ノルマガチャ~追放領地でガチャ再建したのち武装王国~

MIZAWA

第1章 ガチャ領地開拓

第1話 ギャンブラーのカイル追放

 俺はがぶがぶと葡萄酒を飲んでいた。

 トランプカードでギャンブルをしてお金を稼ごうとしていたのだが。


「くそったれ」


 今日も負けてしまった。

 現在所持金は2金貨くらいしかない、3金貨でパンが1個買える程度だ。


「また親父に言って500金貨借りるとしよう」


 暗闇の街角を歩いているカイル。


「ったく今年で25歳、後5歳もいけばおっさんかよ」


「結婚もしてーしなー」


「職にもつけてねー親父のヒモだからな」


 あーでもないこうでもないと文句を言いながら俺は巨大な屋敷の扉に到着した。

 ほんのりと魔法の光が門を照らしている。

 門が自動で開く。

 これは俺の魔力を感知して開いている。


 扉を開くと、そこにはメイド長が立っていた。

 一応幼馴染で、黒いロングヘアーをまとめながら、立派な胸とお尻が特徴だが、俺にとっては恋愛対象では無いので、色気を感じない。


 他のギャンブル仲間からは紹介しろとうるさいが。


「カイル様、またギャンブルですか」


「わりーかよ」


「それにお酒まで、御父上がお待ちです」


 ふらりふらりと階段を上ると、執事長がやってくる。

 彼はダークエルフ族であり、奴隷であった所を俺が欲しいと言ったから助かったものだ。


「カイル様、しっかりなされよ、御父上が厳しい顔をしていましたよ」


 執事長は俺の肩を支えながら書斎に連れて行ってくれる。

 中に入ると、テーブルに両の腕を乗せて、真剣な表情でこちらを見ていた。


「おいおい、バカ親父が、どんな顔してんだよ」


「カイル、お前に言わねばならない事がある」


「あ、500金貨欲しいんだが」


「ここはアララスタ王国のアラギリ領地だ。その中にはいくつかの小さい領地がありジスタ領地もその1つだ。そして昨日ジスタ領地は滅んだ。いや今は滅びかけているだ。そこにわしはお前を追放せねばなるまい、カイル・オリゲート、今日をもってただのカイルだ」


「ぎゃははははっは、親父、ふざけてるなら一度寝たほうがってマジなのか」


「民から苦情が沢山来ている。アララスタ王国の耳にも届いた。王はお怒りだ。お前がギャンブルでぶんどった相手だが王の親友らしい、それも裏切り行為があったと」


「ある訳ねーだろ正々堂々とギャンブルしたぜ?」


「チャンスはあるが無理だろう、わしとしてはお前がジスタ領地で飢えて死ぬ事を願う」


 俺の口はぽかんと開かれていた。

 何を発言したらいいのか分からず困っていると。


「それならこのわたくしご同行します」


「わたしも行くわ」


 それはダークエルフ族の執事長と幼馴染のメイド長だった。


「死ぬやもしれぬぞ?」


 親父はそう呟いた。

 俺は歯を食いしばり立ち上がった。


「1からでもやってやるしかねーか」


 胸ポケットにしまっていた酒の小瓶をテーブルに叩きつけて、その場を立ち去った。



====旅立ち====


 親父は無情にも何も持っていく事を許さなかった。

 メイド長の着替えと執事長の着替えくらいしか許さず。

 食料の一切も許さなかった。

 ジスタ領地はそこにあるもので再開発する必要がある。

 

 屋敷から出る時、大勢の貴族連中が笑っていた。

 何より彼等は俺が死ぬと思っている。

 

 いつか見返してやりたい。


 馬車だけは許されたので、それに揺られながらジスタ領地が見えてきた。

 砂嵐がひどく、荒野が広がっていた。

 こんな所で畑作業は難しいだろうし、井戸にいたっては枯れていた。


 建物が見える。家だろう。

 10件くらいの建物以外は風化して崩れていた。


 領主の屋敷が見えてきた。

 そこだけが頑丈に作られており、門を開いて馬車と馬を格納した。


「さて、付いたことだし、メイド長なんて小難しい事じゃなくて、リラとお呼び」

「わたくしもですよカイル様が子供の頃に救ってくださらねばここにはいませんでした。ジーバとお呼びください」


「そうか、リラとジーバ色々と頼む。まずは倉庫に行って作物の種の確認をしてくる。それからだ」


 それから作物の種の管理、生きている畑、生きている井戸。記録の書や領地再建の学問の書などありとあらゆるものを点検し、住民は1人もおらず。山賊すらいない。

 

 ただただあるのは風が強い事。

 何か利用できないだろうかと思案し。


 始めたのがクワを振るって土を耕す事。

 リラメイド長とジーバ執事長も水を井戸からくんできたり等。


 畑を耕し、色々な工程を繰り返し、記録を確認し、学問で学び。

 命を守る為にジーバに剣術の稽古を学び。

 ジスタ領地に近い所で辺境の部族、つまりエルフやドワーフの礼儀作法を学び。

 食料はないので、日に日にやせ細ろって。


 ついに奇跡が起きた。


【ノルマガチャを習得しました】

【クワ100回振る×1】

【水汲み100回やる×1】

【種をまく100回やる×1】

【記録確認100回×1】

【学習する100回×1】

【剣術の稽古100回×1】

【礼儀作法100回×1】


【ノルマとはあなたがやるべき仕事です。その仕事を達成する事でガチャが1回使用する事が出来ます。ノルマは基本100回ですので、もう一度クワを100回振ると同じようにガチャが追加されます。今表示したノルマ一覧は呟くと表示されますので、現在7回分というのも表示されます。あと私は神の声というものです。神様ではなく神の声です】


 長ったらしい説明があったが。

 飢えて死にそうな状態で頭に入る訳もなく。

 3台のベッドの上でリラメイド長とジーバ執事長が死にかけている。


 なぜか一番ひ弱なはずの俺には力が残されており、ゆっくりと立ち上がった。


「が、ノルマガチャだな、発動」


 目の前に大きな宝箱が出現する。

 鍵が付いている部分には大きな穴がある。


【その穴に手を突っ込み、1個の玉を引き抜くのです】


 また神の声が囁く。

 ふらふらになりながら、腹がぎゅるるるるると鳴り響く中で。


 右手を宝箱の穴に突っ込み玉を引っこ抜く。


 玉の表面には【F級=1週間食料】と描かれてあり、俺の目玉は飛び出たが。

 こんな小さい玉に入っている訳が無いと、現実に引き戻される。


【開けてみましょう】


 神の声の言う通りに開けてみると。

 中からパン、焼いた肉、果物、焼いた魚等など、すぐに食べられる食料がテーブルの上に綺麗に並べられた。


「!」

「!」


 リラメイド長とジーバ執事長の目玉が飛び出んばかりになり。

 俺達は無我夢中で食べた。

 その時に2人にはノルマガチャの説明をしていった。



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