雌鶏の胸肉と雌豚の胸肉と女性の胸肉は当然違う(1/2)
「フ。……フ? ごめんなさい、もう一回言って貰ってもいいかしら唯お姉様」
「下冷泉先輩のおっぱいを僕に触らせて下さい」
「……フ……?」
「素直に告白します。下冷泉先輩、僕は女の子の裸を見ると大変に動揺してしまうのです」
「フ。フゥン……?」
「この僕の習性を身体測定の日までにどうしても僕は直したいのです! 女性の裸を見ても動じない為にはどうすればいいのか……そう思った矢先、僕が頼れる女性の人は下冷泉先輩だけでした……! 先輩はかなりの変態ですのでそういうのに免疫がありそうだったからお話を伺ってみようかと藁に縋るような気持ちでお話をお伺いに来た所存です」
――実際に女性の胸や裸を実際に見たり触ったり匂えばいい。
そんな具体性があり過ぎるアドバイスを女装経験者から授かった僕たちは昼休み以降の授業をまともに受ける事が出来ないまま、頭の中は只々ひたすらに悶々とした感情を覚えていた僕は――何をとち狂ったのか、下冷泉霧香にアドバイスを求めていた。
「……念のために屋上に来て話をして本当に良かった。それ、他の女子生徒に聞かれたら本当に危ない発言よ、それ。あのまま3年生の教室の前で話していたらどうなっていたことやら。色々と追い込まれて無自覚の発言とはいえ本当に気を付けて。色々と」
はぁ、と心底ぐったりしたと言わんばかりの大きな嘆息をしてみせる彼女は学園の屋上にあるフェンスに背中を預けながらそんな事を口にしてみせた。
というのも、僕は午後の授業が全て終わって、寮へ帰る為の準備を整えていた下冷泉霧香が在籍する教室に単身で乗り込んだのである。
……なんかやけに周囲の先輩たちが僕に向ける視線がなんか色々とヤバい気がしたけれど、ここは由緒正しく格式の高いお嬢様学校であるので、まさか痴漢される訳がないじゃないか!
そんな思いを胸に秘めたまま、先輩のいる3年生の教室に向かって声を掛けると、先輩は珍しい事に少し慌てて僕と一緒に誰もいない屋上に行こうと催促してくれたので彼女の言葉に甘えて、誰もいなくて広い広い屋上にやってきている訳なのだ。
「まぁ、確かに僕の言葉は傍から聞けば色々と危ない発言ではありますけれど、女同士ならこれぐらいは普通な内容では?」
「フ。確かに女同士ならそれは普通の内容かもしれない。だったら茉奈さんにでも聞けばいいじゃない。同い年だし、彼女も中々の胸の持ち主よ? 私以下だけど」
「それはそうかもしれませんが、こういう話題でお嬢様が役に立つと思いますか?」
正直に話そう。
僕は昼休みの後に茉奈お嬢様におっぱいを触らせてと懇願したら「今はちょっと、覚悟が出来てなくて、その、ごめんなさい……お風呂上がりなら……うん……3日ぐらい身体を綺麗にするから待って……」と顔を真っ赤にしながら本当に恥ずかしそうに謝られて、出来ず仕舞いに終わった。
しかし、3日も待ってしまえば、僕はいよいよ身体測定の日を迎えてしまう。
身体測定は今週の中頃の水曜日……つまり、月曜日である今日が終わればあと1日しか猶予が残されていない。
であるのなら、僕は早急的に誰かの身体を触ってでもして女体に慣れなければならない……そんな消去法で僕が行きついてしまったのは超が付くほどの危険人物であり、茉奈お嬢様以上の巨乳の持ち主である下冷泉霧香その人という訳なのであった。
「フ……茉奈さんは初心だからそういう役には立たないでしょうね、全く。ところで唯お姉様。話は変わるのだけどご自身の学内での立ち場が分かってる?」
「立ち場?」
意味深な事を口にしてみせた彼女は携帯機器をポケットから取り出すと、画面を指で何回も弾いて現れたのであろう画像を、片手を突き出すように僕に見せつけてくれた。
「……裏掲示板? 裏掲示板って、学校だとかそういうところにあるかもしれないとされる類のネット掲示板の事ですか?」
「フ。あら、意外と唯お姉様はそっちの知識があるのね。茉奈さんはそっち方面の知識には疎いから本当に私と唯お姉様は気が合うわ」
