第38話 体調不良?

「どうした?なんか顔色悪いぞお前。」


 次の日の朝。

 学校で蒼は海斗にそう言われていた。


「そうか?いつも通りじゃないか?」


 蒼は何もない風にそう言った。


「本当か?相当に顔色悪いけど、まあ、やばかったらゆっくり休めよな。」


「ああ、ありがとう。」


 海斗は手を振って自身の教室から出て行った。


(俺、そんなに顔色悪いかな?)


「はぁ。」


「どうしたの?ため息なんかついて。」


 蒼が座りながらため息をついていると後ろから神楽が声をかけてきた。


「いや、少し疲れてな。」


「何言ってるの?まだ授業始まってないよ。」


 笑いながら神楽は蒼の肩を叩いた。


「だな、気合い入れるか!」


 蒼は自身の頬をパーで叩く。


「そうそう。元気にいかなくちゃね!」


「そういえば神楽、俺と付き合ってることって大々的に公表するつもりなのか?」


「まあ、聞かれたら答えるよ?隠すようなことでもないし。」


「そうか。あと月のことは頼むぞ?」


「もちろん。それが条件だからね。」


 顔色がとても悪い蒼とは違い満面の笑みで神楽が言った。


「それよりもお前そんなに明るいキャラだっけ?」


「素はね。蒼と付き合う事になったからもうそこまで気を張らなくても良いかなってね!」


 あはは~と笑っている神楽。


 そんな時、教室の扉が開いた。

 蒼は何気なくそちらのほうに視線を向けるとちょうど月と目が合った。

 が、蒼はその瞬間に目をそらした。


「?どうしたの蒼。」


 そんな様子を少し不審に思ったのか神楽は不思議そうに蒼を見ていた。


「ああ、いやなんでもない。なんか今日は体調が悪いみたいだ。」


「確かになんだか顔色が悪いね。本当に大丈夫?」


「ああ。少し昨日眠れなかっただけだよ。それよりそんなに俺の顔色って悪いか?」


「うん。かなり悪いと思う。なんだか血色が悪い感じ?」


「トマトジュースでも飲もうかな?」


 蒼は少し冗談っぽくそういった。


「買ってこようか?」


「いやいや、そこまでしなくてもいいよ。もうそろそろホームルームが始まるしな。」


「そっか。何かしてほしいことがあったら言ってね?」


「ああ。そうさせてもらうよ。」


「うん!じゃあ、私は席に戻ってるから。」


 神楽は自身の席に戻っていった。

 するとすぐに取り巻きらしき女子たちに囲まれていた。

 きっと今頃なんでいきなり蒼と関わっているのか聞かれているのだろう。


(にしても、今の俺そんなに顔色が悪いのか?)


 と、蒼は独り考えこんでいると教室のドアが勢いよく開かれた。


「よーし。じゃあ、朝のホームルーム始めるぞ~」


 その一声で騒がしかった教室は静まった。


 これから一日の学校生活の始まりだった。


 …………………………………………………………………………………………………


「じゃあ、お昼ご飯食べよっか!」


 昼休みが始まってすぐに神楽が蒼の下へとやってきた。


(昨日言ってたのは本当だったのか。)


 蒼は昨日の帰り道に神楽が言っていたことを思い出していた。


「本当に作ってきたのか?」


「もちろん!私から言い出したことだしね!」


 言いながら神楽はカバンから二つの弁当箱を取り出した。

 どうやら本当に作ってきたようだ。


「じゃあ、食べよっか!」


 机を二つくっつけて隣に座りながら神楽はそういった。

 その光景が珍しいのかクラスの視線は蒼たちにくぎ付けだった。


「なんで、あんな陰キャなんかと、」


 すると、聞こえてきたのだ。

 このような蒼を侮蔑するかのような言葉が。


(まあ、こうなるわな。)


 蒼はそれが聞こえたときどこかで納得していた。

 だが、神楽はそうではなかったらしい。

 その声の方向にいた男子生徒をとても鋭い目で睨んでいた。


「ひっ、」


 それに気が付いた男子生徒は逃げるようにして教室から出て行った。


「気を取り直して食べましょう。」


 まるで何事も無かったかのように蒼に微笑みかける神楽だった。


「そうですね。ではいただきます。」


「いただきます。」


 二人して手を合わせて音頭をとる。

 神楽の作ってきた弁当は全体的にバランスが良かった。

 色どりも良く栄養面にも気が配られていた。

 そして何より


「うまい!」


 とても味が良かった。

 月が作るご飯と遜色のないレベルだった。


「よかった。私こう見えても結構料理は得意なんだよね。」


 ふふんと笑いながら胸を張る神楽。


「本当にうまいな。」


 蒼はそう言いながら食べ続ける。

 しばらく食べていると教室に人だかりができているのに気づいた。

 よく見てみると、その中心には月がいた。

 どうやら、クラスメイトから話しかけられているらしい。


(よかった。これで友達もできるだろ。)


 蒼はすぐに視線を弁当箱に戻しまた食べ始める。


「ご馳走様。本当においしかったよ。」


「お粗末様です。また作ってくるからね。」


「ありがとう。でも、無理はしないでくれ。お金もかかるだろうし。」


「いいって。そんなこと気にしなくても。ほら、よく言うでしょ?好きな男の人の胃袋を掴めって。」


「なるほど?」


 自信満々に神楽はそういっていたが実際の所はどうなのだろうか?


「じゃあ、今日も一緒に帰ろうね~」


 そういって神楽は自身の席に戻っていった。


「おいおい蒼!」


 するとすぐに教室の扉があいた。

 そこには海斗がいた。

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