第3話

「それにしても、私この召還者の案内人を初めてから3年が経ちますけどあの森で死にかけてる人は始めて見ましたよ!」


不慮の事故で死にかけていた俺を助けてくれた少女テレスは興奮気味に話しかけてきた。


彼女はこの近くにある町出身の少女であり、この森に勇者達が召還されるお告げがある度に勇者を探しだして町へと連れていく案内役を務めているようだ。ちなみに年齢は18歳。見た目は中学生くらいにしか見えなかったので驚かされた。


ちんこをへし折る重症の怪我を負った俺だが、彼女の献身的なサポートで動ける程度には回復し、浮遊魔法により体を紐でくくりつけられた状態で町へと運ばれていた。回復中の現世トークが思いの外盛り上がり、お互いに馴れ馴れしく話せる程度には仲良くなっていた。


「それに死にかけていた理由がおちんちんの骨折って!まぁ....その........勇者様としては期待出来ませんが頑張ってください!」


と、彼女は笑いを堪えながら言ってくる。


こんな感じで、テレスは意外と思っていたことをズバズバ言ってくるタイプだ。まぁ期待できない云々の話をされるのは無理もない話で、今まで召還された勇者達は、ただでさえこれといった実績を出せていないにも関わらず、魔物すら現れない森で勝手にいちもつをへし折り死にかけている勇者になど期待できないのは当然の話だ。まぁ、それはそれとしてムカつくから言い返すのだが。



「いやいやテレスよ。俺はこっちの世界へ来る前審判官にいちもつから溢れる生命エネルギーは常人の倍以上だけどそのせいでほとんどいちもつからしか生命エネルギーが出てないって言われたんだぜ?つまりいちもつが折れたら俺は死んだも同然ってことよ?まぁ、経験の浅いメスガキには男のいちもつの偉大さは分からんよなすまんなこんな話して。」


とめちゃくちゃ早口で言い返した。


「めっちゃ早口ですねwきっしょw」

「きしょくないし!」


とくだらない話をしている内になんとか町へとたどり着いたのだった。

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着いたのは町全体が石の壁で囲まれた大きな町。そこをぐるっとまわっていくと大きな門にたどり着いた。


「たのもー!」

テレスが巨大な門の前で叫ぶと、あいよーという野太い男の声が聞こえ、扉の上から筋肉質な男が顔を覗かせた。


どうやら門番のようだ。


「ずいぶん遅かったなテレス!森で迷ったかw?」


「そんなわけないじゃないですか!あの森のことならここの誰よりも知りつくしてますよ!ただでさえいつも召還者を探し回ってるってのに...」


怒ったようにテレスが言い返した。


そう言えば、3年ほど案内人をしてるって言ってたな...召還者のお告げがある度に、森のどこにいるかも分からない勇者を探しまくってたら森にも詳しくなるよな...と彼女の苦労を感じて同情してしまった。


「ごめんごめんw!冗談だよテレス!して......そこにいる、子供が紐に付いた浮かぶ風船持つみたいな感じで浮かんでるのが今回の勇者様かい?何があったか分からないが、既に期待できなさそうなんだが大丈夫か......?」


と、門番がこっちを見てもっともらしいことを言う。


「いやいやオーエンさん。なんとこの勇者様!諸々の事情で生命エネルギーが常人の倍以上あるらしいんですよ!し、しかも、状況によってはさらに進化した能力を見せる可能性があるらしくてポテンシャルの塊のような男です!ちょっとした不注意で大怪我を負っただけで本当に期待できるので!!!」


と、テレスが慌ててフォローを入れてくれたのだが、テレスさんあなたもさっき俺に期待出来ないといってましたよね!?しかも俺が早口で言い返した時と同じくらいの早口だし!よくもバカに出来たもんだ。といろいろ惨めになってしまった俺は恥ずかしくて目をそらした。



「そ、そうかそうか、まぁ色々事情はあるだろうが、わざわざ異世界からステラを救うために来てくれた勇者様だもんな!悪かった。すぐに扉を開けるから待っててくれ!」


と門番も色々察したのか、誤魔化すようにすぐ扉を開けてくれた。


(あぁ、でもそういう反応が一番メンタルにくる....)


とか思いながらも、いよいよ俺たちははじまりの町へと踏み出した。

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