[1部完結]冴えない私がイケメンに誘われサークルに入ったら、いつの間にか指名手配された話

黒崎 京

1-1 入学

私、篠宮茉莉花しのみやまりかは大学生になった。振り返ると、ここまでの人生は早かった。

 私はいたって平凡な人生、これといって誇れるものもない。

 高校時代は勉強に勤しみ、中学生の頃も進学校に進むために勉強漬けだった。

 言うなればそれだけ。見た目も普通。身長も体重も平均的。

 ただ普通に過ごし、強いて言えば少し勉強を人よりもしていたくらいだ。成績は中の上くらいである。

 気づけば、高校生活も終わり大学生、新しい季節の始まり。

 引っ越しもバタバタで家具も入学に間に合わなかったり、大変だった。

 地方から越してきて3日が経った。少し街を歩いてみたが雰囲気が違いすぎて動悸が起きそうだった。ガスやら何やらの契約でそんなに身動きも取れず気づけば入学式、そしてオリエンテーションがある。

 4月4日、金曜日、私は大学へ向かう坂道を歩いていた。

「暑いなー」

ふと口に出していた。春にしては生暖かい風が体にまとわりつきじんわりと汗ばんでいた。

 借りたアパートは駅近くだが、大学が少し遠いためだ。自転車も欲しいが資金面の余裕も心許なくアルバイトしてから買おうと思っていたので、しばらくは歩きで登校予定だ。ちなみに20分はかかりそうだった。

 しばらく坂を登り平坦な道を歩くと大きな建物が見えてきた。あれが通う国立大学だ。私は期待半分、不安半分。少し憂鬱な気持ちもある。

 大学校内は食堂が5階建、講義棟は大きく分けて3つある。中庭のスペースがとても広く、そこを囲むように講義棟が建っている作りで、かなり広かった。

 

 午後1時頃、入学式も終わり、午後3時からオリエンテーションが始まる。それまでどうしようと思っていたら、中庭のスペースでサークルの勧誘活動を先輩達がしている。目があったら声をかけられそう。私はアルバイトしたいしあんまりサークルには興味なかったから俯き加減で歩いて食堂を目指した。

「君、新入生だよね、テニス部どう?興味ない?」

 前に誰かが立ち塞がり声をかけてきた。強引気味にビラも渡してくる。

テニス部か、無理無理、絶対無理、体力ないし断ろう。

「あ、あの、結構です。すいません。」

「そっかー、良かったら見に来てよ!」

 押しが強かった。でも断れた。良かった。

 そしてサークルの勧誘を掻い潜り食堂でご飯を食べようとした。

 色々あってびっくりした。コンビニと和食や洋食、軽食もワゴンなどで販売していた。お財布にはそんなに入れてきてないし、安めのうどんを食べる事にした。意外と美味しくてびっくり、でも毎日は食べれないかな。お弁当作りを頑張ろうと思った。

 

 少し周りを見るとすでに新入生同士で連んでいる人も多い。どうしてあんなに初日からグループができるのだろうと思った。少し惨めに感じ外に出る。

 外のベンチに座りお気に入りの本を読み、次のオリエンテーションの時間まで過ごした。

 時刻は午後3時、オリエンテーションが始まった。

 大学ではクラスはなく学部ごとのゼミという仕組みがある。私は文学部の第1ゼミに入る事になった。ゼミ担当の先生から色々と説明を受ける。なんだか眠たくなってきたなと思った時に話が終わった。初日はこれで終わりらしい。

 履修は半分決められているが、の頃は自分で決める。来週までに決めてこいとのことでそれまでは健康診断があり残りは登校しないらしい。高校とはずいぶん違うなあと感じた。

 「ねえ、履修、一緒に考えない」

隣に座っていた女の子に声をかけられた。え??私が??と疑問に感じる。

「あ、あの、私でよければ」

 ついそう返してしまった。

 彼女は私とは対照的で髪は明るめな茶髪のボブ。身長も少し高くスタイルが良かった。

 私は言われるがまま連絡先を交換した。高校でも友達はあんまりいなかったから連絡先は大体、親や兄弟、親戚くらいだった私に同級生の連絡先が入るのは新鮮だった。

 「私、優子。茉莉花ちゃんだっけ。よろしくね」

 明るくいい笑顔な子だった。どうせ適当に友達ごっこしたいんだろうと皮肉めいて思う。なんで名前を知ってるのと持ったけど、さっき自己紹介の時間あったんだ。もう忘れてたし周りの子の名前、全然聞いてなかった。

