第21話 付け狙われる女

 静は一心に言われてな片川美富はんの警護を兼ねて尾行をしてるんよ。

勿論、二十四時間は無理やさかい日中だけ、夜間は浅草署が警護に当たってると聞ぃとります。

もう一点、美富はんが帳簿についてまったく知らへんという言葉に一心が漠然とした疑問を持ったよって、その行動に不自然さがないかを確認するためでもおますのや。

 

 先週の美富さんのお休みの日の十時半頃どした。

美富はんがスーパーからの帰り道、自宅に向かって歩いているとな、黒のワンボックスがすぐ横にすーっと停まって男はんがどどっと降りてきよってん。でな美富はんに手を掛けようとしたさかい、あら思うて静が駆け寄ってな

「美富は~ん、お待たせ~」と叫ぶと、男はんがたは慌てた様子で車に乗り込みはって走り去りよった。

何か気持ちの悪いこってすわ。

 

 その後もな美富はんの後ろを上下真っ黒の服を着た男はん――恐らく前の時と同じ男はんやと思うんやけど――が尾けてゆくさかい、静が距離を詰めて男はんのすぐ後ろにいてな……。

そいでしばらく歩いてゆくと男はんがあてに気ぃ付いて途中で曲がってゆきはったのや。

気持ち悪いやろ~。

前の事もあるさかい一応桃子警部はんに知らせといたんですがな、何やろ思います?

 

 そのあとも美富はんのアパートの付近を真っ黒な服を着た男はん――勿論前と同じ男はん思います――がうろうろしているよって、静がそのアパートの前で辺りの景色の写真を撮る振りをしてなその男はんにカメラを向けると何も言わずに逃げるように姿を消しよってん。

さらにな、スーパーの中でもな美富はんの後ろを尾けて歩く例の男はんがいるよって、静が美富はんに声をかけ一緒に喋りながら歩いているといつの間にか男はんは消えてしもうたんや。

 

「その男はん捕まえて事情聴いて貰えんやろか」

週に何回かそないなことがあったよって、桃子警部はんにお願いしたらな、

「分かった」と言ってくれよったさかい、今は、はよその男はんが来ぃへんかな思うとります。

 ――三十代後半は立派なおなごはんです。変な男はんにしょっちゅうしょっちゅう尾けられたら気持ちわるーて……そう思いますやろ。何かされてからでは遅いよって、はよ捕まえてって祈るばかりですわ

……ホンマにもう!

 

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