魔王少女はVtuber

御剣ぼののーの

プロローグ

「これより、被告アスタロトの裁判を始める」


ここは次元の間にある、次元裁判所。

次元の平穏を第一に考えるあまり、揚げ足取りのような些細なことで刑を与え、手足となる尖兵として数多の世界へと送りつけるのだ。


アスタロトは犬型の妖精で、ふわもこなぬいぐるみの見た目をしている。

これは、裁判所あるいは刑を執行中に暴れないようにする為のもので、かなりの身体能力が制限されているいわば半封印状態なのだ。



「貴様の罪状は、朝専用飲料を昼過ぎや早朝に飲んでしまったことだ。複数回に渡る犯行で実に10回」


傍聴席がザワつく。

ここでは、明確な言葉を発さなければ、誰でも傍聴していられる。つまり、見世物にされているわけだ。

この程度のことを犯罪というのはどうかと思うが、傍聴席の反応としては、なんて極悪な……みたいな反応のようで、気を失っている人までいる。


アスタロトには、弁護士もついていない。

当然だ。出来レースであり発言も認められない以上、居たところで何もできないのだから、一々つける必要さえなければ、いないことを疑問に思う人もいない。

アスタロトはため息だけついた。

ふざけた話だと思いながら、傍聴席を横目で確認する。

刑が決まった後に、動いてくれる保険が存在するので、そちらに託していたのだ。

しかし、人が多い中では中々見つけることもできない。

しょうがないので、裁判長の方を見る。


「……よって、管理番号xxxxxxxにて、次代の魔王を見出すことを以て贖罪とする。期限は1年。

連れてこれたら魔王の後見人となるが、もし失敗した場合は死刑となる。最低限必要なものは支給されるがそれ以上は自身で追加購入することを許可する」


アスタロトは首を縦に振った。ここで時間を割くのは無駄と感じているからだ。

それこそ、保険適用されなくなっても困る。

刑の内容自体も、既に何人か同じ判決で送り出されていると知っていたので、動揺はなかったが、出遅れている事は懸念材料である。

魔王にできるのは一人である以上早いに越したことはない。

であれば、経験を積ませ切磋琢磨させることを考え、せめて二人は擁立ようりつしておきたいと考えた。

ここで言う魔王というのは、簡単に言えば世界の維持装置あるいは生贄のようなものだ。

維持できている間は、後見人がある程度の発言権を得て、様々な特権を持てる。

おそらく当代の魔王がそろそろ保たないと判断されたので、次の準備期間になったのだろう。


「では、魔王をサポートする研修が終わり次第出発しなさい」


こうして、アスタロトは魔王を見出すことになったのだ。



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