第020話 考えることは同じ

 僕は如月さんといち早く会うために、今日も早めに学校に向かう。


「なんだか、長い間来てなかったような気がする」


 教室に着いて机を触りながら呟く。


 ゴールデンウィークが楽しかったせいかもしれない。


 それにしても、ゴールデンウィーク中もLINLINで会話していたし、写真も見ていたけど、生如月さんは久しぶりだ。滅茶苦茶緊張するなぁ。


 僕はドキドキしながら如月さんが登校してくるのを待つ。


 ――ガラガラガラッ


 すると、僕が来てからそんなに間を置かずに教室のドアが開くを音がした。


 え、こんなに早く来る人が僕以外にもいるの?


「「あっ」」


 そう思って顔を上げると、僕たちはお互いに声を上げた。


 そう。教室に入ってきたのは、如月さんだった。


「「……」」


 久しぶりだったのもあるし、学校では極力関わらないようにしていたせいか、お互いに無言になる。


 しかも数日ぶりに見た如月さんはさらにその美しさに磨きがかかり、眩さを放っている。もはや神々しい。


 やっぱり生は偉大だ。写真よりも可愛い。


「おはよ。ひ、久しぶり……」

「は、はい。おはようございます。お久しぶりです」


 如月さんが近づいて来て恥ずかしそうに口を開く。


 その態度に僕もドギマギしながら返事をした。


 んあぁああああっ、照れ顔の如月さんも良いいぃいいいいいいっ!!


「元気にしてた? って言うのは昨日もメッセージ送ってたし、おかしいかな……あははははっ」

「どうでしょう。こうして直接お会いするのは久しぶりなので、おかしくはないんじゃないですかね。ちなみに僕は元気にしていました。如月さんはどうですか?」


 苦笑いを浮かべる如月さん。僕は一ファンとしてフォローを入れる。


「そ、そっか。うん、私も元気だよ。ゴールデンウィークは沢山遊んだからね」

「それは良かったです。今日は他の三人はどうされたんですか?」


 いつもは一緒に来ている三人が今日は見当たらない。何かあったんだろうか。


「あ、うん。今日はちょっと早く目が覚めたから一人で来たの」

「そ、そうなんですね……」


 と、いうことはこの教室に如月さんと二人きり!?


 ヤバい……その事実だけで、体が熱くなり、鼓動が更に加速する。


「「……」」


 そして、お互い無言になる。


 あれ、最近は慣れてきて少しずつ話ができるようになってきたのに、今日はどうしたんだろう。


 話が続かない。


 あっ、そうだ。本来なら一緒に帰って別れる時に渡そうと思っていたんだけど、今なら二人っきりだし、渡しても大丈夫だろう。


「「あ、あの!!」」


 そう思って声を上げると、如月さんと丁度声が被ってしまった。


 うわぁ……推しの声と被るとか最悪じゃん。

 何やってるんだよ、僕は……。


「す、すみません。如月さん、お先にどうぞ」

「んーん、眞白君が先で良いよ」

「いやいや、そんな。如月さんからで大丈夫ですよ」

「私の方こそ大丈夫だから。眞白君が先に言って」


 それから何度かお互いに譲り合うやり取りが続いた。


「このままだと埒が明かないから、せーの、で一緒に言いましょ」

「分かりました」


 如月さんの提案によって一緒に言うことになった。


「せーの」

「「お土産があるん(だ)(です)けど」」


 如月さんの提案に従うと、如月さんも同じことを考えていたみたいで、完全に内容が被った。


「うふふ、考えることは一緒だったね?」

「そ、そうですね。それじゃあ、僕のお土産はこれです」

「私のはこれね」


 お互いに机の上にお土産の入った袋を置いて、交換し合う。


「開けてもいい?」

「勿論です。僕もいいですか?」

「うん、開けてみて」

「それじゃあ……」


 二人とも同時に袋を開ける。


「これって……」

「まさかね……」


 僕たちは包みを開けてビックリ。


 お互いに少し掲げるように持ち上げるそれは、


「「オーガブレイドの地域限定品」」


 だった。


「こっちまで同じことを考えてるとは思わなかったよ」

「僕もです」


 まさかお土産を選ぶセンスまで一緒だとは思わなかった。


 これってもしかして……。


「運命かな?」


 くすりと微笑んで首を少し傾ける如月さんは、まるで天使だった。


 あぁ……綺麗だ……。


 僕は心臓を鷲掴みにされて何も言えなくなってしまった。


 ――ガラッ


 しかし、次の瞬間、来訪者を告げる音が鳴る。


 敏感に音を聞き逃さなかった如月さんはバッと離れて自分の席に座った。


「俺たちがいっちばーん!! あれ?」

「いや、もう来てる奴いるじゃん」


 クラスメイトが入ってくる。


 僕の心臓は未だにドキドキしていた。

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