猫が語る事…

橘しずる

物書き家族のお家

 この話は猫の私が語る事……

 飼い主家族に起こった不思議な話

  

 人間ほど想いを溜め込む生き物はない

 そして、幻想と現実の区別をつけようとしない

 猫に限らず命ある物は

 生きる事に精一杯……命を繋ぐ事に精一杯なのだ

 私の飼い主は物書きで……

 家族や周囲の人間からは変わり者扱いを受けていた

 何が変わり者か?

 まずは住まいだ……どんな住まいか?

 最初に語るのは

 私の暮らす家の話をしよう

 

 

 夜明け前

 私は飼い主の枕元で丸くなっていた

 お尻を飼い主の顔にくっつけるように眠る

 

 うわっ……

 隣室が騒がしい

 うるさいニャ……なゃにごとにゃん?

 隣室は野生児の弟が住んでいる

 ん~~何だよ……うっせぃなぁ

 飼い主がモゾモゾと起き上がる

 大福……大人しくしてろよ

 

 ななな……なんだよ!誰だ!

 野生児の弟の怒鳴り声

 ……うっ……なんか寒いな……大福、大丈夫か

 我が飼い主……物書きが、お気に入りのタオルを私にかけて

 寝床を離れた

 大福、大人しくしてろよ

 静かに部屋を出た

 

 物書きが自室の部屋を出ようとした時……

 バン!

 勢い良いよくドアが開いた

 物書きは驚きつつも、一歩飛び退いた

 

 出た……出た……兄貴……出た!

 

 出た……って?

 

 俺の部屋にいるんだ!

 

 物書きは溜息を一つ……

 あのさ、親父が家賃が安いと言ってさ……わかっているだろう?

 野生児の弟は顔面蒼白……

 

 物書きは私のところに来た

 大福……すまないね

 抱き上げて、野生児の弟の部屋に向かう

 騒ぎを聞きつけ、両親も来た

 

 物書きは私を野生児の弟の部屋に入れた

 ……にゃんだ?

 辺りを見渡し……

 ベッドの端に十二単を着た女が立っていた

 ミャウウウ……

 私は威嚇する

 ふぅううう……

 もっと威嚇する

 

 バリン! ベシン!

 部屋に響くような音がして、女は消えた

 

 なんだ?廊下の電気がバチバチしたぞ

 呑気な親父がキョロキョロする

 ……早く出して!

 ドアをカリカリと爪とぎをする


 大福、ありがとうな……怪我してないか?

 

 さすがね……お爺さんから譲っていただいたかいがあったわ

 何たる脳天気な母親だ……

 

 大福、お疲れさま……

 顔面蒼白の弟に……俺の部屋で寝るか?寝袋を持って来な


 物書きの家はお化け屋敷なのだ……不思議な家さ

 私は物書きの祖父の寺からやって来た

 私の母さんの飼い主が物書きの祖父なんだ

 大福は大きな福が来るようにと爺さん和尚が付けた

 だから……私はお化け除けの仕事をさせられる

 ……ただの黒猫なのに…遊びたい盛りの子猫なのに…

 

 

 


 

 

 

 

 


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る