料理を作る際には今の時代はネットで簡単に探して知識として収集する事が出来るので、僕個人としても愛用しているのだが、当然ながら僕も年頃の男なのでそういうモノにハマっていた時代もある。
特にネトゲはいい。
堂々と自分の名前の後に【性別・男】と表記されるようなゲームはいい。
「フ。名前の通り、ここ百合園女学園の裏掲示板。多分、茉奈さんは存在は知らないだろうけれど……うん、これでいいかしら。ほら、これを見て」
そういうと彼女は個人情報がたくさん詰まっているのであろう自分の携帯機器を僕に手渡してくれたので、僕はその画面に意識を集中させる――。
◇
【悲報】
菊宮お姉様がエロいという風潮
誰も反論できなくておハーブ生えましてよwww
1:名無しの清楚お嬢様
わたくしは菊宮お姉様の非公認妹
菊宮唯お姉様がエロいという風潮をどうにかしたいですわ
・露出が少ない清楚な制服です
・貧乳です
・料理上手で家庭的で弁当が美味しそうです
・ド清楚銀髪紅目です
・同性に身体を触られるだけでも慌てふためきます
・それどころかすぐ涙目になって嗜虐心をそそらせます
・性知識が豊富そうです
・存在自体がエッチです
・お姉様を見ていると謎フェロモンで興奮します
悪ぃですわ……やっぱどうにも出来ませんわ……
2:名無しの清楚お嬢様
言えたじゃねぇですの
3:名無しの清楚お嬢様
菊宮お姉様は存在自体がエロいから無理ですわよ
4:名無しの清楚お嬢様
菊宮お姉様は風紀を乱すいけないお姉様ですから反省文を書かせて生活指導室に監禁したいですわ
オラッッッ!
反省文を書けですわッッッ!
何もしてないのに僕がエッチでごめんなさいって書けですわッッッ!!!
5:名無しの清楚お嬢様
菊宮お姉様は全裸の上から服と下着を着用なさっているとんだド淫乱ド変態女が抜けておりますわよ
6:名無しの清楚お嬢様
菊宮お姉様も急ぐ時は走って汗をお流しになられると思うと興奮を隠せませんわ
おかげ様で水曜日の身体測定が楽しみで寝れませんわね
7:名無しの清楚お嬢様
は? 完璧生物であらせられる菊宮お姉様が汗を出す訳ありませんが?
8:名無しの清楚お嬢様
は? 解釈違いですわよ? 逝去あそばせ
9:名無しの清楚お嬢様
悲報
わたくし百合園女学園小等部1年生
菊宮お姉様がエロいのは分かるけど逝去の意味が分からない
10:名無しの清楚お嬢様
逝去とは死ねっていう意味ですわよ!
わたくしたち百合園女学生はそんな死ねだなんていう知性を感じられないようなお下品な言葉を言わないのがモットーでしてよ!
菊宮お姉様をエロい目で見ない女子生徒は皆死ねばいいですわ!
11:名無しの清楚お嬢様
菊宮お姉様がいけないんです……!
私は至って普通だったのに……!
菊宮お姉様が私を狂わせた……!
私まだ中学2年生なのに……!
私の理想の人が菊宮お姉様になりつつある……!
なんで私の許嫁が菊宮お姉様じゃないのよ……!
12:名無しの清楚お嬢様
菊宮お姉様以外の人間に発情できない身体にさせられる加工音声ASMRの開発はまだですの?
技術開発お嬢様部の皆々様は何をやっていらっしゃるんですの?
身体測定当日の隠しカメラの準備はまだですの⁉
菊宮お姉様の体操服姿だなんて国宝でしてよ⁉
13:名無しの清楚お嬢様
はぁ……
分かっておられません素人お嬢様が多すぎませんこと?
菊宮お姉様が淫乱な態度を取ってほしいと考えるのはド三流
唯お姉様にセクハラして戸惑いの表情を浮かべならやらせて頂くのがド一流でしてよ
14:名無しの清楚お嬢様
学園3大美女である菊宮お姉様がエロいのは分かりますがそれなら他2人でいいのでは?
15:名無しの清楚お嬢様
いやーきついですわよ
16:名無しの清楚お嬢様
茉奈お姉様→エロいけど理事長代理は流石に怖い
霧香お姉様→エロいけど何をされるか分からなくて怖い
菊宮お姉様→エロいから襲ってもヨシ!
17:名無しの清楚お嬢様
なんですのこのスレ
地獄ですの?
