第16話 報告
────コンコンッ
「入れ」
「失礼します!」
調査して掴んだ情報を伝えるべく、武岩総長の元へと来ていた。
扉を開けると深々とイスに座り目を細めてこちらを伺っている。
「休暇中だろう? どうした?」
「はっ! 異世界化について資料館で調査してみたのですが、意外なことが分かりました!」
「なに? 何かわかったのか!?」
「もしかしたら、パワースポットの一部が関係あるかもしれません!」
そう発言すると片眉を上げて疑惑の目を向けられた。
「それは調査したぞ? 魔物が出ているところを中心にだなぁ────」
「────そこなんですよ! 実は魔物が出ていないエリアの秋田の遺跡に祠が出現している資料があったんです!」
「ほぉぉ。祠か……」
顎をさすりながらこの情報をどう処理するかを考えているのだろう。目を瞑り思考をしているようだった。
「それが異世界化してから出現したものなら、見に行く価値はあるかもしれんな」
「ですよね? それで、調査団を作って欲しいのです。各地に飛ぶかもしれません」
「なるほど。わかった。人員を編成しておく」
「お願いします!」
これで異世界化の謎が少しわかるかもしれないな。そう思うと少しワクワクしてくる。もうおっさんなのにこういう所は子供だなと思ってしまう。
だから、結婚できないのか。いや、それは考えないでおこう。
基地を出てブラブラと帰路につく。特にやる事もない。どうせ休みだ。酒でも飲むか。
自宅近くの公園に差し掛かった。
(あぁ。なんか最近全然気にして見てなかったけど小さくなったなぁ。この公園。いや、俺がデカくなったんだろうけど)
この公園で良く莉奈と遊んだっけ。
「ママは何つくるのー?」
「んー。トンネル!」
砂場で遊んでいる親子に目が行く。莉奈と佳奈だった。
足が自然とそちらに向く。
「おー。莉奈佳奈ー。遊んでんのか―?」
「ちょっとぉその呼び方やめてよぉ。どっかの双子の姉妹みたいじゃん」
「呼びやすいんだよ」
軽口をたたき佳奈の横にしゃがみ込む。
「なぁにつくってんだ?」
「これはねぇ、お城なんだよ? おうじさまとプリンセスがくらしてるの」
砂場で土をこんもりもっているから何を作っているのかと思えばお城だったようだ。この前は大人な発言に驚いたものだが、こういう所をみるとやっぱり子供だなと実感する。
「どこに行ってきたの? 一人で暇なんでしょ?」
莉奈は痛い所をついてくるな。しかも来た方向で恐らく基地からきていることを察知されているのだろう。
「ちょっと報告をな」
「暇だから?」
「べ、別にいいだろ?」
そう言うと「ふーん」といいながら視線を佳奈に戻す。砂を持ってスコップで片付くっているお城は不格好な形になっていた。
「異世界化のな、謎に迫れるかもしれないんだ」
俺はまだ武岩総長にしか話していない話を莉奈にしてしまった。話題が見つからず思わず。
「へぇ? 今までわかんなかったのに?」
「あぁ。昨日偶然発見したんだ。手がかりを」
「刃が? 一人で? 誰もわかんなかったのに?」
矢次早に問いかけられる。そう問い詰められると俺が言っていることが実はただのもうそうなんじゃないかと思ってしまう。
「そうだぞ。まぁ。行ってみないとわからないけどな」
「どこに?」
「まずは、秋田だな」
目を少し見開いて驚いたようだった。
「遠いね。しばらく帰って来られない?」
「そうかもな。そこが思っていた通り手がかりだったとしたら全国に飛ばなきゃならない」
「そっかぁ。刃まで……居なくならないでね?」
その言葉に胸が苦しくなった。
(そうだよな。秀人という旦那を無くした後に立て続けて知っている人が亡くなったら嫌だよな。)
「死ぬ気はない。生きて帰って来るさ。まだ結婚もしてないんだ。一人で死ぬのなんて嫌だからな!」
「ふふふっ。そうね」
そんな話をしていると佳奈をこちらをジィとみてニコリと笑った。
「どうした? 佳奈?」
「かなが、じんとけっこん、してあげよっか?」
「はははっ。本当か? 俺みたいなおっさんでよかったら結婚してくれよ」
「しょうがないなぁ。おっさんとけっこんしてあげよう」
佳奈はわかっているのかわかっていないのか。そんなことを口にした。
(そうか。佳奈も俺に居なくなられたら悲しくなるって言いたいのかな。それは素直に嬉しいな)
「じゃあ、ここに俺達の新しい家を作ろう!」
俺はそのままのノリで砂場の砂を盛り上げて四角く削り家のようなものを作った。それには佳奈も喜んではしゃいでいた。
それを見ていた莉奈も参戦してきて俺の作った砂の家に穴を空けて貫通させたのだ。
抗議の声を上げるとそれにたいして佳奈はゲラゲラと腹を抱えて笑っていた。
だが、それも少しの間だった。お城にも莉奈の魔の手が伸びて穴が貫通されると怒り狂い、全ての砂をグシャグシャにして暴れ回ったのであった。
小さい怪獣は暴れ回った後、満足したように満面の笑みを浮かべて「帰ろう?」といった。
手を繋ぎたいというので佳奈と手を繋いで歩いた。
子供ができたらこういう感じになるのかなぁと漠然と考えていたのであった。
ほのぼのとした休日は終わりを迎え。
明日からは慌ただしい日々がまた始まるのであった。
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あとがき
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