第5話  カウル様との行為

「サントスにゆかりの方でしたか?」


「……という事にしておきましう……あなたは、どうしたのです?そのあざは」


「えっと……」


「他の客に暴力を振るわれたのですね?誰です!?僕が神殿の警備騎士の方に訴えてあげましょう」


 ワタシは、カウル様は本当に優しくて正義感のある人だと思った。

 でもここは、口の堅いことで知られる男娼館だ。本当の事をいう訳にはいかない。

 中には、『凄いだろ』アピールしてくる人もいるけど、大抵身元の分かる人は、お付きの人と一緒にやって来る。


 ワタシを殴ったアルテア王国の商人ギルドの監査官のギイラス様は、自分から喋った口だった。


 ワタシは首を横に振ると、ゆっくりとカウル様に近付いて行った。


「カウル様こそ、この間は肌も重ねずに帰って行かれました。今宵はもう短いですけど時間はありますよ」


「あなたのリュートの音が音が心地よかったので、また来てしまいましたが……ここは娼館でしたね……」


 ワタシは、カウル様の予想外の返答に唖然としてしまった。


「カウル様!この前は何をしにいらっしゃったのです?」


 ワタシの質問にカウル様は、目を伏せがちに大きな溜息をついて言った。


「いろいろな事が一度の起きすぎて疲れていたのです」


「伺っても良いことはありますか?」


「そうですね、初恋の相手が十数年も前に、亡くなっていたことを最近知りました」


 それでワタシは、カウル様が先月いらしたときに黒い下着の意味を知ったのだ。

 そして、ワタシは言った。


「少しでも、カウル様のお心が軽くなりまようにご奉仕します」


 ワタシは、カウル様のズボンを脱がせて(自主規制)を舐めようとした。


「あ!あの、オーリ?」


 なんで語尾が上がってるんだ?

 カウル様は、オリヴィエと呼んで良いかと聞いて来た。


「みんな簡単に、オーリと呼びますのに?」


「いえ、大した意味は無いです。オリヴィエは、南国の木の実です。

 あなたの瞳の色とよく似ています」


 カウル様は、笑って受け流した。

 ワタシは、もちろん了承した。

 ここでは、主様ぬしさまのいう事は絶対である。


「後ろからで良いですか」


 これまた可笑しな、主様ぬしさまの『お願い』である。


 キスを交わし、愛撫をしてもカウル様は真顔のままだ。


 三度失敗をして、カウル様は僕の尻に入ってくれた。

 もっと、テクニシャンに見えたのにただ、腰を振って行為は終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る