18:名無しの清楚お嬢様
地獄スレスレの天国でしてよ
19:名無しの清楚お嬢様
煉獄ではありませんの
20:名無しの清楚お嬢様
素晴らしい提案を致しましょう
貴女も菊宮唯お姉様好き好き大好きファンクラブの
21:名無しの清楚お嬢様
もうなっていましてよ
◇
「……なにコレ……? なにコレェ……? なにコレェ……⁉」
「はい、冷たい缶コーヒー」
「ひゃあああああああああああああああん⁉」
いきなり僕の頬にキンキンに冷えた缶コーヒーを押し付けられたものだから、つい反射的に悲鳴をあげてしまい、内心で男のような野太い悲鳴を出してしまったのではないかと警戒するのだが、面白そうに2つ分の缶コーヒーを持っている下冷泉霧香が愉快そうに笑っていることから、どうやら男らしい悲鳴を出していないようであった。
それにしても一体どこから缶コーヒーを持ってきたのかと周囲を見回してみると、屋上の端には雨を凌ぐための天井がついている小さな憩いの場のようなベンチがあり、その隣に自動販売機が稼働していたのだった。
「お、驚かさないでくれません……⁉」
「フ。まるで生娘のように可愛らしい悲鳴。欲情する」
「欲情しないでくれませんか⁉」
またしても僕は自分のアイデンティティを見失いつつありそうだったので、がっくりと落ち込んで四つん這いになり、大きな溜め息を吐いた。
「……はぁああああああああああああああああああ……! 僕が一体全体何をしたって言うんですかぁ……⁉」
「フ。唯お姉様がこの学園に現れ、無自覚に周囲の女子生徒の性癖をぶち壊して1週間が経過した事かしら。唯お姉様のタグがついたクソスレの総数はなんと182つ。何なら学内に唯お姉様を応援するだけの非公式ファンクラブが設立したほどよ」
「フ、フ、フ、ファンクラブゥ……⁉」
「フ。そのファンクラブの初代会長は私。でも安心して。ファンクラブに入ったら唯お姉様と寮生活をしている私が様々な情報を発信して恩恵を与える……が、万が一にも唯お姉様に直接的な危害を与えるような真似をしたら下冷泉家が潰す、っていう誓約の元に集った将来有望な雌豚たち。いわばエリート雌豚。ブランド雌豚って言っても過言ではないわ」
怖いなぁ、下冷泉霧香!
怖いなぁ、下冷泉家!
怖いなぁ、雌豚ども!
というか、何を勝手にそんな危険な組織を設立しては、そんな組織のボスになってやがるんだこの人は⁉
――と、ついつい声を荒げたくなってしまったのだが、よくよく考えればこのファンクラブの存在はいわば『菊宮唯は女性である』という前提で作られた組織だ。
当然ながらその組織に加入している女子生徒は僕を女性として見てくれているという訳でもあり、そのファンクラブの存在が大きくなればなるほど僕の女装は完璧であるという具体性も発生する。
「その直接的な危害というのは、僕をむやみやたら触る事も入りますか」
「フ。もちろん。YESお姉様、NOタッチ。それが我ら菊宮唯お姉様好き好き大好きファンクラブの鉄の掟。破ったら東京湾」
「それなら別に構いません。しかし東京湾に沈めるのは流石にどうなのでしょう。死にますよ?」
「フ。冗談。フ。フフ。フフフ……」
「まったく冗談に思えない含み笑いは流石に心臓に悪いです」
そういう意味では下冷泉霧香はまたしても僕の預かり知らぬ所で、無意識に、僕の女装の手伝いをしてくれているのであった。
彼女は僕に対しては確かにセクハラ発言だとかそういう真似こそすれど、実害が出るようなセクハラ行為にはまだ手を出していない。
また、朝の登校中にもあったように僕を色々と危険な目で見てくる女子生徒に対しての抑止力ともなりうる程の家柄――日本の旧華族の末裔である下冷泉家の人間であるという点があるからか、彼女は只々僕の隣に立っているだけで僕を守ってくれる存在でもある。
……女装しているとはいえ、本来ならば男である僕としては何とも情けないよう思いに駆られてしまうものの、こんな状況下においては彼女の存在は実に頼もしい限りなのである。
ただ一つだけ難点を言うのであれば、僕は女性ではなく男性であるという事実を下冷泉霧香は知らないという点だが……それを知ってしまったのであれば僕はここで生活をする事が出来なくなるのでバレてしまってはいけないのである。
「とはいえファンクラブに属していないような唯お姉様過激派である闇の妹が少数とはいえ貴女を狙っているのは変わりない。この学園で単独行動をしたら危険だから信頼できる生徒と行動なさい。例えば、同年代の茉奈さんとか」
闇の妹って何だよ。
