第47話 証拠の写真

 数日後、一心は例の写真をじっくりと見ていた。

 ――なんでこんな家族写真を誘拐犯は要求したんだ? 理解できん……何かあるのか?……

誘拐犯は写真はこれで良いと言ったんだ。絶対に何かあるはずなんだ……それって何よ? くっそー。

「一心、パソコンで写真見てるんなら拡大したら良く見えるぞ」美紗が一心の背中からアドバイスをくれた。

「えっ、あっそうなの? どうやるの?」

美紗に教えて貰って写真を拡大しじっと見る。

二十枚ほどの写真を繰り返し見る。

昼ご飯を挟んで見続けて夕方ようやく一枚の写真を見ていて気が付いた。

海を背景に撮った親娘の写真。

「あった、これだっ!」思わず叫んだ。

「どれどれ……」家族が一心の周りに群がる。

「家族写真の背景に写ってるこのクルーザーをよく見ろ」

皆がパソコンに顔を寄せて……

「あ~わかったぁ……このクルーザーの上に高知課長とこっちは女の人だ。紐で首絞めてる!」と、美紗。

「誰だこれ? 一心分かったのか?」

数馬は顔がはっきりわかる彼女の写真を見たはずだが……。

「それ高知課長の奥さんだ」一心が説明する。

全員が気が付きざわつく。普通サイズではまったくそれとは分からないが解像度が高いのだろう拡大してもしっかり人の顔がわかるのだ。

一心はすぐにケータイを取り出す。

丘頭警部に繋がるとすぐ

「美富さんから貰った写真の背景に写っているクルーザーの上で高知課長を奥さんが首を絞めてる姿がはっきり見えるぞ!」

そう叫んだ。

「一心、声でかすぎ。……写真の背景ね。気付かなかったなぁ、すぐ確認させる。ありがとう」

そう言って丘頭警部は電話を切った。

 ――なんか、警部の様子がいつもと違うなぁ……何かあったのかな?……

「一心」と数馬に呼ばれる。

「こっちの写真の背景にはよ、これ鳥池常務じゃねぇか? なんか、黒装束の男と話してるように見えるけど、どうだ?」

「どれどれ」と、言って一心がよく見ると確かに常務だ。

「……それに、話してる男、あ~ほんとうだ誰だっけどっかで見た事…… 静ちょっと見てくれ!」

静が写真を更に拡大して……

「そやなぁ、……あぁそ~やわ、これあてを刺したあの犯人やわ」

「あーっ、そうだ、そうだ奴だ! 警部に電話するわ」

再び丘頭警部に電話を入れる。

「何か有ったの?」何か冷ややかな丘頭警部だ。

「おー、別の写真の背景に鳥池常務が静を刺した殺し屋とクルーザーの上で話しているところが写ってたぞ!」

ちょっと自慢気に一心が言う。

「ふふふ、ありがと、でもねさっきあんたから写真の背景にって言われて、写真全部見直したらあんたの言うそれ見つけたのよ。

お生憎様。でもさ、やっと白状させられるわ。誘拐犯が背景を喋らないので困ってたの。

窮すれば通ずね。ほんとにありがとね」

そうだったんだ。さっきの警部の反応はそういう事だったんだ。……それなら良かった。

 

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