第43話 遂に遺跡に到着

 「岩手を出ます!」


 安代という土地の方へと曲がり遺跡に向かう。


 ここからは秋田に入るが、ここからそんなに離れていないという。

 そして、魔物もほとんど出現しないんだとか。

 その情報は関所の人から聞いた。


 念の為、警戒しながらも車を進めていく。

 周りは気が生い茂り自然界の尊さを俺に訴えかけてくる。

 少し走ると看板が見えてきた。


 道順を端末を見て確認しながら曲がりもうすぐだと端末が知らせている。


 肉眼でも確認できた。

 駐車場へと車を停めて俺達は装備を手に探索を始めた。


「油断するなよ! 何があるかわからないからな!」


「うっす!」

「了解です!」

「油断はしませんわ!」


 ピリッとした空気に緊張感が増す。

 遺跡の方へいくと遺跡の真ん中に石造りの祠がある。中には何も無い暗がりがポッカリと佇んでいる。


「自分がみてくるっす!」


 先に雷斗が様子を見に行った。

 残りのおれたちは周りを警戒する。


「なにか来たらすぐに散開する様にな?」


「「了解!」」


 チラリと雷斗の様子を伺うと祠をぺたぺた触っているが特に何もないようだ。


「なんもないっすよぉ? けど、魔力は感じるんすよねぇ。結界も張られてるっすよ? 永続的な結界なんて無理なはずなんすけどねぇ」


「攻撃してみろ!」


「ライトジングボルト!」


 爆発したような凄まじい音を立てて雷が落ちた。だが、ビクともしないようだ。


「やっぱりダメっすよぉ」


「何でもなかったのか? しかし、結界も張ってあるし何かあるだろうと思ったんだけどな?」


 そう言って祠に手を当てた時だった。


 祠の中が目が開けていられないくらいの眩しい光を放ち始めた。

 暫くして光が収まったと思い目をゆっくりと開ける。


「やぁ。久しぶりだね。ジン? ボクは君に殺されたことを忘れてはいないよぉ?」


 俺達の目の前には人型の流線型な形をした悪魔が立っていた。

 こいつの名はベルーゼ。俺は知っている。なぜなら、一度あっちの世界で殺しているからだ。


「なぜお前が生きている?」


「さぁ? それは分からないのさ。ただ、記憶をそのままにボクはここにいるということ。さっきまでそこの魔法陣に閉じ込められていたんだ。ようやく出られた」


 余裕のあるこいつの態度が余計に俺の気持ちの棘を大きくする。


「どういうことだ一体!? なぜこの世界にいるんだ!?」


「あぁ。見たことがないと思ったけど、別の世界だったんだねぇ。ボクは何も分からないよ? たださぁ、せっかく生き返ったんだ。すきにさせてもらうよ?」


 ベルーゼは口を吊りあげ邪悪な笑みを浮かべた。


「お前の好きにさせるわけないだろう! 俺が今度こそ地獄に落としてやるよ」


 正面にたち迎撃する準備をする。


「どういう事なんすか?」

「刃さん、知ってるの?」

「事情がわからないですわ?」


「アイツは……俺が異世界へいっていた時に倒した、四天王のうちの一人だ」


 魔界と言われる所へ行って魔王を倒しに行く途中、行く手を阻んできたのが魔王配下の魔物。人語を話し強さも段違いだ。


「四天王ってことは強いんすか?」


「あぁ。その辺の魔物とは比べものにならないな。ベルーゼはとにかく早い。気を張ってないとすぐにやられるぞ!」


「マジっすか。こっちだってスピードでは負けないっす」


 雷斗も気合十分のようだ。油断なくベルーゼを見つめ、魔力をいつでも打ち出せるようにスタンバイしている。


(いいぞ。雷斗は雷属性だ。対応できる可能性が高い。スピード的にも、相性的にも)


「雷斗、冬華。奴は水属性なんだ。スピードスケートわかるか? あれみたいな滑り方でくる。足に水を発生させてジェット噴射させて滑っているんだ。不規則な軌道で来る。雷斗は足目掛けて魔法を放って欲しい。冬華は俺の動きに合わせて魔法銃で狙って見てくれ」


「「了解!」」


「千紗は冬華の後ろで待機な」


「わかりました!」


 説明をし終えた俺は再びベルーゼを見るとまだ攻撃して来ないのか、ニヤニヤしてこちらをみている。


「少しボクとおしゃべりしない?」


「どういうつもりだ?」


「うーん。閉じ込められている間暇だったんだよねぇ。ねぇ、あの時ボクを殺した後はどうなったんだい?」


 どういうつもりかわからないが、腕を組んで質問をしてきた。


「あの後は四天王全て倒して、魔王も倒したぞ?」


「へぇ。魔王様も倒したんだ? それで今こういう状況ってことは、あの計画が成功したとみていい訳だね」


「やはり、何か知っているんだな?」


「ふふふっ。んんー。少し教えてあげようか? あの魔王城にはある魔法陣が展開されていたんだ。数百年にも及んで、ようやく発動させたものがね」


「そんなものが……この世界の異世界化と関係があるのか?」


 いきなり大声を上げて笑い出した。狂ったのかと思って構えるがそうではないようだ。ひとしきり笑うと無表情になった。


「頭が足りないね? あるにきまってるだろう? 私達の魂は時空の狭間に保存され、別の世界へと浸透して……少し話過ぎたね」


「まぁいい。どっちにしてもベルーゼを倒せばわかる。そうだろ?」


「アハハァー! 短絡的ー! でもいいよ。やろうか? 今のボクはあの時のボクと一緒にしない方がいいよぉ?」


 コイツと二度目の戦いが始まろうとしていた。

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