと抗議。
王妃様でさえ理解できるというのならば、どうやら王族とはそういうものと理解するしかないようだ。
「すまないシェミール・・・もっとやり方を考えるべきだった・・・」
「俺からも謝罪しよう・・・すまなかったシェミールちゃん・・・」
2人が土下座で謝る。一国の王と宰相が8歳の子供に土下座をしている光景はもうこの先一生見ることは出来ないだろう。
すると、シェミールお嬢様は笑顔で思いもよらない言葉を発した。
「・・・ありがとうお父様ゲイズさん・・・2人のお陰ですごくうれしい事があったんだ!」
思いもよらない返答に王妃様も反応する。
「シェミール?嬉しい事とはなんですか?」
「えへへ!あのね!」
そう言うとシェミールお嬢様は俺の腕にしがみついてきた。
「(あ、なんだか嫌な予感がする)」
「私ね!レーオとね!結婚することになったの!」
「「ええええ!?」」
その一言に驚きの声を上げるのはそんなことを一切言っていない俺とシェミールを溺愛している陛下だった。
「あら?そうなのですかシェミール?よかったですね」
「ほう?もうそこまで仲良くなったか」
王妃様とゲイズさんは特に何かを思うでもなくそれだけだったが陛下が怖かった。
「・・・レーオ・・・これはいったいどういう事だ?仮にも君は前世で大人だったんだろう?そんな君が8歳の娘をだと?・・・」
逆にまじめな表情で立ち上がり俺に対して詰め寄ってくる陛下。
「いや違うんです!?俺はそういうつもりで言ったわけではなくてですね!?」
「ひどいよレーオ!?さっき"俺の近くで一生シェミールの笑顔で癒してくれ"って言ってくれたじゃん!?」
「そんなこと俺言ったかな!?言ってなくない!?」
「きさま!!レーオ!!」
なぜかカオスになってしまった現状。それをゲイズさんと王妃様は笑顔で見守っているのみ。
「前世の記憶があり精神年齢が大人な君がまさか8歳の女の子を好きになり告白までしてしまうとは・・・世界共通でそれは犯罪だろう?」
「殺す!!!」
「火に油を注がないでください!?」
「レーオ!?さっきの言葉は嘘だったの!?」
どう誤解を解き丸く収めようかを必死に考えていた時にやっと王妃様が動いてくれた。
「うふふ・・・ギーグ、シェミールそろそろやめてあげなさい」
「でもお母様!!」
「だがリリー!!」
「でもでもだがでもありません。一旦落ち着いてください・・・シェミール?レーオはあなたに告白したのではなく励ましただけでしょう?シェミールの勘違いですよ。もし振り向かせたかったら努力をすることです」
「・・・努力・・・」
「ギーグもです。この程度の事を理解できない程バカではないでしょう?いい加減にしてください」
「・・・なんだか俺にだけ辺りが強くないか?」
「ほら、いきますよ・・・」
そう言ってカオスの現場を見事治めてくれた王妃様は陛下とゲイズさんも連れて部屋を出ようとする。
「ああ、そうだ。レーオは来てくれ。報告することがある」
そう陛下が立ち止まり俺を呼んだ。
「報告?ですか?」
なんの報告か分からずに首を傾げる俺。
「古文書の件だ」
古文書とはゲイズさんがターロス国に来るときに船の上で言っていた、
『次元を超えし神の国が混沌を持ってやってくる。対抗できるのは人型の相獣を相棒に持ちし者たちのみ』
という言葉の事だろう。俺は念のためルーヴェも出して別の部屋の中で話を聞く。
「結論から言えばやはりあれ以上の事は分からなかった。それが記されていた古文書はそれ以外は破けているため読めず他の古文書もそれらしき言葉は一切書かれていない」
「そうですか」
俺も気になっていたため進展があったのかと思って少し残念だった。
「ならば気になるのはやはり『対抗できるのは人型の相獣を相棒に持ちし者たちのみ』という言葉だ」
陛下が現状で分かる範囲で考えようとしている。
「そうですね・・・たちと言っているぐらいですから最低でも、もう1人は人型の相獣がいるという事になります・・・」
「だが、そんな報告は上がっていない・・・そうだな?ゲイズ?」
「ああ、こちらも調べさせているが向こうの大陸でもそんな噂さえ聞かないらしい」
もしもう既に人型の相獣がいたとしても相獣と証明しなければ"ただ強い魔法を使える人間"という事で誰にも怪しまれることもない。故に噂にもなりにくいだろう。
「・・・すまんなレーオ。結局なにも分からないという結果になってしまった」
すると陛下に謝られてしまった。
「いえいえそんな!?気にしないでください!もし本当に神の国とか混沌とかが来るんなら俺が強くなって追い返してやりますよ!」
「ああ、期待しているぞ」
「はい!」
こうして小学2年生はなにもなく過ぎていった。
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