第2話 ギルドって在籍費が必要なんですか!?

 かくして私ロディは訓練校を卒業しました。卒業といっても、そういう式が行われることもなく、定型文の乗った卒業証書に校長が一筆サインを添えただけのものを一枚渡されるだけです。世知辛いですね。


 まずいですねぇ、現在私の所持金は銀貨十枚に銅貨が5枚。格安宿に5日も泊れば元金が尽きてしまいます。そして訓練所に入る際のローンが月々金貨二枚。支払い期限が15日後で残りが…ちょっとこれ以上は考えたくないですね。ないお金を勘定するときほど物悲しくなることはないです。


 しかしくよくよしても始まりません。聖騎士になる夢が断たれた今、やれることはギルドに入って冒険者になること!頭脳系のお仕事よりよっぽど社会貢献できますよ私!手ごろなところに入って、ガンガン稼いで頑張っていきます!


「ふ、不採用、ですか!?」

「うん、不採用」


 一番近くにあったギルド、灼熱の月の人事の女性にすっぱりと断られてしまいました。

「職業欄に聖騎士学校卒業って書いてたから聖騎士としての登録を考えていたんだけど、技術試験を見るにうちにいる聖騎士の人と比べてちょっと精彩を欠いちゃうかなって。あ、うちの養成所に入るってなら話は別だよ?戦闘技術に関していえば光るものがあるし、25歳とまだ若いから、是非とも養成所で力を溜めて将来的にはうちのエースになってほしい!」

 ぐぅ、エースという言葉には惹かれますが、また養成所…私の懐具合が良ければ話は別だったんでしょうけど…


「お、お時間いただきありがとうございました…申し訳ありませんが、金銭面の事情で養成所の件は辞退させていただきます」

「そっかぁ、残念。またどこかでお仕事を一緒にできること、楽しみにしていますね」

 …本当に残念に思っていますか?いえ、そんなことでしょげていてもお金は入ってきませんし、お仕事も受けることはできません。次こそはギルド所属目指して頑張りますとも!


 その後、3つめ、4つめと色々なギルドを回るも、技量不足を理由に袖にされる日々、そろそろ決めないと今後がまずくなる3日目に


「さ、採用!?採用ですね!」

「ええ、採用ですよ?」


 ついにギルド、星の輝きでギルドマスター直々に合格を貰えました。やった!よかったー!これで何とかなった!バリバリ働いてローンなんてすぐ返しちゃいますとも!と考えていたら


「とりあえず、君の入会金と初月分の所属費は無料で、それ以降は金貨が2枚と銀貨5枚の」

 などと続けるギルドマスターの言葉に目を剥いちゃいました。いや初耳ですけど!


「所属費がかかるんですか!?」

「うん、かかっちゃうね。あ、でもこれはうちだけじゃないんだよ?ギルドっていっても所詮は企業だからね。お金がないと維持できないんだ。

 依頼が沢山来ていた時代はそんなことなかったんだけど、魔王討伐から30年、このダレン王国では大きな依頼もここ最近は鳴りを潜めてきてね、小金稼ぎの薬草採取なんかも他ギルドとの取り合いみたいになってきているんだ。

 そうなるとギルドが維持できなくなる。だから仕方なくギルドの構成員たちから所属費としてお金を取るしかなくなってきちゃったってわけ」

 そ、そういうことは募集要項に書いておいてほしかったです…


 私の冒険者としての道のり、始まる前に終わっちゃいそうです…

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