第5話

「はぁ……はぁ……」

あれから3つのゲートを破壊した。

すでに日が暮れている。


周囲に出現する魔物は、全て兵士が倒してくれるからまだいいが、それでも疲労が溜まる。

『肉体強化』をしていなかったらと考えると、恐ろしい……


「おい、遺跡に行くぞ」

兵士が俺の首輪に繋がれた鎖を引っ張る。

「はい……」


『肉体強化』はレベル3まで上げたが、この兵士たちよりもまだ弱い。

彼らが魔物と戦うときの動き、それから俺自身がゲート破壊のために剣を振る感覚から考えると、ここの兵士1人も倒すことができないだろう。

それでも、かなり身体は軽くなったが。


遺跡に着くと、扉の前に手をかざす。

ゴゴゴ……

扉が淡い光を放ち、ゆっくりと開く。

俺とフェリスだけが入れる部屋だ。


「小麦を持ってこい。ゲートは3つ破壊したから、さっきの三倍だな。誤魔化すんじゃないぞ」

「はい……」

しかし、それはすでに誤魔化された量だ。


俺とフェリスは、部屋に入る。

そして、俺は中央の黒い台座に手をかざす。


右上に文字が現れる。

『魂 419 / 毎時魂 40 / ゲート破壊数 4』

おぉ、かなり溜まっているな。

これは、毎時40魂溜まるだけではない。

ゲートを破壊した際に、100前後の魂が入るようだ。


先に小麦を出しておこう。

俺は『食料』をタップしする。

『小麦:20』

3回で合計60魂を消費する。

これはアイツらに渡す分。


それから俺は水分補給をする。

奴らは水すら最低限しかこちらに渡さない。

ゴクゴクと水を飲み、残りの魂を確認する。

残りは358だ。


『魂兵作成』も気にはなるが、今はとにかく肉体疲労がきつい。

『強化』の『肉体強化』だろうな。


『肉体強化 40:Lv4』

『肉体強化 50:Lv5』

『肉体強化 60:Lv6』


とりあえず150ほど魂を消費し、『肉体強化』をする。

疲労が消えていく。

残りの魂は208だ。


肉体疲労が消えたことで、俺は腹が減っていることに気づく。

というのも、疲れすぎて吐き気がしていたのだ。

俺は再び『食料』をタップする。


『水 1』

『イモ 5』

『とうもろこし 10』

『卵 10』

『小麦 20』

『米 20』


だよな。

食料といっても、材料が出てくるだけでいずれも調理されていない。

イモも生で食べることはできない。

あとチェックしていないのは、『施設』と『素材』だ。


まずは『施設』をタップしてみる。

『トイレ 100:Lv1』

『風呂 500:Lv1』

『井戸 100:Lv1』

『調理場 500:Lv1』

『魂兵作成室 100:Lv1』


おぉ!!

『調理場』があるぞ!!

調理場を作成して、『イモ』や『米』を生産すれば、ここで生活できる!!

アイツらはここに入れないし、引きこもることも可能だ。

「………………」

「勇者様?」


「あぁ、すみません」

つい考え込んでしまったようだ。

現状は、兵士たちがゲートの周りのモンスターを倒してくれる。

ゲート破壊のことを考えるならば、彼らに従っていた方が効率が良い。

ここにこもるのは、もう少し様子を見てからにしよう。


そして『魂兵作成室』というのは、その名の通り『魂兵こんぺい』を作るための部屋だろう。

しかし、今は『調理場』を優先したいところだ。

現状毎時40魂手に入るからな。

今は限界まで『肉体強化』をして、明日『調理場』を作るのが良いだろう。


『肉体強化 70:Lv7』

『肉体強化 80:Lv8』

俺は『肉体強化』を2回タップする。

これでレベルは8だ。


残りの魂は58だ。

魂兵については気になるが、俺自身の強化と、食事の確保が優先だな。

「これで魂はほぼ使い切りました。行きましょう」

「はい」


俺はフェリスと共に部屋を出る。

「おい、さっさとよこせ」

「はい……」

俺は兵士に生産した小麦を渡す。


「今日は終わりだ。お前らはさっきの部屋に戻れ」

「は、はい……」

部屋に戻るのか?


「おい、待て。これがお前らの分だ」

兵士にカチカチのパンを一つずつ、それから小さな革製の水筒を渡される。

「ありがとうございます……」

クソふざけやがって。

こんな量で足りるわけがねぇだろ……


俺たちは部屋に戻る。

「俺たちだけ部屋に戻すってどういうことですかね?」

「おそらく管理がしやすいのだと思います。扉の外に数人兵士を置くだけで見張りになりますからね」


「なるほど」

そういうことか。

だとすれば、最初から言ってほしかったな。

わかっていたら『トイレ』優先で作っていた。


俺たちはカチカチのパンを水につけながら食べる。

普段ならクソまずいはずだが、今日一日動き回ったせいで涙が出るほどにうまい……


そういえば、さっき確認しそびれたな。

俺はパンを食べた後、台座にいく。


『素材』をタップする。

『藁 2』

『石材 10』

『木材 10』

『綿 50』


この部屋は石畳だ。

ゴツゴツしているが、このヘトヘトの状態なら寝られそうではある。

だが、『藁』があるなら使ったほうがいいだろう。


俺は『藁』をタップする。

そして、出現した藁を敷き詰める。


「フェリスさんもどうぞ」

さらに俺は『藁』をタップし、彼女に敷くように言う。


「ありがとうございます」

これで残りの魂は54。

明日の朝には増えるだろう。


最悪の1日だった……


しかし、希望はある。

この俺しか使えない魂のシステムを使いこなせば、いずれヤツらを圧倒できるだろう。


『魂 54 / 毎時魂 40 / ゲート破壊数 4』

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