プロローグ……とある教会に向かう男……(一応二次創作

 俺は一握の灰が入った革袋を大事に握りしめ、重厚な扉を叩く。

 中から出てくる信者の御布施で肥え太り醜悪な面の老神父の顔も今だけは天使に見える。

 「どうされましたか……リチャードじゃねえか? 何時もは主より女の股にしか祷りを捧げない様な不心得者がどうした? 血相変えて」

 俺を確認すると信者向けの温和に見せた口調が一変する。どうせこの街の住人は周到に変装してても毎晩我を忘れる程飲んだくれる生臭神父の正体はお見通しだぜ、と悪態を突きたいのをグッと堪え

 「……イアンが死んだ。金はどうにかするから、何とかしてやってくれ」

 と奴の前にイアン「だった」灰の入った袋を差し出す。

 「……そうか、災難だったな……身の程を知らずに迷宮四層の火吹き蜥蜴(ファイアドレイク)にでも挑んだのか? それとも5層の美丈夫(エルフメイジ)の集団に絡んで氷漬けにでもされたか?」

 「聞いてねえよ、此奴の金儲けの手段なんざな……それよりどうなんだ? やってくれるのか?」

 「恥を忍んでギルドに泣きつけばいいじゃねえか。儂の蘇生術よりも高位冒険者の僧侶の復活呪文のが蘇生率が高いのは知ってるだろう?」

 「……高位のパーティは運悪く皆出払ってるし、奴らが要求する高額の金を払える余裕はねえ……奴の妹が明後日結婚なんだよ。成る丈なら参加させてやりてえ」

 「……そんなめでてえ話、初耳だな……奴の妹は儂を忌み嫌ってたしな。ここで借りを作りたいのも山々だが……失敗したら命すら狙われそうだしな、儂は御免じゃで」

 「どうしてもか?」

 「そう睨むなよ……他ならぬお前の頼みだしイワンも知らない仲じゃない、兄貴が死んでるのに結婚式も複雑だろうし、やってやりたいのは山々だが……その妹も兄貴の完全なる「消滅」と自身の結婚式への参加なしなら後者を選ぶだろうよ」

 そう言われて俺は黙り込む……。


 「奴の妹が儂に頼む訳はねえしお前の独断だろう。イアンの奴もめでてえ式の直前に何で迷宮に潜っちまったんだか」

 「……花、だよ……」

 「?」 訝しがる老神父に俺はイアンに聞いた話を教える。

 「迷宮の下層に永遠に枯れる事のない花が咲いているという噂を聞いたらしい。イアンは妹と二人暮らし、収入の安定しない冒険者を支え続けた妹の為枯れない花を贈る事で永遠の幸せを願ったんだろうさ」

 「奴にしては随分粋な、と言いたいが、儂はそんな花の事など酒場でも聞いた事ないぞ」

 「俺もそんな話眉唾だろうとは思ったが、イワンは聞いちゃくれなかった……挙句このザマさ。どうも酒場経由じゃなく、道で出会ったフードを被った青白い顔の男に唆されたらしい」

 「奴め、儂の説法を聞く耳を持たない癖に、何でそんな怪しげな奴の話を聞いちまったんだか」

 「知らねえが……イアンは完全に信じてる様子だった。糞っ、こんな事ならもっと強引に引き留めるべきだったぜ」

 

 俺は老神父に別れを告げ、沈痛な面持ちでイアンの妹の所へ向かう……死が軽い世界、冒険者のイアンの妹だ、覚悟はしてるだろうが……式は延期になっちゃうかもな。

 そう思いながら歩いていると……通りの端に佇む一人の見慣れない男が目につく……フードを被り、青白い顔……俺は衝動的に奴の元へ走り出した。



※書き始めた時はそのつもりなかったですが、一応「WIZARDRY」の二次創作とします。

シリーズは敵モンスターで判るかもですがFC版のⅡ・PC版のⅢのイメージですね 

 

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