第6話 時には救助も必要だよね

(ギリギリセーフ!)

 俺はレーザーバリアを展開し、魔物の攻撃を防ぐ。

 幸い、襲われていた探索者に到達する前に割って入ることができた。


「無事か?」

「……は、はい。ありがとうございます」

「そうか。動けそうか?」

「もう魔力が尽きてしまって……」

「わかった。そこで待っていろ」


 俺はそう伝えると魔物の方へ向き直る。


「ルーファス」

《初めて見る魔物のようです。ビット兵器展開。攻撃を提案します》

「いや、暴れられるとあの子を守り切れないかもしれない。ビットは護衛に回そう」

《ですがそれですと、攻撃はどうするのですか?》

「滅魔刀を使うことにする」

《あれは試作段階ですし、能力が正常に作動するかも不明です。推奨できません》

「だからこそだ。ついでに試作武器を試すチャンスだろ? ただ、念のため次元収納内でプラズマキャノン発射準備をしていてくれ」

《……かしこまりました》


 ルーファスも一応、納得してくれたようだ。

(さてと、果たして刃が通るかどうか……)

 この間にもレーザーバリアを通じてドンッ! ドンッ! と魔物の攻撃による振動が手から腕を通じて全身へ巡る。

 

「ビットを彼女の周りに固定。自動迎撃モードに」

《座標設定。自動迎撃モードオン》


「わっ!? なんですかっ、これ」


 突然、横に来たビット兵器に驚いたのか彼女が声を上げた。


「君を守るものだ。そこから動かないように」


 返事を返す。


「ルーファス」

《はい》


 次元収納が起動し、鞘に収められた滅魔刀が俺の手に。

 俺はそれを腰へ装着する。


《念のため発動条件ですが——》

「刺すだけでは発動しない。刀身でしっかりと切り切断しないといけない——だろ?」

《その通りです》


(一度しか効かないし、そもそも発動するかも怪しい……切りつけた魔物を必ず一太刀で殺す刀。それでこそ面白いってもんだッ!)


「さ、いくぞ」


 魔物が離れたタイミングでレーザーバリアを解除し、距離を詰める。

 俺と彼女を交互に見る魔物。

 ちまちまと攻撃を加えることで挑発し、注意を引く。


「小型ミサイルじゃほぼダメージ無しか……深淵級の耐久力は化け物だな。ダークゴーレムもそうだったし」


 皮膚が煤汚れるくらいの影響しかないみたいだ。


《尻尾の攻撃が来ます》


 背部ユニットのブースターを点火、受け止め切断するために加速して正面から向かう。

 下から切り上げる刀と正面から薙ぎ払うように振るわれた尻尾が接触、刀身が数ミリ食い込む。数ミリだけ。


「硬ぇ……」


 そのまま切り上げ、バックステップで距離をとる。

(想像以上の硬さだな……今ので切り飛ばせたと思ったんだが)


《発動しませんでしたね》

「ああ、失敗か? それとも条件がさらにあるのか……?」

《今はそのようなことを考えている暇はありません。プラズマキャノンを発射させますか?》

「いや、まだだ。あれは最終手段だからな。とりあえず魔力を纏わせてみて切れないか試す。それで無理なら撃つ」

《かしこまりました。あの魔物は》


 俺はルーファスの言葉を聞き、魔物へと視線を向けた。

 尻尾を振り回し、怒っている様子がみてとれる。

(そういえば……こいつ皮膚に一切傷がないし、好戦的だ。もしかして若い個体か?)


「ルーファス、もしかしたらこいつ若い個体だったりするか?」

《断言はできません。ただ、これまでの魔物でしたら、大抵交戦による傷がありました。全ての戦いを無傷で勝った個体か若く戦闘経験の浅い個体ではないかと》

「なるほど……好戦的ではあるよな?」

《はい》

「なら、挑発して周りを見えなくさせた方が隙をみせそうか」

《では、手数を増やしますか?》

「ああ、ビットは動かさずにな。臨機応変にやってくれ」

《かしこまりました。次元収納起動——クラスター弾装填、ドローン展開。配置につきます》


 魔物を取り囲むようにドローンが空中に複数出現する。ドローンの下部にはクラスター弾————1つの容器の中に数個から数百個の小型爆弾が搭載され、落下と同時にばら撒かれる爆弾がある。


《次に結界発動用ドローン展開。配置につき、結界を発動》


 四機のドローンが出現。魔物の四方を取り囲むように配置。

 ルーファスの合図の後、ガラスの割れるような音が響き、薄青色で半透明の壁が魔物を閉じ込めるように四方のドローンから発生する。

 先ほど響いた音は魔石が割れる音だろう。結界を発動するための魔石。使い捨てだが、高出力の結界を発動することができる。

 魔物が体当たりをし破壊を試みているが一向に破られる気配がしない。


「よし、クラスター弾投下」


ルーファスがドローンを操作し魔物の上空からクラスター弾を次々と投下してゆく。

爆発と爆風により、結界に少しひび割れが起こる。


結界内が硝煙で包まれた時、パワードスーツに搭載された魔力感知センサーが起動する。

魔物のいる部分が強調表示されて頭部アーマー内に記された。

重傷を負っているようだが、まだ息があるようだった。


《――姿を確認、まだ息があるようです》

「了解、結界解除だ。刀剣用補助モードはまだ機能してるか?」

《かしこまりました。はい、機能しています》


結界が解かれた。

中に充満していた硝煙が一気に周囲へ放出され消えてゆく。

魔物は自身を覆っていたものが消えたことに気がついたのか、怒り狂ったようにこちらへ突撃する。


「これで終わりだ」


 左手は鞘に、右手は柄に添え、抜刀の構えをとり、 一挙手一投足、見逃さないよう全神経を集中する。


「フゥー……」


 頭部アーマー内の画面に魔物の姿が映され、ルーファスが分析した隙の多い場所が強調表示してあるようだ。

(首……だな)

 

眼前へと魔物が迫った時、攻撃を回避しつつ刀を振り抜く

――それは肉を断ち、骨を切断し、首を切断した。


ゴトリと魔物の頭が重力に従い落下する。

体の方は先程まで走っていたせいか少し進み横へ倒れた。


「終わりだ」

《お疲れ様でした》

「とりあえず冷却して次元収納へ。俺は彼女の対応をしてくる」

《かしこまりました》


ルーファスがドローンを飛ばし、冷気を放出、そして収納している。その横を通り過ぎ、ビット兵器で守っていた女探索者のもとへ向かう。



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