第15話

「少し広いな」

奥の部屋に入ると、20畳くらいの空間と、中央にカカシが突っ立っている。

そして端っこに小さな真っ黒い台座。

これが訓練室だろう。


俺は台座をタップする。


スラッシュ Lv1 : 1000


「これは?」

フェリスさんが問いかけてくる。

「わかりませんね。スラッシュって知ってます?」


「スキルです!! 剣スキル!!」

「剣スキル? それって強力な技を繰り出せるってことで合ってます?」


「その通りです!! さすがは勇者様……」

いちいち褒めてくれるのは嬉しいのだが、別に俺が何かやったわけじゃないんだよな。


「しかし、今1000も魂を消費して習得するかは迷うところですね」

さっき訓練室を作るのに1000消費したからな。

残りの魂は2705だ。


「あ、そういえば、アイツの性能を確かめるために訓練室を作ったんだった」

俺は魂兵保管室に行き、魂兵を呼び出す。


「おい」

「ホ!!」

魂兵は魔法陣から出てくるとピョンピョン飛び跳ねる。


「訓練室作ったぞ」

「ホ!! ホホ!!」


俺は魂兵と訓練室へ向かう。

「それで、どのくらい戦えるの?」


「ホ!! ホホ!!」

シュシュ!!

シュシュシュ!!


魂兵の腕が素早く動く。

戦えることをアピールしているようだ。


「まぁまぁ速いな」

少なくとも、異世界に来たばかりの頃の俺よりは確実に強い。


「ホ!! ホホホ!!」

ドス!!

ドドス!!


魂兵は中央のカカシを殴り始める。


「おぉ……まぁ、なんか強そうではある」

「で、ですね」

これで魂消費100なら、かなり良いんではないだろうか。


「でも、カカシの状態だけじゃ強さがよくわからないな。

 それに、こっちの世界は一般の兵士が強いからな」

「ホホ!!」

何やらジェスチャーしている。

剣を振っているような……


「お前、剣を使うってこと?」

「ホ!!」

魂兵はまたピョンピョンと飛び跳ね、中央の部屋、台座の前で飛び跳ねる。


「また何か指示があるわけ?」

俺は魂兵の指示通りに台座の施設をタップする。


トイレ Lv2 : 500

風呂 Lv1 : 500

井戸 Lv1 : 100

調理場(不可) Lv2 : 2000

訓練室(不可) Lv2 : 5000

魂兵作成室(不可) Lv2 : 2000

魂兵保管室 Lv1 : 500

鍛冶場 New Lv1 : 3000


あ!!

鍛冶場だ!!

しかし鍛冶場の作成には魂が3000必要だ。

今魂は2705しかない。

無理だな。


「どうされたのです?」

「鍛冶場が出てますね」


「本当ですか!? さすが勇者様!!」

「けど、魂がたりませんね」

結局何をするにも魂が必要だな。


「残りの魂はどうしようか……」

一番魂を使いたいのは強化だ。

しかし……


俺は強化をタップする。


肉体強化(不可) LV21 : 1000

剣技 Lv2 : 500


肉体強化がレベル20で止まっている。

21にはできないようだ。

しかし、消費魂の数値が表示されている。

これはおそらく、二度と強化できないってわけじゃなくて、現状不可ってことだよな……


剣技のレベルを上げたり、スキルを習得しても、結局剣を持ってないしな。

いつもゲートを破壊するときに、一時的に剣を渡されるだけだ。

あまり魂を消費しすぎるのはよくないだろう。


とりあえず、剣技だけ上げておくか。

俺は魂を500消費し、剣技のレベルを2にする。


これで残りの魂は2205だ。


後は生活水準を上げたいよな。

「風呂あったほうがいいですよね?」

「お、お風呂も作成できるのですか!?」

フェリスさんがまたもよ尊敬の眼差しで見てくる。


「みたいですね。

 ただ、レベル1なので、簡易的なものだとは思います」

「それは、素晴らしい……のですが……」

あれ?

何か微妙だな。


「もし仮にお風呂に入ってしまうと、ヘンサッチたちが不審に思います」

「なるほど。そりゃそうですね」

急にこざっぱりしてきたら、中のことを不審に思うわな。


「じゃあトイレですね。トイレはレベル2にしておきましょう」

「はい!!」

俺は施設のトイレレベル2をタップする。


ガコッ!!

ガガガ……


今度はトイレの壁が競り上がり、塞がってしまう。


ガコッ!!

ガガガ……


中から音がする。

改造中ってことか。


ガコッ!!

ガガガ……


壁が下がり、再びトイレが現れる。

残りの魂は1705だ。


「おぉ……個室があります」

中に小さな個室が現れる。

こっちで大をすればいいのか。


「あとは……」

できるだけ早い段階で鍛冶場が欲しいな。

残りは使わずに貯めておくのもアリだろう。


「あの……」

「はい?」


「きょ、今日も魂兵は一体作成した方がよろしいかと……」

フェリスさんがモジモジしながら言ってくる。

「そ、そそそ、そうですね……」

クソ。

つられてモジモジしてしまった。

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