 「わ、私は茉莉花。よろしくお願いします」

 「なんで敬語なの、よろしく。じゃあ後で連絡するから適当に暇な時、お茶でもして履修組もうよ!」

 そう言われ返事を返す間もなく彼女は去っていった。私も荷物をまとめて家へと帰ろうと立ち上がった。

 心臓が跳ねる音が感じる。人と話すのは苦手だ。でも嬉しい気持ちもあった。高校時代から誰とも話すことなく1日が終わることも珍しくなかった。

 久々に話した気がした。それともしかしたらこれが大学生活で初めての友達なのかな、なんて思いながら帰路に着く。


 翌日、朝のアラームで目が覚めた。時刻は午前7時、今日は土曜日で何の予定もなかった。どこかへ行こうかな、そう思いながらキッチンへ向かい朝食の食パンを焼いていた。

 スマホの通知音が鳴った。昨日の優子からだった。内容は暇なら出かけようとのことだった。

 え、どうしよ、だって会ったばかりの人と出かけるの?

 私にはよくわからない感覚だった。でも少しドキドキする。その好奇心にかけてみようと思った。

 返信したらすぐ帰ってきた。午前9時に駅に集合とのことで予定が決まってしまった。パンを食べながらニュースを見て支度を済ませる。

 メイクどうしよう、服は何を着ていこう。久しぶりに同級生と遊ぶので迷ってしまうが、時間も迫っているので身支度を終わらせた。

 駅に着くと優子の姿は見えなかったが、少し経って走ってきた。

「ごめんごめん、お待たせ、朝から悪いね!」

 全然、悪びれてない様子で優子はペコペコするジェスチャーを見せた。

「昨日言ってた履修の件、やろう。後ショッピング」

「わ、わかりました」

 優子の勢いに飲まれてしまう。

「昨日も言ったけど、何で敬語なのよ」

「わかった」

 優子は優しかった。とりあえず先にショッピングモールへといく事になた。しばらく歩くと大きな駅ビルがあり複数のテナントが入っている。ここに優子の好きなブランドのショップがあるから見たいとの事だった。


「ねえ、これ可愛くない?」

 お目当ての店で優子は楽しんでいた。正直反応に困ってしまった。

「ねえ、何か言ってよー」

「か、かわいい」

「でしょでしょ、こっちも迷うなー」

 優子はあっちに行ったりこっちに行ったりしていた。私も当たりを見つつ後ろを歩く。ファッションには疎くてこういうのもあるんだっていう感想しか出て来ない。

「茉莉花はさ、あっちのショップとかいいんじゃない?」

 優子が指を指す。向かい側のショップを指していた。確かに私好みかも。

「私もう少しだけ見るからさ、そしたら行ってみようよ」

「う、うん」

 気を遣ってくれたのかな、それにしても好みを当てられたようで不思議な気分、分かる人には分かるのかな。

 しばらく優子の買い物に付き合い、向かいのテントに入った。

「ねえ、これなんか似合うんじゃない?」

 そう言って服を手に取ると私に重ねるように向けてきた。確かにいいかもとは思った。私も手に取るがついつい値札を見てしまう。まあまあなお値段だ。

「ね、どう?いい感じ?」

 食い気味に迫る優子。確かにいいけどこれ買っちゃうと今週の食費、少し削らなきゃ、でもせっかく優子がおすすめした服を断る勇気がなく、気に入ったこともあったので購入を決めた。


 こんな感じで何店舗か回り午前11時頃、混み出す前にカフェへと入る。

 優子はメニューを見てコーヒーとケーキを頼んでいた。私はコーヒーが苦手なので紅茶とマフィンを頼んだ。そして他愛のない話をしながら履修を組み、被る所は被せる形になった。

 こうして私の大学生活が始まっていく。


※※※※※

あらすじがプロローグになっています。

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