……色々とツッコミたい事はあったのだけど、僕はそれらを飲み込んで下冷泉霧香の忠告を聞き、その忠告に対して心からの感謝を送った。
「フ。分かったのなら宜しい。であれば、そろそろ当初の本題に戻りましょう。確か女性の裸を見ても動じない為にはどうすればいいのか、という話だったかしら。いきなりどうしてそんな話を……あぁ、身体測定ね。なるほど」
「察しが早くて助かります」
「フ。話が長くなりそうだから取り敢えずあそこのベンチにでも座りましょうか。はい、自動販売機で買った缶コーヒー。無糖で良かったわよね」
「え、あ、はい。確かに僕はブラックコーヒーが好きですけど」
「フ。唯お姉様は毎朝ブラックコーヒーをお飲みになられるもの。唯お姉様が好んで飲んでるって私が掲示板に書き込んだら、今や百合園女学園ではブラックコーヒーがちょっとしたブーム。おかげ様で私もブラックコーヒーが好きになっちゃった」
いつの日か僕のやる事為す事でこの学園を裏から支配できるのではないのかと、色々と危ない着想を得てしまったがそれは流石に色々と危ないので実行に移すのは止めておくこととして。
「フ。確かに唯お姉様は人前で肌を晒したがらないわよね。私が唯お姉様が入浴しているお風呂に突撃していても当たり前のように鍵が掛かっている所為で入れないのよね」
「誰が好き好んで自分の裸を晒したがる女子がいるんですか」
「露出狂。あるいは承認欲求に飢えて分かりやすい数字にしか目に入らないネット住人。それから私」
意外といたよ。
何なら目の前にいたよ。
日本怖いなぁ。
「フ。唯お姉様が言いたい事は分からないでもない。だけど、女子同士……それも高校生同士なら余り気にしないのが実のところ。それに此処は小中高一貫校。小学校から高校まで同性の他人の裸なんて、飽きるほどに見た人が多い訳なのよね」
「僕はそれを気にする側の女子なんですよ」
「だけど、唯お姉様の場合は話が違ってくる。いい? 唯お姉様は今年の4月に転校してきたばかりの異物。周囲のお嬢様方はお美しい唯お姉様の全裸姿に興味津々……というのはさっきのクソスレを見せたから説明しなくてもいいかしら?」
下冷泉霧香の言う通りだ。
周囲の女子生徒は僕に対してかなりの興味を持っていらっしゃる。
つまりは着替える際に衣服を脱いでいる半裸に近い恰好の女子生徒が、着替えている僕に視線を向ける可能性が凄まじく高い。
そうなってしまえば、僕は周囲に警戒しながら着替えをしなければいけないので、僕は半裸の状態でこちらをまじまじと見つめてくる女子生徒たちの視線を掻い潜りつつ、更にはそんな彼女たちに一切の欲情をしないまま更衣を済ませなければならない……というのは、かなりの難易度を誇る。
何せ、こちらは欲情をしてしまえば下半身の生殖器が膨れ上がってしまう。
そうなれば、ここでの生活は終焉を迎えてしまうのだ。
「フ。人の目っていうのは慣れていない時には気になって当然よ。私だって演劇に慣れるまでは人の目が気になって気になって仕方がなかったし……なので唯お姉様にはお望み通り、女の身体に慣れて貰う必要がある」
「え⁉ え、ちょ、いや……慣れるって、そんな……! そ、そんな、僕は本気で言った訳じゃなくてですね……⁉」
慌てふためきながら弁解する僕を置き去りにしてみせた彼女はベンチから立つや否や、いきなり制服のボタンを……胸のあたりのボタンを全て外すと、柔らかそうな肌とブラジャーを僕の視界に入れてきた。
「し、し、し、下冷泉、先輩……⁉」
男性としての本能が、勝手に、たわわに実った先輩の胸を見続ける。
視界から逸らそうとしても、本能だけはどうしようもないぐらいに正直で、逸らしたというのに彼女の魅力的すぎる双胸を勝手に視界に入れようとしてくる。
「や、ち、違っ……! 違うんです……!」
「フ。可愛い。でも本当に唯お姉様は恥ずかしがり屋なのね。演劇だとかで露出のあるドレスに着替えた経験がある私にとってはこれぐらいなんてことはないのだけど」
「それは……そうかも……しれませんけれど……!」
「フ。何もしないから落ち着いて私の胸を見て。こんなのは皮膚で覆われただけの肉塊」
「う、うぅ……!」
合意を得た事で僕の理性がいよいタガが外れてしまい、本能と全く変わりない勢いで僕は彼女の見事な胸を視界に納めた――その瞬間。
――彼女が僕の頭を両手で抑えて、僕の頭をそのまま彼女自身の豊胸に押し当ててきて、僕の顔一面全てが柔らかくて、暖かくて、弾力のある何かで覆われた。
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