カリンとカレン~双子の姉が構えと迫ってくる~

@Amayayaya

第1話

「ねえカレン、ユウジはもっと私達に構うべきだと思うのよ」

「そうね、カリン。私達はもっと構われるべきだわ」


「暑い」


双子の姉2人がくっついてくるものだから、暑くて仕方ない。

残念ながらこの部屋のエアコンは現在故障中であり、扇風機で生温い風を送ることしかできない。

そんな部屋の中で勉強をしていたら、夏休みが始まり暇を持て余した2人が俺に構えと迫ってきたのだ。


「暑いから離れてくれ」


「確かに暑いわね」

「だったらリビングで勉強すればいいじゃない」


「そしたら姉さん達はゲームを始めるじゃないか。集中できたもんじゃない」


双子の姉は優秀で、家で勉強しているところをほとんど見たことがない。

夏休みの宿題に関しては、始業式当日の朝に早起きして終わらせるというパワープレイだ。


「だって暇なんだもの」

「ユウジが構ってくれないからいけないのよ」


「俺は受験生だから、勉強しなきゃいけないんだよ……」


現在、俺は中学3年生で、姉さん達は高校1年生である。

姉さん達は県内トップレベルの高校に行ける学力があったものの、家から近いという理由だけで近所の高校を選んでしまった。

そして、俺も同じ理由でその高校を目指している。

なんせ、その高校は家から歩いて10分なのに対して、他の高校は自転車か電車で30分以上もかかるのだ。

ただ、トップにこそ劣るものの、毎年必ず数人は旧帝大に行く生徒がいるため、ある程度の学力がなければ入れない学校でもある。

大した得意科目のない(幸い苦手科目もないが)平凡な成績の俺は、姉さん達と違い、夏休みには真面目に勉強しなければならないのである。

ちなみに、塾には行っていない。

親に頼めばきっと通わせてくれるのだろうが、経済的に負担がかかるものだし、幸い学力は伸びている実感もあるので、限界までは一人で頑張るつもりだった。

それならば姉達に教えてもらったらどうかと思うかもしれないが、あの2人は感覚派過ぎて全く教師に向いていない。

たまに、

「みゅ〜〜〜〜ん」

「みゅみゅ~~ん」

という意味の分からない鳴き声で会話していたりする。


「ユウジは偉いわね」

「偉いけど、私達には構ってくれないわ」

「そうね、私達にはユージエネルギーが不足しているのだわ」

「補給は急務よ」


「わかった、わかった。何がお望みなんだよ」


このままでは埒が明かないので、仕方なく姉達に構うことにする。


「私、プールに行きたいわ」

「でもカリン。今から行っても少ししか泳げないじゃない」


ここから一番近い市民プールは16時で閉まってしまうのだ。

現在は14時半だが、移動と着替えに40分はかかるので、日を改めた方が良いだろう。


「でも、暑さを吹き飛ばすには水を浴びるのが1番よ」

「ならカリン。お風呂に水を張るのはどうかしら」

「あらカレン。それは良い提案だわ」

「じゃあユウジと一緒に入りましょう」


「いや、この歳になって姉とお風呂なんて嫌だよ……」


「あら、昔はよく一緒に入ってたじゃない」

「それにプールなのだから水着を着るわ」


確かに、姉さん達が中学に上がるまでは一緒に入っていた。(というより、俺が一人で入っていると乱入してきた)

ただ、その頃にはもう3人で入るのはやや窮屈で、また、体の成長もあって風呂は分けられた。

それでも姉さん達はいつも2人で一緒に入っているのだから、仲の良いことだ。


まあ、ここで時間を使うのは得策じゃない。

ここは流されておこう。


「……わかったよ。じゃあ先に水を張ってくる」


そう言って俺は、水着を持って部屋を出た。

ちなみに俺たち姉弟に個室はなく、同じ部屋で寝起きしている。

正確には、成長に合わせて個室にできるように部屋は設計されているのだが、姉さん達が部屋を分けるのに猛反対したためにそのままになっているのだ。

両親もなんとか説得を試みたが、俺の風呂に乱入しないことと引き換えに折れた。

まあ、思春期の男子としては個室が欲しくはあるが、風呂に勝手に乱入してこなくなっただけマシである。



俺が着替え終わって、水が溜まりはじめたところで、姉さん達がやってきた。


「ユウジ、大きくなったわね」

「確かに、大きくなったわね」


水着を着た姉さん達に声を掛けられる。

確かに、ここ数年で俺の身長は一気に伸び、姉さん達の身長を追い越した。

といっても、姉さん達はともに167cmの高身長で、170cmの俺とは大差ないのだが。

まあ、これからの成長に期待かな。


成長といえば、姉さん達も成長していた。

どことは言わないが。


そんな姉さん達は腰まである髪を後ろで一つに纏め、色違いのビキニを着ている。

カリン姉さんが水色、カレン姉さんがピンクだ。


そんな感じで話をしているうちに、浴槽に水が溜まってきた。


「ユウジ、入るわよ」

「ユウジ、入るわよ」


「わかったから押さないで」


やはり、3人も入れば一般家庭の風呂は手狭だ。

なので、姉さん達に押されるがまま俺は張られた水に足を入れてみるのだが、


「つめたっ!?」


めっちゃ冷たかった。

日光で温められていないのだから当たり前ではあるのだが、それでも水風呂とかあるしと思って油断していた。

俺に水風呂は無理みたいだ。


「どれどれ」

「別にいけるわね」


そんな俺を放置して、姉さん達が水に肩まで浸かっている。

まじかよ……

やはり、血が違うということなのだろうか。

ちなみに、俺と姉さん達は血が繋がっていない。

両親は俺たちが小学校に入学する前に再婚しており、俺は母さんの連れ子で、姉さん達は父さんの連れ子だ。

俺は日本人の両親から生まれた日本男児であるが、姉さん達は祖父が北欧の人らしい。

といっても交流はないし、姉さんたちも少し髪と目の色素が薄いぐらいで、あまり外国人らしさはない。


「ほら、ユウジも入りなさい」

「ええ、入りなさい」


そういって姉さん達は互いに浴槽の両端に寄って、真ん中にスペースを空けた。

といっても空いた隙間は僅かなものでしかない。


「いや、やっぱり3人は無理があるよ」


「そういって、逃げる気だわ」

「私たちはわかっているのよ」


そういって、腕を2人に掴まれた。

どうやら逃げることはできないらしい。



「あああああああああ!!!!!」


まず襲ってきたのは、とてつもない冷たさに息が苦しくなるあの感覚だ。

そして、次に襲ってきたのはほぼ裸で姉達と素肌を擦り合わせているこの状況に対しての健全な男子としての反応である。


「あああああ……」


段々と冷たさには慣れていったものの、精神は消失していった。



「ふふふ、懐かしいわね」

「でも、ちょっと恥ずかしいわね」

「私達も成長したのだわ」

「そうね」

「今度は温泉なんてどうかしら─」




家族揃っての夕食後。


「つめたあああっ!!!!」


浴室から父の悲鳴が聞こえてきた。

やはり、血筋は関係なかったかもしれない。



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