恋は盲目

神重 御子徒

私のモノローグ

 恋は盲目とは良く言ったものだ、一度誰かに恋を抱いてしまうと、その人以外の事は考えられなくなり、遂には人生を破滅させる事だってある。なのに、何故、人間は恋をしたがるのだろう? あの、甘くて酸っぱい恋を。


 全ての始まりは、あの人を見てからだった。その人は、運動こそは駄目だけど、顔も良いし、頭だって全国の高校生の中でも上から数えた方が早いくらい良い。だけど、それはオマケみたいな物で、彼の本当に素晴らしい所は、たきぎを沢山投入した焚火たきびの様にパチパチとぜている瞳の中の炎だ。私は彼を初めて見た時、いつか素晴らしい偉業を成し遂げるだろうと、話した事が無いのにも関わらず確信したのだった。


 私は彼の瞳の中で燃える炎のたきぎ。彼の炎に抱かれて灰になってしまう。だけど、それでいい。彼の炎が消えずに燃え続けてくれるなら。これが、恋と言うものなんだろうか? それとも聖書には、自己犠牲が一番の愛だと書いてあったから、それとも、これは愛なのだろうか?


 だけど、人生とは上手くはいかない物だ。先を越されてしまった。なにしろ、人生で初めての恋だからどうして良いのか分からずに、日々を悶々もんもんとして過ごしていたら、私の唯一無二の親友で、幼馴染の彼女に《取られて》しまった。いや、取られてしまったと表現するのは間違っている。元々、彼は私の物ではないし、例え、私が彼の彼女だったとしても、《取られた》なんて表現はしないだろう。彼に叩かれても精神を病んだ女性の様に彼に叩かれたことも忘れて、また、叩かれるだけの話。叩かれれば叩かれるほど、逆に私は彼を好きになっていく。だから、私は彼を《所有》しているだなんて絶対に言えないはずだ。逆に、彼が私を《所有》するのだ。

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