第40話 捜索終了?

 ……こちらへと近付いてくるガラの隣には、ベクーラガルルがいた。

 いや、ベクーラガルルなのか?


「初めまして、私はベクーと申します。シロシロさんとは知り合いで、昔はあなたのご両親と共に暗殺業をしておりました」


 容姿は同じだけど、口調も、雰囲気も、身のこなしも。

 ベクーラガルルとは全く違ってる。

 だとすると、何かが化けているのだろうか。

 コイツ、人が戦争するよう操ってる魔なんじゃ。


 ベクーは俺の頬に手を当て、目を覗き込んできた。


「どうしましたか? 私のことが怖いのですか」

「いや。あまりにも、魔法使いに似ていて」


 さすがに、魔だと疑ってるとまでは言えない。

 本当にそうなら、呼んだであろうシロシロも怪しい。

 というか、シロシロは操られているのかも? ……いや、疑心暗鬼になるなよ俺。

 ベクーは俺の頬をゆっくりと摩りながら離し、それまたゆっくりと俺から離れた。


「偶然でしょう。私には魔法なんていう伝説のものなんて使えません。でも、使ってみたい魔法ならありますよ?」

「それってどんな魔法〜?」

「シロシロさんのお仲間、つまり聖獣になる魔法です」

「え〜っ? ベクーちゃんヤバ❤︎ 願望剥き出しでこわ〜い❤︎」


 べクーは微笑む。

 何が起きているんだか分からないけど、このベクーも太刀の人みたく強いんだろうか。

 本当にただ、一緒に旅をするということなら心強いが……。


「あなたのお名前は?」

「マヴです。シロシロとはいつ、どこで知り合ったんですか?」


 ベクーは何故か苦笑いすると、ギュッと口を閉じる。


「ホーリーさんとアジェスさん……マヴくんのご両親を仲間に入れるよりも前です。私は元々、吟遊詩人同士で数人集まって旅をしていたんです。それで森を通った時に、暗殺業に加わりました」

「そうなんですか。三毛又数は仲間だったんですか?」

「ああ……懐かしいですね。あの方は仲間ではなく、勝手に付いてきてただけです。一緒に演奏したことはありません」


 ベクーはただ苦笑いしている。


「私は土地勘が強いので、魔法使い探しのお役に立てると思います」


 うーん。

 不気味な相手だけど、どうも害を与えてくるような雰囲気でもない気がする。

 けど俺の洞察力じゃ、なんとも言えないか……? もう少し冷静になってから判断したいんだが。


「それじゃ、お兄ちゃん、ベクーちゃん。行こ❤︎」


 少し歩き、ふと村の方を見る。

 出入り口にあるアーチの向こう側で、両親とシロシロが手を振っている。

 見送りしてくれるのか、何でか少しうるっときた。

 

 俺は手を振り返す。

 

「魔法使い探しに行ってくるよー!」

「気を付けて行ってらっしゃいましー」


 隣にそっくりさんがいるだけなのに、自分の目的におかしさを感じてしまうな……。


「ではまたお会いしましょう、シロシロさん!」

「ベクー。マヴくんのこと、頼みましたわよー」

「はーい!」


 ふう、これでようやく旅に出られる。


 ベクーは俺の隣を歩き、見ると微笑み返してきた。

 小さい……。

 シロシロもベクーラガルルもそうだが、あまりにも見た目が変わっていない。


「……。マヴくん、ベクーラガルル。魔法使いのことは覚えていますね?」

「え? ええ」


 何だ急に……。

 覚えてるから殺すとか、そんな流れなのか?


「聞いて欲しい話があります。歩きながらでいいので聞いてください」

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