第3話

「あら、ライラ。こんな所にいたのね」


水辺で座り込んでいると、いきなり後ろから抱き上げられた。


「ママ!」

「よかった、思い出したのね。お腹は空いてない?」


そう聞かれるとお腹が空いていたようで、グーッと鳴った。ママはくすくす笑うと、獣型になってミルクが飲めるように横になってくれた。私は人間の姿になれないし、大きさも前世の柴犬程度の大きさしかないから横になってくれないと届かないんだよね。しかも、一年は絶対このサイズのままらしい。それから大きくなるスピードはそれぞれなんだって。

お腹いっぱいになるまで飲んだら眠くなってくるあたりまだ赤ちゃんなんだなって実感する。うとうとしていると、ぺろぺろと私を毛繕いしていたママがもふもふのしっぽでくるんでくれてそのまま寝てしまった。


次に起きた時は、大きなフェンリルが目の前にいて私の顔を覗き込んできた。パパだ!


「おはよう、ライラ。無事に思い出せたんだって?」

「うん!ありがとう、パパ!」

「どういたしまして。それにしてもパパか…」

「ダメだった…?」

「いや、可愛らしくていい。やっぱり女の子は可愛いな。もちろん子はみんな可愛いけど…可愛い子。健やかに育つんだよ」

「いっぱいミルク飲んだよ!」


褒めて褒めて!とパパの顔に体を擦り付けると、鼻でオサレバランスを崩してひっくり返ってしまった。なにこれ楽しい!ガバッと起き上がってもう一回と強請ると、私が満足するまで何度もやってくれた。まだ体力もあまりなくて、疲れてしまいひっくり返ったままになっていると今度は人型になったパパが私を抱き上げて膝の上でなでなでしてくれた。あー、そこそこ気もちぃ〜。


「父上」


誰か来た!パパそっくりだ…お兄ちゃん!


「その子が妹ですか?」

「そう、ライラだよ」

「ライラ、君の兄のロムウェルだよ」

「よろしく、ライラ」

「お兄ちゃん!」

「んぐ…」


前世は兄弟なんていなかったから嬉しくて尻尾をブンブン振ってしまう。それはそうと、変な声出てるけど大丈夫?


「妹…これが妹…」

「可愛いだろう?」

「いいかい、ライラ。嫌なことがあったらなんでもお兄ちゃんに言うんだぞ。お兄ちゃんが守ってやるから」

「あ、おいおい、ライラ、パパの方が強いからパパに言うんだよ?」

「わかった!」


いいとこ見せたいってことね!承知!


その後、お兄ちゃんの奥さんも紹介してもらった。リルって呼んでねって言われたから、リルちゃんって呼ぶことにした。またママにミルクをもらって、今度はパパに毛繕いしてもらいながら眠りについた。


そんな食べては寝て、時々遊んでの日々を繰り返しあっという間に一年がすぎ、私の体も柴犬サイズからライオンばりの大型獣サイズへと成長を遂げた。食べ物も、ママのミルクから森で取れる木の実や果物へ。最近はお肉も食べれるようになったよ!お肉は人間が捧げ物として奉納されているやつとか、狩りでとったやつ。聖獣はお肉食べなくても、濃度の高い魔力を吸って育った果物や木の実を時々食べるだけでいいんだけど、ママやリルちゃんはそうもいかないからね。とはいえ、聖獣の番になると長い年月をかけて聖獣と同じ体の作りになるみたいで、死ぬタイミングも番の聖獣と一緒になるんだて。ママはもうほぼ同じ体の作りになってるんだけど、やっぱりお肉食べたくなるから狩りに行くらしい。


ママもリルちゃんも料理上手だからお家のキッチンは大きかった。私はまだ入れてもらえなかったけどね。キッチンだけじゃなくて家全体、中世ヨーロッパ味が強くてワウワクして家の中探検しちゃった。お兄ちゃんたちは同じ家に住んでるわけじゃなくて別にお家がある。でもところどころやっぱり異世界って感じで、火が薪とかなしについたり、灯りが燃えるものとかなにもなしについてた。

家もそもそも、森の中に立ってるわけじゃなくて、別空間ていうの?空間主の許可があれば入れる空間に立ってた。結構大きめなお家だったけど宮殿っていうよりは洋館の方が近い感じ。パパとお兄ちゃんは別の空間に家を立ててるけど、お互い許可を出してるから家族なら誰でも行き来できる。私もやり方教えてもらったよ。最初は誰かに抱っこされて入ってたんだけど、そこに空間がある!って想像すれば入れるみたい。

なんで空間内にずっといないの?って感じだけど、簡単な話。あそこ家以外何にもないんだよね。だから外出て遊ぶの大好き!

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