第3話 深淵探索へ

 部屋に差し込む光でを目覚ました俺は、1階のリビングへ降りる。


《おはようございます》

「おはよう」


 俺はルーファスに返事をし、キッチンで朝食の準備を始めた。

 食パンをトースターに入れ、3分タイマーをセットする。待ち時間にお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。


「いただきます」

《黒瀬様、探索者庁に動きがありました。どうやら先日の黒瀬様捜索依頼を受諾したようです》

「あれ、受ける人いたのか」

《そのようですね。そして本日から1週間、高ランクの探索者が深層を調べるとのこと》

「……そうなのか?」

《探索者庁のサーバーに侵入しましたので確実かと》

「なるほど……ッ!? いつの間にハッキングなんてできるようになったんだ」

《やったらできました》


 俺は予想外の言葉に頭を抱えてしまった。


(余計見つかったらいけない気がしてきた……)

《バレたらアウトでしょう。そもそも侵入されたことに気づかれてないと思われます》

「ならいいが……。どうしても必要な時以外やらないでくれよ」

《はい、それでどうされますか?》

「しばらくは深淵をメインに活動しようと思う」

《かしこまりました。今日から行かれますか?》

「そうする。準備しておいてくれ」

《かしこまりました》


 話が終わり俺は、空になった食器を片付けダンジョンへ行く準備を始める。


《武装はすでに次元収納に格納済みです》

「了解」


 俺は地下室に行き、ダンジョンのゲートへ入る。そして、深淵での俺の本拠地へ。


「そこまで長い間の遠征にはならないと思う。スーツの稼働時間次第だな」

《そうですね。戻る際のエネルギーも考慮してください》

「わかってるって」


 準備が終了し、あとはパワードスーツを装着するのみとなる。


「よし、ルーファス。パワードスーツを」

《かしこまりました》


 石が擦れるような音を立てて、壁の一部が開き、パワードスーツの各部位を持ったアームが伸びる。

 俺は両手を横に広げ、アームを待つ。


 アームは次々と俺にパワードスーツを装着させていく。


「ルーファス、パワードスーツモード」


 俺がそう言った時、外の本体である機械から聞こえてきていたルーファスの声がしなくなる。


「いるか? ︎︎ルーファス」

《はい》


 頭部アーマーを被った状態で問いかけると、ルーファスからの返事が返ってきた。


「よし、エネルギー確認」

《フルチャージ》

「小型武装」

《開閉ハッチ問題無し。正常》

「次元収納」

《起動確認。正常》


「ゲートを開けてくれ」

《ゲートオープン》


 合図とともに本拠地の入り口を塞いでいたシャッターを開ける。


「さ、行くぞッ!!」


 俺はパワードスーツの動力を稼働させ、背部バックパックに装備されたブースターに点火する。

 ドンッと鈍く重い音を立ててゲートまで飛行し、正面の滝を突き破って上昇する。


「うおぉぉぉ!!!! やっぱ空の旅はいいなぁ」

《楽しむのはいいですが警戒は怠らないように》

「ああ!」

《前方魔力反応。飛行型の魔物です》

「回避するぞ! ステルスモード起動」

《かしこまりました》


 前方およそ20メートルの距離に飛行する魔物を発見する。魔物が気づく前に光学迷彩を発動し、隠密回避する。

だが音と通り過ぎた後の風圧は消せず、何かが通ったことは察知され、周囲を警戒している魔物。


(残念だったな。俺はもうそこにはいない)


 回避が成功し、光学迷彩を解く。


「じゃあ、まずは鉱石を回収しにいくか」

《かしこまりました。では山脈エリアに行きますか?》

「ああ」


 鉱石が取れる山脈のエリアに向けて飛ぶ。


「ゴーレムの数が少ないといいが……」


 ゴーレム。

 それは全身が岩石や鉱石でできた生物だ。体の中心に埋め込まれているバスケットボールくらいの核を壊せば倒すことができる。が、体を構成する岩石や鉱石がとてつもない強度をしているため容易に倒すことができないのだ。

