第22話 ゆう待望のプール

「プールがいい? 海がいい? 湖がいい?」


 なんでそんなに水辺なのか聞くと。

「だって、水着を見せ合いたいし」

 私の身体は痩せていて、表に出して美しいものではない。それよりか若いゆうの方が注目を集めるし、横に立った私は貧相で申し訳ない。暗く考えた私を見て、ゆうは何かを察したのか。


「今度、水着を着て一緒にお布団で眠らない?」

 何かそれは少しまずいと感じたので、プールと言った。インモラルの予感がした。


「一緒にシャワーを浴びることが出来るプール探すね」

 なんだかインモラルな予感がしたので、前の男の傷がと言ったらゆうは「だったら全身を覆う水着にしましょう」と言った後に、私が見て欲しいのでと言い、顔を赤らめた。



 何かまずい。ここで赤らめるのはちょっと違う。



「とにかく普通にプールに入るだけだからね」

 いや公衆の面前でイチャイチャされると非常にまずい。

 この目が死んでいて、猫背で、鍋のふちについた水気が抜けたワカメみたいなめんどくさそうな女にはこんな高校生の女の子はもったいないし、きっと監視員に通報される。不審な女が女子高校生をはべらせている罪で連行される。

 その場合は公務執行妨害でゆうが捕まる未来が見えた。


「普通に入りますよ。でも気になったところは触って教えてくださいね。触診は水着でプールの義務ですよ。肌が出る私の水着を買いましょう。明日にでも」


「明日はゆうは学校でしょ?」


「明日は補習ですけど、私頭いいので大丈夫です」

 大丈夫だった。補習とか関係なさそうだもん。


 にしても触診はそういう意味で使う物では無いし、この子のことだからこっちが触らずとも身体をくっつけて、胸を押し当てくっついて離れないとなると未成年をどうかした罪で連行だ。ならこれはどうだ。


「女の子二人だけでプール行くの不安だな」


「海で二人っきりは嫌ですか」

 間違ると刺される。


「そのー、変な男の人に見られたり、襲われたりするの怖いなー」


「大丈夫です。柔道など武道は杏と知り合ってすぐに習得しました」


「それでも怖いなー」


「安心出来ませんか」


「誰か男の人いた方がいいなー」

 そう、ゆうの人間関係の男と言えば、大将君か弟だ。弟はこの場合無い。生理的受けつけないからだ。


「じゃ、化学の先生とか」


「大人の人は怖いなー」


「うーん、他に男いましたっけ」

 仕方ない、大ヒントを言おう。


「園田さんも誘って、大将君も誘って、大将君は身体が大きいから安心だなー」

 物凄く嫌そうな顔をゆうはした。


「大将ですか?」


「大将君なら見たことあるし」


「嫌ですけど、杏が言うなら大将を呼びますね。嫌ですけど」

 当日、もじもじとした背の小さい女の子園田さんといい身体つきの大将君がプールにやってきた。


「いやらしい想像したら殺すから」

 年頃の男の子にそれはきつかろう。

 好きな女の子の露出の多い水着で変な想像もしたくなる。

 ゆうの気持ちも分からなくない、ゆうが呼びたかったわけではないからだ。

 仕方ない。


「じゃ、泳ぎましょうか」

 園田さんは泳げる水着を持っているが、ゆうの水着で泳ぐと取れてはいけない物が取れてしまうだろう。


「泳ぐのはちょっと」

 外を嫌がった私のせいで温水プールになった。


「ごめんね。私のせいで」


「杏は悪くない、悪いのはよこしまな気持ちでこっちをチラチラ見ている大将よ」

 悪いのは私、大将君は健全だ。


「海でも変わらなかったね」

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