妖怪一年草

岡本梨紅

序ノ巻

 あなたは妖怪の存在を信じるだろうか? 妖怪の存在は、さかのぼれば平安。もしかしたら、もっと昔から存在していたかもしれない。


 妖怪なんていやしない。それは空想上のものだ。口ではうまく説明できない現象を、妖怪と言う言葉を使って、誤魔化しているだけだ。そういう人も多いだろう。かくいう私もそうだった。彼らに出会うまではね。


 この本を手に取ったあなたが、どんなことを思おうが構わない。だが、これが彼らの一年のいとなみであることは、知っておいてほしい。


 さて、前置きはこのくらいにしておこう。心行くまで楽しんでくれたまえ。箱根の先に住む、妖怪たちの生活をつづった物語を——。

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