第4話 目玉焼きに何をかけるかという永遠の議題

 私はハワイ名物のライオンコーヒーをカップに注ぎ、豊かなバニラの香りを楽しみながら、また外を眺めた。


 やはり、何度見ても鬱蒼とした森である。


 ベランダに出て、首を左右に伸ばしてみたが、どこを見ても濃い緑が広がっているばかりだ。


 植物の生態には詳しくないのだが、眼の前の森を構成する木々は、少なくとも、日本原産の植物には似ていなかった。


 あえて現世の分類を用いるのならば、地中海あたりで見られる硬葉樹林といったところだろうか。

 もしもオリーブのようなものが採取できるのなら、食用油として利用できるかもしれない。


 サラダ油に飽きたら採取してみようかしらん。


 などと妄想を膨らませていたら、きゅるると腹が鳴ったので、私は朝餉を取ろうと冷蔵庫へ向かった。


 金がないので食費を抑えるために自炊は一応しているが、そこは腐った大学生。あまり期待はしてくれるな。


 卵。特売のウインナー。鶏むね肉。調整豆乳。半玉のキャベツ。人参。じゃがいも。好物のレーズン。カカオ多めのチョコレート。安いブランデー。缶チューハイ。その他、色々。


 当面は、栄養面でも飽きの面でも問題なかろうと思って、とりあえず私は卵とウインナーを取り出した。


 フライパンに油を敷いて、じうじうと炒めた。塩コショウで味付けし、五枚切りの食パンの上に載せて、最後にケチャップかけて、食べた。


 うん。そこそこ。


 朝餉を平らげると、満腹感と共にわずかな不安が襲ってきたので、私は再度、冷蔵庫の中を見た。


 しかし、その心配は杞憂に終わった。


「よし。ちゃんと、数は元に戻っているな」


 私は、女神との契約がきちんと履行されていることに安心し、バタンと扉を閉めた。

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