正義の味方になりたくて

@inb1091

ヒーロー誕生編

なんでもない日常

「うっ....さむぅ」


4月、もう春だと言うのに、まだ冬のような肌寒い風がずっと吹いている。


高校1年になった僕、蒼凪優あおなぎゆうはそんな寒い中、学校へ登校していく....。


「にしても寒い....雪でも降るんじゃないかな....ん?」


そんな中、公園を見ると1人の少年が木の上を眺めていた。

僕は駆け寄り、少年に声をかける。


「あの....どうしたの?」

少年は僕に気づいていなかったのか、少し驚いた後、もう一度視線を木の上に戻す。

「あのこ、」

少年が指をさし、僕はその指先にさされたものを見る。少年が見ていたのは、子猫だった。恐らく登り慣れていない木の上だから、降りられなくなったのだろう。


「あー、かなり高いところに登っちゃったみたいだね....」


どうしよう、正直、僕は運動が得意ではない。むしろ運動はへっぽこもへっぽこ、親友に4時間サッカーの練習を付き合ってもらった事があるが、ボールを蹴ればあらぬ方向に飛び、僕は転ぶレベルだ。

そんな悩んでいる中、登校時間も迫って僕はやや焦り始めていた。


「ん?ユウ、どうかしたのか?」

「あっ!なっちゃん!いいところに!」


僕に声をかけてくれたのは、幼なじみにして親友の三川夏希みかわなつきその人だった。


「実はかくかくしかじかでして、」

「なるほど、なら任せな!」



そう言うと、彼は荷物を地面に置き、勢いをつけて木に登る。あっという間に猫を抱え、スタッとカッコよく着地までしていた。

その好青年ぷりは、とても絵になっていた。


「ほら、怪我もなく元気だぞ。」

「うん!ありがとう!おにいちゃんたち!良かったね!カヤ!」

助けられた猫の首をよく見れば首輪がされていた。

「良かったね。」

「うん!」


そうして少年は去り、僕達も再び学校への道に戻る。

それにしても、ヒーローみたいにカッコ良かったなぁ」

「よせやい、そんな大層なもんじゃないだろ?」


どうやら声に出ていたらしい。だがしかし、待って欲しい。なっちゃんは困った人を見れば老若男女問わず声をかけては、あっという間に解決してしまう本当にヒーローみたいな人なのだ。僕だって彼に助けられたことは何度もある。


「そんな事ないさ、昔からなっちゃんは街のヒーローだって言われてたじゃん!」

「はっはー!褒めても何も出ないぞ!それより、今週のヒーローマン見たか?」

「見た見た!ヒーローマンシリーズはいつも熱いけど、今週は特に!...」

そんな事を言いながら歩いていると、もう学校に着いてしまったが、僕らは同じ教室なため構わず話す。


「それでなんと言っても、悪の幹部のディキトゥスの回想!!なんかもう救われてくれって思ったもん!」

「それまでの行動全部の理由がわかっちまうm「おーい、お前らそろそろ朝会始めるぞー。」おっと、またな!」

「うん、また!」

こうして僕達の日常は今日も始まる。なんでもない日常が毎日流れていく。

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