第28話 赤城さんの家に居候

「今日から内藤さんが一緒に住むことになった。ごたごたが片付くまでしばらく続くから仲良く過ごしてくれ。」


組合から帰ってすぐお泊りセットをもって赤城さんの家へとお邪魔した。夕食の時間に大河さんから大和君と陽菜ちゃんに説明を行った。


「しばらく厄介になります。よろしくお願いします。」


「(よろしくおねがいするわ。)」


「えー!!なんで一緒にすまないといけないの!隣なんだから別に大丈夫でしょ!それにもし一人が危ないっていうならここにいたら私たちの身も危ないってことでしょ!」


「そういわれればそーだな!でも父さんたちもそれくらいわかってここに決めたんだろ?陽菜と違って内藤さんがうちに来るのは反対じゃないから別にいいぞー。何なら内藤さんがうちにいてくれたほうがうまいものが食えそうだ。」


陽菜ちゃんが言う通り二人の子供たちにも危険が及ぶ可能性がある。あの場では簡単に受け入れてお邪魔したが少し考えればわかったことだな。恥ずかしい話いわれるまで気づかなかった。


「父さんも最初言われたときはどうしようかと思ったけど、この際二人には休学してもらうことにしたよ。どこに行っても危ないかもしれないからいっそのこと一緒にいればいいと考えたんだ。学校には、家業の手伝いってことで話はしてあるから明日からしばらくお休みね。もちろん宿題なんかはあるみたいだからちゃんとやるように。」


「まじで!明日から休み!やった~!明日からゲーム三昧だ!」


「馬鹿ね。パパたちがそんな自由にさせてくれるわけないじゃない。どうせ仕事の手伝いなんかに駆り出されるわよ。」



「そうだぞ~。家の中でだらだらするのはよくないからな。一緒に外に出て汗を流すぞ。」


休学だなんて、そんなことまでしてくれたのか。なんだか申し訳ないな。僕ができるお返しは果物か蜂蜜ぐらいだからなこのお礼は奮発して返さなくちゃ。


「そういうことだから内藤さんも気にしないで過ごしてくださいね。」


「ママ~私は納得してないからね。」


「そんなこと言わないの。ほら今日は特別にお寿司を頼んだから早く食べましょ!」


「「本当に!!食べる食べる。」」


「「「「「「いただきます!(いただきまーす。)」」」」」」


赤城さんたちが頼んでくれたお寿司は自分が行くような回る寿司ではなくお高い寿司だったので本当においしくいただいた。


食事が終わりお風呂もいただいて寝室へ戻ると大和君が座って待っていた。


「あ!内藤さん一緒に生活するしせっかくだから話でもしようと思って待ってました。どんな話をしようか悩んだんですけどやっぱり冒険者の話を聞きたいです。」


「俺のことなんかで良ければ話させてもらうよ。どんなことから話せばいいかな?」


「じゃあ、初めて冒険者になったころの話が聞きたいです!」


「そうだな、俺はね意思が弱くていろんな仕事をしたけど長続きしなかったんだ。そのうち社会での実績も経験もなかった俺はどんどんと落ちていき最後に着いた仕事が冒険者だっただけ。そこには君のお父さんのような冒険者で大成しようという気持ちはなかったし、自分にはもうこれしかないっていう焦りしかなかったね。最初はひどかったよ、生き物を殺すことなんてとてもじゃないけどできなかった。でもやるしかないから歯を食いしばってやってみたら気持ち悪くなっちゃってさ何日か寝込んだし、なれるまでに半年ぐらいかかったかな?その間は収入が少ないから貯金を切り崩して何とか生活してたよ。大河君には申し訳ないけど俺は落ちこぼれの部類だからねこんな始まり方だったんだ参考にはならないけどこんな人も少なくはないと思うよ。」


「そんなことないですよ、それでも冒険者として暮らして今生きてるしそれなりにいろいろ経験してきて修羅場なんかも潜り抜けてきたんじゃないですか?」


基本的に逃げて隠れての繰り返しだったからな・・・。修羅場かそんなことあったかな?


「ごめん、少し考えてみたけど僕は戦闘が得意じゃないから逃げてばかりだったんだ。だから大和君が喜ぶような場面はなかったかな。でもそのおかげで逃げるのに助かるスキルはたくさん持ってるよ。最初にもらえるスキルが戦闘系だと今後の冒険者生活が楽になるんだけどね俺は違ったから。そうそう冒険者始めるなら仲のいい仲間を作ることをお勧めするよ。一人だけだと何かと苦労するから早めに見つけたほうがいいよ。」


「それなら心配ないです。友達と一緒に始めるんで最初っからパーティー組んでやっていきます。」


ああ青春だな。俺にもそんな友人がいたらよかったのに。25歳・独身・彼女無し・友人無しこの先は孤独死かな・・・。いやいやみっちゃんがいるからセーフだろ。辞めるんだ俺、不毛な考えをしてはいけないこの先きっといい未来が待っている。


「おーい!ないとーさん大丈夫ですか。急に落ち込んでどうしたんですか?」


「いやごめん少し考え事を。」


「この生活が始まるまで良いことのなかった俺から一つアドバイス。本当にやりたいことがあるなら、頑張って頑張ってこれが最初で最後なんだと思えるぐらいの情熱を注いで燃え尽きるまであきらめちゃだめだよ。じゃないともうそこまで頑張れるものには出会えないと思うから。あの時ああしていればと後悔の念ばかりで何をやっても満足はできないだ。だから自分の力をこれ以上ないぐらい出し切ってから選択するようにしなよ。俺なんて後悔ばかり、こんな大人になっちゃだめだよ。


その後もどんなダンジョンに潜っただのこういう装備を使ってたとかの話をしていたら12時を過ぎてしまったので明日のことも考えて今夜は寝ることにして大和君を部屋へと返した。

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