第57話

「ホホ!!」

「ホー!!」

ズシャッ!!

ガキンッ!!

ダッダッダ!!


魂兵の声と金属音、魔物の足音が響き渡る。

魔物が増えてきている。


「炎魔法!! いけぇ!!」

「ホホー!!」

ドガーン!!

炎の渦が魔物を吹っ飛ばす。


「ありました!!」

トヨワさんがゲートを発見する。

「いきます!! スラッシュ!!」

ズシャッ!!


「周囲は頼むぞ!!」

「ホホー!!」

俺は周辺の魔物を魂兵に任せ、ゲート破壊に集中する。

ズシャシャシャシャ!!


肉体強化レベル30の破壊力は伊達ではない。

これまで以上に高速で剣を振ることができる。


大型のゲートでなければ、破壊に時間はかからない。


ブワン……


ゲートが霧散する。

スクシン村を出てから、これで7つ目だ。

もうすぐ日が暮れる。


「よし、雑魚どもを片付けるぞ!!」

「はい!」

「ホホー!!」


□□□


「今日はこの辺りで野営にしましょう」

「そうですね」

「ホホホー!!」

魂兵たちは、薪を集めてきたり、地面を整地してくれる。

シドル村でメージス兵から奪ったテントを使う。

さらに、周囲に魔物が発生するため、魂兵に見張りをしてもらう。


「ウフフ……素晴らしい成長ぶりですね、勇者様」

「あぁ、魂を使って肉体強化をしていますからね。

 疲れもそれほどありません。トヨワさんは、疲労は問題ありませんか?」


「えぇ、全く。魂兵の働きも素晴らしいので」

「ですね。

 ただ、さすがに無傷とはいきませんね」

魂兵はまだ一体もやられてはいないが、負傷している。

背中に傷ができたり、胴体や腕が欠けてしまった兵も出ている。


それから、装備の劣化が激しい。

石の剣は劣化が早い。


「関所まではあとどれくらいかかりますか?」

俺はホッセイ出身の元奴隷に聞く。

「はい。あと二日はかかると思います」


「途中廃村があるんでしたっけ?」

「はい。このペースでしたら明日廃村に到着すると思います」


□□□


翌日。

昨日と同じくらいのペースで進み続ける。


「魔物がさらに増えてきましたね」

「はい。おそらくゲートが近いのでしょう」


「グオォォォ!!」

大きな鳴き声とともに地響き。

廃村お馴染みのミノタウロスだ。


「魔法兵!!」

「ホ!!」

ゴオォォォ……

ドガーン!!


「よし、突っ込むぞ!!」


□□□


大型のゲートも問題なく破壊できた。

魂兵は2体ほどやられてしまったが、それ以外に目立った損害はない。


「一旦引き返して、ここに『期間魔法陣』を設置することもできますが、このまま関所まで進めますね」

「はい。それがよろしいですね」

トヨワさんも賛同してくれる。


「魂兵の損害もそこまでありませんし、食料もまだあります。

 ボーダーやヘンサッチが来ることを考えると、このまま進んだ方が良さそうです」

俺たちは廃村で野営した後、そのまま関所を目指すことを決める。


□□□


「こっちでいいんですよね?」

「はい。おそらくは……」

俺は元奴隷に方向を確認する。


「おそらくじゃない……かなり近いですね」

「ありがとうございます」

そうなのか?


「おかしいですね」

「はい。俺もおかしいと思います」

トヨワさんも違和感を感じているようだ。


これまでゲートが近づくと、どんどん魔物が増えてきた。

しかし、関所の方向へ向かうにつれ、魔物が減っているのだ。


「お待ちください!!」

トヨワさんが珍しく大きな声を出す。


「どうしました?」

「不味いですね……」


「関所は谷間にあります。

 谷を塞ぐように、門と石造の建物があり、その周辺に大量の魔物がいます」

「!! 見えるんですか?」


「はい……」

マジかよ。

こっからじゃ何も見えないぞ。


「大型のゲート……それから、強力な魔物も複数」

「いけそうですか?」

俺は単刀直入に聞いてみる。


「わかりません。もう少し近づいていみましょう」

俺たちは速度を落とし、関所の方向へ向かう。


!!


俺にも見えてきた。

確かにわんさかいるな。


「見えました。

 まるで関所を守っているようですね」

「はい。関所の前後おそらく門の向こうにも同じように魔物が配置されているでしょう」


「統率されてるってことですよね……?」

「……いえ。おそらく統率されていた、といったところでしょう。

 正確にはわかりませんが、ただ配置されているようにも見えます」


「なるほど……なら、なんとかなりませんかね?

 最悪逃げることもできるでしょうし」

幸いこの辺りに魔物はいない。

関所付近にだけ大量にいるのだ。

「そうですね……」


「あなた方はここで待機していてください。

 お前らも待機な」

「はい」

「ホ!!」

俺は元奴隷の人たち、負傷した魂兵たちに言う。


「よし、行きましょう」

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