 さらに厄介なのが、奴らは岩石、鉱石を主食としている。そのため、喰った石を体の一部にできる能力を所持している。

 普通のゴーレムであればこれだけなのだが、ここは深淵。その分強化されている。


(我儘は言ってられないが……できれば相手にしたくないんだよなぁ)



————約30分後。


「この辺りか」

《はい》

「とりあえず周辺の洞窟を調べるぞ」


洞窟に入ろうとしたその時、警告音と同時にルーファスから知らせがくる。


《警告。周囲に多数の魔力反応、ゴーレムです》

「こっちでも確認した」


 魔力反応があった場所より高所に着地し、辺りを見回す。

するとしばらくして地面が盛り上がり、ボコボコとゴーレムが続々と地上へ出てくる。


「……多くないか?」

《想定より数が多いです》


 俺がいる高所の下。大きく開けた岩場にゴーレムが埋め尽くすほど現れた。その中に一体だけ他の灰色のゴーレムとは違い、真っ黒の岩石を身に纏いに、赤い目、口がついている。おそらく奴が群れの統率だろう。


《ダークゴーレムと推測。奴が親玉でしょう》

「ならあいつを倒さないとか」


 その時、俺とゴーレム、お互いの視線が交差する。


「グォォォ!!」


 低く重い重低音の雄叫びが響く。

 ダークゴーレムは手をゆっくりと俺の方へ向ける。瞬間、全てのゴーレムがこちらを凝視してくる。


「あ、バレた」

《魔力反応。攻撃です》

「ヤベッ!」


 背部ブースターを起動し回避。空中でホバリングをしながら観察する。



ドン、ドン、ドン、ドン、ドンと次々に岩石が降ってくる。


 俺が先ほどまで立っていた場所はいくつものクレーターが出き、威力の高さをものがったっていた。

しかし、最奥に陣取るダークゴーレムは一切、手出ししてこなかった。


「わーお」

《これは……回避を徹底しましょう。この装甲でも耐えられない可能性が高いです》

「それほどの威力か。これミスリルを混ぜて作ったんだがな……」

《恐らく岩石の元となってるのはアダマンタイトかと》

「アダマンタイトだぁ?そこら辺のゴーレムが喰えるもんなのか?」

《はい、ダークゴーレムが原因でしょう。奴から分け与えられてるものだと思われます》

「なるほどなぁ……こいつら一斉に倒せる兵器持ってきてたっけ」

《ありません……しかし、ビット兵器を使用すれば取り巻きを抑えれる可能性があります。ただ、どこまで攻撃が効くかは未知数ですが》

「え、なにそれ」

《独自に解析し製作したものです》

「ネットから?」

《はい。ガン〇ムです》

「まじか、あれ作れるのか」

《はい。できました》

「わぁ、天才。じゃあ、いっちゃおうかそれ」

《かしこまりました。ビット兵器展開》


 ルーファスが周囲に次元収納を八問展開。八機取り出す。

 40センチくらいの細長い長方形をし、先端はすべてゴーレムへ狙いを定めている。

 それらは浮遊し、その場で停止。


《各ビットとの接続完了》

「よし——全機照準、取り巻きのゴーレムども」

《照準、ゴーレム——いつでもどうぞ》

「……殲滅開始ッ!」


 合図とともに、ブォンと音を鳴らし、モールドが青く輝く。

 八本のビットが動きだす。それぞれが意志を持っているかのように。

各ビット兵器がゴーレムへレーザーを放ち、中心にある核を正確に撃ち抜いていく。


「やばぁ」

(もうあれだけでいいんじゃないか?)


想像以上のビット兵器の火力に驚いていると、奴らの親玉――ダークゴーレムがこちらへ攻撃を仕掛けようとしているのに気が付く。


「俺はこっちの相手をするか」


 仲間のはずのゴーレムを蹴散らしつつ、向かってくるダークゴーレムへ視線を向けた。






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