第17話

「はしれ、はしれぇえい!」

今日も俺は馬車に引っ張られ、走る。

しかし、全くもって疲れない。

むしろ、ゲート破壊の効率が上がるなら自分から走りたいくらいだ。


「はぁ……はぁ……」

しかし、疲れているふりをする。

このクソ野郎、ヘンサッチが満足しているからだ。

俺が疲れていないと知ったら、何をされるかわからない。


しかし今日は昨日よりも、若干走るペースが遅いような気がする。


それに、兵士の数も多いな。

30人程度いる。


「魔物です!!」


ゲートが近づいているのだろう。

魔物が出現する。

出てくる魔物は、相変わらず獣系の魔物だ。

黒紫の狼のような魔物が数匹現れる。


昨日よりも兵士が多いせいか、あっという間に殲滅される。


俺は、殲滅する兵士の動きをよくみる。

エイハン以外にも、強い兵がちらほらいるな。

大半の兵士には勝てるだろうが、俺一人でこいつらを圧倒することはできない。


エイハン以外に少し強いのが二人、エイハンと同じくらい強いやつが一人いるな。

一際鎧が立派なやつだ。

こいつは強い。

現状の俺では勝てるか微妙だ。


「あったぞ!! ゲートだ!!」

少し進むとゲートがある。

俺は指示通りに、ゲートを破壊する。


ザシュッ!!


剣技がレベル2になったからだろう。

剣を振るときに、全身をうまく使えている気がする。


□□□


今日はゲートを一つしか破壊できていないが、すでに夕方になっている。

日に日に遺跡から離れているから、どうしても移動に時間がかかってしまうのだ。

そろそろ戻らないと、日が暮れてしまうのだが、今日はどうやら野営のようだ。


というのも、兵士たちの会話と動きから想像したわけだが。

例によって、俺には何の説明もない。

ただ連れ回され、ゲートを破壊させられているだけだ。


そして、移動しているうちに、日が暮れてくる。

一日中走っているわけではなく、徒歩にもなっている。

馬が疲れてくるのだろう。


「止まれ!!」

ヘンサッチのくせに、号令を出している。

馬車でふんぞり帰っているだけだが、一応この隊のリーダーってわけだ。


兵士たちは立ち止まり、馬車へ集まる。

荷物を取り出しているのだろう。

腰にランタンを装着する。

ランタンからは周囲に光が出る。

この光は、炎ではないな。

懐中電灯、とまではいかないが、明らかに普通の火よりも明るい。

異世界の不思議な道具、魔道具ってやつだろうか。


いろいろと気になることが多いが、下手に質問したところでぶん殴られるからな。

大人しく観察している方がいいだろう。

あとで、フェリスさんに確認、エイハンに質問する方が良さそうだ。


□□□


それから、日が暮れ、あたりは薄暗くなるが移動を続ける。

魔物が多くなっているような気がするのだが……


「あったぞ!! ゲートだ!!」

「ほら、さっさと行ってこい」

ガラン……


俺は地面に投げられた剣を拾い、ゲートへ向かう。

まだ魔物がいるが、全て殲滅するまで待たせてはくれないようだ。


ザシュッ!

ザシュッ!

ザシュッ!


ゲートを切っていると、右隣に黒い煙が集まってくる。


「おい!! 離れろ!!」

エイハンが俺に叫ぶ。

なんだ?


黒い煙は魔物の形になり、襲いかかってくる。


げっ!!


俺は後退しながら剣を構える。


「ガルゥ!!」

狼型の魔物が突進してくる。


ザクッ!!


魔物の突進に合わせて、俺は咄嗟に突きを繰り出す。


「ガァッ!!」


マジかよ!!

こいつ、ハラ刺されてるのに突進続けてるぞ!!

口をガブガブと動かし、俺に噛みつこうとしている。


「うわっ!」

俺は咄嗟に突き刺さった剣を上に振り上げる。


ザシュッ!!


狼型の魔物は、腹から上が二つに分かれ、霧散していく。


「フゥ……」

助かったな。


【条件が解放されました】

【精神強化】

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